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シモーヌ

ごった煮(人生ってやつはまったくもう)

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新暦〇〇〇九年二月九日。



あ~やれやれ、ようやくイレーネの件について自分でも落としどころが見付かった気がする。

こんな風に考えすぎるのが俺の悪い癖で、だから社会に馴染めなかったんだっていうのは分かってるんだが、これも性分というものだからな。変えようがない。

それでも、妹のことがなければまだしもと思わなくもないが、これについてはそれこそ言っても詮無い話だしな。

妹の病気は、いまだに有効な治療法が見付かっていない異様なものらしい。遺伝子に異常が次々に生じるという遺伝子疾患の一種らしいんだが、異常が出た部分を治療すると今度はまた別の複数の部分に異常が生じるという、むしろ<悪意>すら感じる不可解なものらしいんだ。だから一般的なものなら遺伝子疾患でさえ治療可能な今の医療技術でさえ対処のしようがないものだった。

人間同士での伝染こそしないものの、一度発症すれば根治はほぼ不可能と言われていた。原因は分かっている。ある植民惑星で発見されたウイルスだ。発症する前にウイルスを除去すればいいからそれほど恐れられてはいないものの、発見が遅れて発症してしまうとアウトということになる。

遺伝子の異常が出る部分が刻々と変わるということは、その異常が出た部分によって症状も変わる為、患者の様子もそれに伴って変わり、患者本人も家族も振り回されるというのも厄介な病気だった。なんでこんなウイルスがあるのか、さっぱり意味不明だよ。

症例も少ないので、研究も進んでないそうだ。

まあそれについては今更なのであまりあれこれ言っても始まらないが、さすがに自分の家族に降りかかったことだからな、両親を事故で亡くしたこともそうだし、

『なんで俺ばっかりこんな…!』

とかなんとか、<悲劇の主人公気分>に浸ってた時期もあったな。

…それは今でもか……

ま、いいや。それでも。

とにかく今は、そんなこともありつつも、たくさんの家族に囲まれて幸せを感じているのも紛れもない事実なんだ。

六人の<嫁>と十三人の子供達。更に孫まで生まれて、セシリアやメイフェアやシモーヌやちからはるかきたるあきらあたるといった仲間達にも恵まれて、俺の幸せはどんどん膨らんでいってる。

これから先もいろいろなことがあるだろうが、その<いろいろ>自体が俺の人生の一部になっていくんだろう。いずれ訪れることが分かってる<別れ>も含めてな。

まったく。この世ってやつは何でこんなに不可思議なんだ。苦しいことも楽しいことも、ごった煮みたいにして押し寄せてくる。

なるほど、それを楽しんだ方が得ってもんなんだろうな。

なら、とことん楽しんでやるさ。

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