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幸せ

自主自立にまで(干渉すべきではない)

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新暦〇〇二二年九月四日。



『私達ロボットは、人間を支えこそすれ、その自主自立にまで干渉すべきではないというのが、大原則のはずです』

エレクシアがメイフェアに対して言ったそれは、<人間社会においてのロボットの役割>という意味で重要な部分だった。

特に、メイトギアが現在の機能の殆どを獲得し、人間の普段の生活を支えるロボットとしては完成の域に達したとされる二十六世紀頃から二十八世紀頃にかけては、人間の側がメイトギアに依存してしまって、人間関係を構築することなく家に引きこもって箸の上げ下げすら任せてしまうような者が急速に増加、社会問題化した時期があるらしい。

それ自体は現在でも少なからず残っている問題だが、今ではメイトギアもそこまで人間を甘やかさないようにはしている。本当にできないのであれば手も貸すが、できるにも拘らずすべてを丸投げにしようとする主人に対しては、

「私もお手伝いいたしますので、一緒にやりましょう♡」

的な形で誘導して人間自身にやらせようとするらしい。まあそもそも、子供の頃からメイトギアが家にいる家庭では、それこそ幼児が、

「おてつだいする!」

と言い出せば、人間のように、

「危ないからまた今度ね」

風な、いかにも『あなたを気遣って言ってるのよ』というていを装いつつその実、『余計な手間がかかるから勘弁』という本音が透けてしまって子供のせっかくのやる気を削いでしまうような対応はせず、安全は確保しつつも子供に手伝ってもらうという形で、『自分でやる』という部分を育てるようにはしてるそうだ。

この辺りも、人間だとどうしても『面倒臭いな』と思ってしまうところでもまったく意に介さないロボットらしさが活かされてるようだが、初期の頃には主人に倣い、子供にはあまり手出しさせないという対応をしていたんだとか。

で、どうもそれがマズかったらしく、大人になってからも、

『どうせメイトギアがやってくれるんだろ?』

的な考え方が定着してしまい、すべて丸投げしてしまうのが蔓延したようだ。

しかしその後、児童心理等についての研究がさらに進んだことで、幼児が「おてつだいしたい!」と言い出すのは<自主自立の精神の目覚め>であると考えられるようになって、それを言い出した時には積極的に手伝ってもらい、家事の仕方を学んでもらうのみならず、ただロボットに頼り切ってしまうような考え方をしないように認識を誘導するようになったんだと。

それもあって人間とロボットの関係性は、概ね良好にたもたれているとのことだった。

が、そこまでやってもロボットに対して不信感を抱く人間もいなくはならないんだよな。

かつては俺もその一人だった訳で。

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