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幸せ
雷の算段(さすがと言うべきか)
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誉が属する群れのボスの座を巡る争いは、このまま膠着状態に陥るかと思われた。しかしそんな中で、若い雄が一人、果敢にも暫定ボスへと挑みかかった。
「があっ!」
「ぎいぃっっ!!」
観察用に配置したドローンのカメラに、互いに吠えながらまずはジャブの応酬とばかりに手を繰り出す暫定ボスと若い雄の姿が捉えられる。
が、見た目にも暫定ボスの方が体も大きく動きも早く、一見しただけでも勝負は察せられてしまうレベルだっただろう。正直、無謀としか思えなかった。
案の定、手を使って小競り合いをしている間はまだ悪くない状況だったようだが、首根っこを押さえられて太い枝に押し付けられると、完全に趨勢は決まってしまった。
まったく身動きが取れなくなった若い雄を器用に太い枝に押し倒した状態で馬乗りになり、いわゆるマウントポジションというやつを取った暫定ボスは、ただただ一方的に若い雄を殴りつけた。危険な状態だ。このままではその若い雄の命までが危うい。
すると、その時、
「ぎいっっ!!」
と吠えつつ、白い影が飛び掛かってきた。
それを躱す為に暫定ボスがその場を飛び退くと、若い雄が必死に逃げた。
「誉…!」
思わず声が出る。
静観の構えと思われた誉が、暫定ボスがいた太い枝に掴まり、ギラリとした視線で睨み付けていたのだ。
仲間の危機に黙っていられなくなったのか?
そうかもしれない。なにしろ、そのまま暫定ボスを追撃しようとする動きは見られなかったからだ。仲間である若い雄を逃がす為に飛び掛かったんだろう。
そして、暫定ボスが、突然の乱入者である誉に意識を向けたその隙をついて、さらに上から白い影が音もなく舞い降りるのを、俺達は見た。
雷だった。雷が暫定ボスの死角となる頭上から飛び掛かったんだ。
それを見て、俺は察してしまった。
『若い雄と誉を囮に使ったんだ……!』
完全に虚を突かれた形になったことで反応が遅れ、暫定ボスはバランスを崩して雷と共に落ちた。しかしそれ自体が雷の狙いだったんだと思われる。
なにしろ暫定ボスの両腕と両脚を掴んで封じ、そのまま地面へと、自分の体重と暫定ボスの体重と落下の速度を乗せて、叩きつけたのだから。
「ギヒッッッ!!」
地面に叩きつけられた暫定ボスが何とも言えない悲鳴を上げる。一緒に落ちた雷の方は暫定ボスをクッション代わりにしたことで大した衝撃はなかったようだ。
暫定ボスの方も相当な衝撃があっただろうに、雷を撥ね退けつつ立ち上がってみせる。
人間ならこれでケリはついていたと思われるが、凄まじいタフネスぶりだった。
「があっ!」
「ぎいぃっっ!!」
観察用に配置したドローンのカメラに、互いに吠えながらまずはジャブの応酬とばかりに手を繰り出す暫定ボスと若い雄の姿が捉えられる。
が、見た目にも暫定ボスの方が体も大きく動きも早く、一見しただけでも勝負は察せられてしまうレベルだっただろう。正直、無謀としか思えなかった。
案の定、手を使って小競り合いをしている間はまだ悪くない状況だったようだが、首根っこを押さえられて太い枝に押し付けられると、完全に趨勢は決まってしまった。
まったく身動きが取れなくなった若い雄を器用に太い枝に押し倒した状態で馬乗りになり、いわゆるマウントポジションというやつを取った暫定ボスは、ただただ一方的に若い雄を殴りつけた。危険な状態だ。このままではその若い雄の命までが危うい。
すると、その時、
「ぎいっっ!!」
と吠えつつ、白い影が飛び掛かってきた。
それを躱す為に暫定ボスがその場を飛び退くと、若い雄が必死に逃げた。
「誉…!」
思わず声が出る。
静観の構えと思われた誉が、暫定ボスがいた太い枝に掴まり、ギラリとした視線で睨み付けていたのだ。
仲間の危機に黙っていられなくなったのか?
そうかもしれない。なにしろ、そのまま暫定ボスを追撃しようとする動きは見られなかったからだ。仲間である若い雄を逃がす為に飛び掛かったんだろう。
そして、暫定ボスが、突然の乱入者である誉に意識を向けたその隙をついて、さらに上から白い影が音もなく舞い降りるのを、俺達は見た。
雷だった。雷が暫定ボスの死角となる頭上から飛び掛かったんだ。
それを見て、俺は察してしまった。
『若い雄と誉を囮に使ったんだ……!』
完全に虚を突かれた形になったことで反応が遅れ、暫定ボスはバランスを崩して雷と共に落ちた。しかしそれ自体が雷の狙いだったんだと思われる。
なにしろ暫定ボスの両腕と両脚を掴んで封じ、そのまま地面へと、自分の体重と暫定ボスの体重と落下の速度を乗せて、叩きつけたのだから。
「ギヒッッッ!!」
地面に叩きつけられた暫定ボスが何とも言えない悲鳴を上げる。一緒に落ちた雷の方は暫定ボスをクッション代わりにしたことで大した衝撃はなかったようだ。
暫定ボスの方も相当な衝撃があっただろうに、雷を撥ね退けつつ立ち上がってみせる。
人間ならこれでケリはついていたと思われるが、凄まじいタフネスぶりだった。
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