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子供達

解決(ま、これでいいってことで)

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さすがに全長二十メートルを超える巨体を、そうかいの群れだけで食べ切るのは無理だったことで、多くの部分は放置され、他の生き物達の糧となった。

俺達としても、貴重なサンプルとして、組織片をイレーネに採取してもらい、セシリアが運転するローバーでイレーネを回収する。さすがに片足だけの状態の彼女に自力で帰って来いとは命令できなかったからな。

「お疲れ様でした。イレーネ」

セシリアが迎えに行った時には、どこから集まってきたのか、ボクサー竜ボクサーよりもさらに一回り以上小さい、でも意外と狂暴な肉食獣の群れが集まっていて、血まみれだったイレーネも、みずちの亡骸の傍らに座り込んだまま、体を噛まれたり体についたみずちの血を舐められたりしていた。

もちろんその程度のことがイレーネに通じる訳もなく、殆ど子犬にじゃれつかれてるような姿だったが。

「ありがとうございます」

自分の体にまとわりつく獣らのことなどまったく意に介することもなく立ち上がり、なおもしつこく噛み付くやつは左手で払い落とし、ローバーの荷室を開けて乗り込んだ。

一緒に乗ってきた奴もつまんで窓から放り出すと、セシリアがローバーをゆっくりと走らせる。

小さな獣達はそれに追い払われて慌てて逃げるが、ローバーが走り去るとやはりみずちの亡骸に群がり再び貪り始める。恐らく夜が明ければ鳥なども集まってきてさらに賑やかになるだろう。

みずちも、そういう形ではあるが、ここの自然に還っていくという訳か。その意味ではこいつもやっぱり生き物ではあったんだな。

子供の頃、退治された怪獣がその後どうなったのか気にしたりもしたんだが、やっぱりこんなもんなんだろうな。当時にこんな光景を見たらトラウマものだったかもしれないものの、大人になってからだとむしろ悲哀を感じる気もする。

きょうの時もそうだったか。そんな形で生まれてこなければ違う結末もあっただろうに、そう、はるかのように普通に子を生してこの世界の一員として生きられたりもしただろうにな。

ついついそういうことも考えてしまう。

もっとも、そんなのはおこがましいって話かもしれないが。

生まれてすぐ死ぬなんてのもよくある話だ。だから気する必要もないんだと思う。俺がイレーネに駆除を命じたのも家族を守る為だ。

強い方が勝った。それだけのことなんだよ。

ただ、きょう達のこともそうだが、せめて覚えててはやりたいかな。

それ自体が人間のくだらないセンチメンタリズムだとしても、そこが人間とロボットの違いでもある。

メイフェアの場合は事情が特殊だった故にグンタイ竜グンタイの女王のことで動揺したりもしたが、彼女と同じで人間の感情の再現を試されていたイレーネは、その部分が壊れてることで、まったく気にすることもない。

だから今回の件もこれで解決ってことでいいんだろう。

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