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幸せ

お互いに意識してる男女が(って、ラブコメか!?)

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狙っていた<獲物>を横取りされた形だった駿しゅんだが、一方でごうからすれば自分達の縄張りを荒らされたという認識なのは疑いようもない訳で、これは双方とも収まりがつかないよなあ。

「グアッ!!」

「ギィアッ!!」

互いに咆哮を上げ、ぶつかり合う。

駿しゅんがジャンプして鋭い爪を持った足で攻撃を仕掛ければ、ごうはそれを避けようとするどころか逆に飛び込んで体当たりを加える。

吹っ飛んだ駿しゅんが着地するところに飛び掛かり、ぐわっと口を開けて食らいつこうと。

しかし今度は駿しゅんが着地と同時に地面を蹴って頭から突っ込んでいった。

その所為でごうも狙いが外れ、すんでで駿しゅんを躱して体を翻し、二匹は同時に頭から突進、ガツン!と固い物同士をぶつける激しい音が響くのが分かった。双方の頭突きが真っ向から激突したのだ。

しかもどちらも怯むことさえない。

ここまでは完全に互角と見えた。

駿しゅんごうもそれを察したのか共に間合いを取り、相手を睨み付ける。

そしてお互いに威嚇し合う駿しゅんごうは、そのまま数分ほど、睨み合いを続けることとなった。膠着状態だ。

「ははは……すごいな……」

俺の口から勝手にそんな感嘆の言葉が漏れる。こんな伯仲した闘いはそうそう見られない気がする。

だがしばらくして、突然、駿しゅんの仲間が、

「キィッ!」

と声を上げた。

すると、駿しゅんが一瞬も躊躇うことなく踵を返して走り出し、仲間達もそれに続いて密林に消えたのだった。

実はこの時、仲間が別の獲物を発見したとのことだったらしい。

頭が良くて合理的な駿しゅんは、別に獲物がいるのなら、そちらの方が確実に狩れるというのなら、無駄に睨み合いを続けるよりもそれを取った方がいいと判断したのだろう。

だが、ごうとしては、相手がいきなり闘いを放棄していなくなったことで拍子抜けしたのか、しばらく、

「グゥッ、ガ、ガアッ!?」

って感じで、俺の目にも戸惑ってるのが分かる声を上げつつ、落ち着きなく右往左往していたりもした。

上げに上げたテンションのやり場に困ったのかもしれない。既に仲間の攻撃によって絶命していた<獲物>の首に食らいつき、自分よりもはるかに重いそれを引きずり回し振り回し、一通り大暴れしてようやく気が済んだのか、ボロボロになった<獲物>を仲間に任せて自分は先に密林へと消えた。

で、この時のあまりにも堂々とした様子から、てっきりごうがこの群れのボスだと思ったのだが、実はその時点ではまだボスではなく、あくまで斥候のリーダー的な存在でしかなかったようだ。

そんなこともあり、その後もたびたび衝突した駿しゅんごうだったが、お互いに一歩も引くことなく、しかしなぜか毎回邪魔が入って決着がつくことはなかったんだ。

もっとも、何回目かからはろく号機が割って入るようになったんだけどな。

なんと言うかな、察してしまったんだよ。

四~五回目辺りにはもう、お互いに意地になって引くに引けなくなってるだけだってのが。しかも、わざわざ相手が現れそうな場所まで出向いてぶつかってるんだ。

「これはあれだな。お互いに意識してる男女が、自分の本当の気持ちに気付かずにケンカしてる感じかな…?」

俺が言うと、シモーヌも、

「あ~、そう言われたらなんだかそうとしか見えなくなってきちゃいましたね」

と同意してくれた。

それでも、衝突してる時にはお互いに野生の本能剥き出しで相手を殺しかねない勢いだったりするから、『ヤバそうだな』と感じた時には陸号機を介入させるようにしたんだよな。

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