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シモーヌ

ボスの役目(最終的な決断を下し、その決断に責任を持つこと)

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新暦〇〇〇九年二月七日。



正直、イレーネのケースは、今後もし、同じような形でメイトギアが発見された場合にどうするかということについての試金石となった気がする。

「どうしますか…?」

あかりに離乳食を与えながら訊いてくるシモーヌに、俺は答えた。

「可能な限り復旧を試みる。その上で、彼女達自身に選択してもらう。

だってそうだろう? 彼女らがコーネリアス号を離れたのは、自分達が搭乗員達を守れなかったという<自責の念>からなんだし。

だが実際は、シモーヌが言うように、少なくとも不定形生物に同化された搭乗員達については、その中で生きてるっていうことなら、彼女らがコーネリアス号を離れる選択をした際に重要な情報が欠けていたってことになるんだからな。その事実を告げた上で改めてどうするかを俺は問いたい」

「なんだかそれって、<寝た子を起こす>みたいな話ですね…」

シモーヌは苦笑いを浮かべながらそう言った。

彼女がそう言うのも分かる。俺も同じことは考えた。だが、新しい機体を手に入れてデータを移すこともできない以上、不完全な状態でも復帰させるか、そのままにするかの二択になるからな。だったら俺は敢えてそうしたい。

「正直、私にはどちらがいいのか分かりません。そっとしておいてあげたい気もするし、あなたの言う通り改めて事実を知らせた上で選択させてあげたいっていう気もします」

「ああ、それも分かるよ。だからもし、彼女らが不完全な状態で呼び覚ました俺を恨むならそれでもいい。だが、同じケースがあった場合にはどうするかっていう<基準>は作っておきたいんだ」

「ここでは、今はあなたこそが<法律>ですからね」

「まあ、そういうことだよ、異論があるなら聞くけどさ」

きっぱりと言い切った俺に、シモーヌも「分かりました」と穏やかに言ってくれた。

「あなたがここのボスです。それに委ねましょう」

「ありがとう」

それからエレクシアとセシリア、そしてタブレット越しに話を聞いていたメイフェアに対しても、

「ということだ。異論はないか?」

と尋ねる。

「私のマスターはあなたです。あなたの判断に従います」とエレクシア。

「異論はありません」とセシリア。

「私もです」とメイフェア。

これが、ボスの役目なんだよな。最終的な決断を下すこと。そして、その決断に責任を持つこと。

どこまでそれができるか俺にも分からないが、とにかくそういうことでいこう。上手くいくかどうかはやってみないと分からない。もっとも、失敗したところで俺が凹むことになるだけだろうけどな。

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