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幸せ
何一つ苦痛のない極楽のような世界(には…)
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『<認知症>を患い、焦点の合わない目を虚空に向けつつ糞尿を垂れ流すヒロイン』
か……
まったく、我ながらよくこんな酷い話ができるものだと呆れるよ。
だが俺は、そういうことと向き合わず、ただ自分が見たい、綺麗な、可愛い、愛らしい、萌える、気分のいいものだけを羅列した話なんて、ほんの暇潰し以外では真剣になって見たいとは思わないんだ。
糞尿を垂れ流す密だけじゃなく、かつて、赤緑色の謎の液体を全身から垂れ流しつつ死んでいった妹の姿を見てきたからこそ、人の死が、命が、綺麗事だけじゃないことを思い知らされてきたからこそ、嫌なことから目を瞑るだけというのが、目を逸らすだけということ自体がどれほど嘘くさいのか思い知ってるからこそ、敢えて触れたいんだ。
……ああ…思い出した。そうだ…そうなんだよ……
あの子は、光莉は、最後はとても人間とは思えない姿になって、いや、はっきり言って<怪物のような姿>になって、獣のような呻き声をあげながら、グズグズに溶け崩れていったんだ。
その事実を、俺は、俺の脳は、無意識のうちになかったことにしていたようだ。最後まであの子がちゃんと人間の姿をしたままで、<可哀想な女の子>として亡くなっていったことに、記憶をすり替えていたのかもしれない。それをようやく、その現実とようやく向き合うことができるようになって、本当の記憶が思い出せるようになったんだろうな。
いくら偉そうなことを言おうとしたって、俺自身がこれだから、光や灯に対して偉そうにできるわけがないんだ。
いやはや、頭ごなしにガミガミ言ったりしてこなくてよかった。そんなことをしてたら、俺自身が実は現実と向き合うことができないってのを子供達に見抜かれて反発されてたかもしれない。なにしろ俺自身が、かつて、そういう大人の情けない部分を見透かして馬鹿にしていたからな。それと同じことが起こってたに違いないって気がするよ。
くわばらくわばら。
ところで、妹がどうしてそんなことになったのかと言えば、彼女の主治医だった医者の説明では、
「全身の細胞の遺伝子がデタラメに機能して、まったく整合性が取れていない状態なんです」
ってことだったが、どうしてそんな恐ろしい病気があったのか、まるで意味不明だよ。
人間は、癌を克服し、認知症を克服し、様々な難病を克服し、放射線病も克服してきた筈なのに、そうやってまた新しい病気が現れるんだ。
どうあっても、
<何一つ苦痛のない極楽のような世界>
など辿り着けないように、何者かが仕組んでるかのように、な。
か……
まったく、我ながらよくこんな酷い話ができるものだと呆れるよ。
だが俺は、そういうことと向き合わず、ただ自分が見たい、綺麗な、可愛い、愛らしい、萌える、気分のいいものだけを羅列した話なんて、ほんの暇潰し以外では真剣になって見たいとは思わないんだ。
糞尿を垂れ流す密だけじゃなく、かつて、赤緑色の謎の液体を全身から垂れ流しつつ死んでいった妹の姿を見てきたからこそ、人の死が、命が、綺麗事だけじゃないことを思い知らされてきたからこそ、嫌なことから目を瞑るだけというのが、目を逸らすだけということ自体がどれほど嘘くさいのか思い知ってるからこそ、敢えて触れたいんだ。
……ああ…思い出した。そうだ…そうなんだよ……
あの子は、光莉は、最後はとても人間とは思えない姿になって、いや、はっきり言って<怪物のような姿>になって、獣のような呻き声をあげながら、グズグズに溶け崩れていったんだ。
その事実を、俺は、俺の脳は、無意識のうちになかったことにしていたようだ。最後まであの子がちゃんと人間の姿をしたままで、<可哀想な女の子>として亡くなっていったことに、記憶をすり替えていたのかもしれない。それをようやく、その現実とようやく向き合うことができるようになって、本当の記憶が思い出せるようになったんだろうな。
いくら偉そうなことを言おうとしたって、俺自身がこれだから、光や灯に対して偉そうにできるわけがないんだ。
いやはや、頭ごなしにガミガミ言ったりしてこなくてよかった。そんなことをしてたら、俺自身が実は現実と向き合うことができないってのを子供達に見抜かれて反発されてたかもしれない。なにしろ俺自身が、かつて、そういう大人の情けない部分を見透かして馬鹿にしていたからな。それと同じことが起こってたに違いないって気がするよ。
くわばらくわばら。
ところで、妹がどうしてそんなことになったのかと言えば、彼女の主治医だった医者の説明では、
「全身の細胞の遺伝子がデタラメに機能して、まったく整合性が取れていない状態なんです」
ってことだったが、どうしてそんな恐ろしい病気があったのか、まるで意味不明だよ。
人間は、癌を克服し、認知症を克服し、様々な難病を克服し、放射線病も克服してきた筈なのに、そうやってまた新しい病気が現れるんだ。
どうあっても、
<何一つ苦痛のない極楽のような世界>
など辿り着けないように、何者かが仕組んでるかのように、な。
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