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シモーヌ
ロボットの恩恵(人間がどれだけそれに預かってるかだな)
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ここらでまた、戦争とかの大きな括りじゃなくて、普段の生活の中で人間がどれほどメイトギアをはじめとしたロボットの恩恵に預かっているのかを改めて詳しく触れてみたいと思う。
育児や介護、家事などのサポートについてはこれまでも何度も触れてきたから、今回はそれ以外の点についてだな。
その中でも特に大きなものが、<防犯>かもしれない。先にも述べたが、現在、人口十億人当たりの殺人事件の件数は年間数十件というレベルであり、かつ、テロのような思想的なものを除いた個人の犯罪としての殺人に至っては年間五件未満に抑えられているんだ。
具体的にそれがどうやって実現されているのかと言えば、まあ医療技術の発達により死亡に至る事例が減ったという面もありつつ、とにかく<ロボットが守ってくれている>からと言ってもいいだろう。
いや、正確には、ロボットも含めたAI全般と言うべきか。現在ではAIを備えてない機器は数えるほどしか存在せず、しかも、電子レンジすら幼児並みの知能を持っている。で、人間が犯罪計画など練っていようものなら、その家にメイトギアがいればそちらに告げ、そのメイトギアが危険と判断すると要注意情報として関係機関に通報。そうやって上がってきた情報を審議する専門の機関があり、そこで確度が高い話と判定されると警察ないし公安が内偵を始めるという流れになってるそうだ。
つまり、<超監視社会>ってことだな。メイトギアそのものが防犯カメラみたいなもんだし。
かつては『攻撃する方が有利』などとも言われてたそうだが、今では完全に逆転してる。『守る方が有利』な社会なんだ。そのための監視体制ってことか。
もっとも、犯罪を起こす気がなけりゃ何の問題もないから、俺自身は別にその点については気にしていなかった。
それに、ロボットの中でもメイトギアは特に、通報まで行く前に、人間の愚痴や恨み辛みや泣き言を、本人が納得するまで、いつでも、何時間でも、何回でも、聞いてくれる。話に耳を傾けてくれる。実はこの段階で、もう、八割くらい、犯罪の芽が摘まれているという説もあるんだとか。
加えて、日常生活の中で恨みなどを募らせて、結果的に殺人に至るような事例でも、加害者になる可能性を持った人間の心理的な負荷をメイトギアは察知。それを和らげる為に必要な情報をアップデート。公的に配置されているカウンセラーなどと連絡を取り合って心理的なケアを行い殺人の実行を未然に防いだりもする。
さらには、以前にも言った通り、育児に対して悩む親などのサポートも行い虐待や子殺しを防ぎ、高齢者等の介護疲れでの殺人もこれによって限りなくゼロへと近付いた。
悪質クレーマーの難癖にさえ嫌がることなく耳を傾け、ストーカーの歪んだ好意を一身に引き受けて治療に導き、嫉妬に狂った人間の呪いの言葉に夜通し付き合ったりするのもメイトギアをはじめとしたロボットだ。
また同時に、実際に犯罪に至った場合でも、ロボットは徹底して人間を守る。
それについて最も手っ取り早く説明できるのが強盗などの事例だろうか。
強盗の発生件数そのものも二十一世紀頃に比べれば一万分の一以下にまで減ってるそうだが、それでもゼロじゃない。特に社会的に不安定な植民惑星とかだとどうしても増える傾向にあるとも言う。そんな強盗犯が銃やナイフを構えた気配を捉えると、近場にいるメイトギアが即座に反応。身を挺して被害者を庇うんだ。たとえ自分の主人じゃなくてもね。
同時に警察に通報。容疑者が逃亡しても現場に居合わせたすべてのロボットが映像や音声を記録。警察はその情報を基に捜査すればいいわけだ。一般的な社会ではロボットの普及率は自動車をはるかに上回り、街中に百人の人影がいればそのうちの二割はメイトギアを主としたロボットという状態である。しかも人型のそれ以外にも、自動車の制御や店舗の管理をするAIというものを含めれば、百平方メートルに一台はロボットがいるような状態だった。
こうなるともう、ありとあらゆるところに監視カメラがあるのと同じだ。そのデータを提供してもらうにはもちろん法的根拠が必要で任意の提出ということになるものの、犯罪捜査の為となればそれを断る人間は殆どいない。断られたところで他を当たれば必ず提供してくれる者はいるので、何も困らない。
そして、ロボットが身を挺して銃やナイフによる攻撃から被害者を守ることで結果として殺人も防がれるという訳だ。その際に破損しても修理に必要な保険はロボットを買う時に既についてくる。
あと、強盗なんかの場合はメイトギアすら購入できない層が起こす場合が多いのでアレとは言え、そもそもメイトギアは、自分の主人が万が一他人を傷付けようとしても、自分の体を使って防ぐんだ。
主人を守ることがメイトギアの役目だが、
『あいつを殺せ!』
とか命じても決して従わない。自分の主人が法を犯し犯罪者になるのを防ぐことで『主人を守る』んだよ。
こういう風に、今日の人間社会の安全と安定は、メイトギア達ロボットによって支えられていると言っても過言じゃないだろう。
それを思えば、役に立たなくなったからって見捨てる気にはなれないんだよな。
育児や介護、家事などのサポートについてはこれまでも何度も触れてきたから、今回はそれ以外の点についてだな。
その中でも特に大きなものが、<防犯>かもしれない。先にも述べたが、現在、人口十億人当たりの殺人事件の件数は年間数十件というレベルであり、かつ、テロのような思想的なものを除いた個人の犯罪としての殺人に至っては年間五件未満に抑えられているんだ。
具体的にそれがどうやって実現されているのかと言えば、まあ医療技術の発達により死亡に至る事例が減ったという面もありつつ、とにかく<ロボットが守ってくれている>からと言ってもいいだろう。
いや、正確には、ロボットも含めたAI全般と言うべきか。現在ではAIを備えてない機器は数えるほどしか存在せず、しかも、電子レンジすら幼児並みの知能を持っている。で、人間が犯罪計画など練っていようものなら、その家にメイトギアがいればそちらに告げ、そのメイトギアが危険と判断すると要注意情報として関係機関に通報。そうやって上がってきた情報を審議する専門の機関があり、そこで確度が高い話と判定されると警察ないし公安が内偵を始めるという流れになってるそうだ。
つまり、<超監視社会>ってことだな。メイトギアそのものが防犯カメラみたいなもんだし。
かつては『攻撃する方が有利』などとも言われてたそうだが、今では完全に逆転してる。『守る方が有利』な社会なんだ。そのための監視体制ってことか。
もっとも、犯罪を起こす気がなけりゃ何の問題もないから、俺自身は別にその点については気にしていなかった。
それに、ロボットの中でもメイトギアは特に、通報まで行く前に、人間の愚痴や恨み辛みや泣き言を、本人が納得するまで、いつでも、何時間でも、何回でも、聞いてくれる。話に耳を傾けてくれる。実はこの段階で、もう、八割くらい、犯罪の芽が摘まれているという説もあるんだとか。
加えて、日常生活の中で恨みなどを募らせて、結果的に殺人に至るような事例でも、加害者になる可能性を持った人間の心理的な負荷をメイトギアは察知。それを和らげる為に必要な情報をアップデート。公的に配置されているカウンセラーなどと連絡を取り合って心理的なケアを行い殺人の実行を未然に防いだりもする。
さらには、以前にも言った通り、育児に対して悩む親などのサポートも行い虐待や子殺しを防ぎ、高齢者等の介護疲れでの殺人もこれによって限りなくゼロへと近付いた。
悪質クレーマーの難癖にさえ嫌がることなく耳を傾け、ストーカーの歪んだ好意を一身に引き受けて治療に導き、嫉妬に狂った人間の呪いの言葉に夜通し付き合ったりするのもメイトギアをはじめとしたロボットだ。
また同時に、実際に犯罪に至った場合でも、ロボットは徹底して人間を守る。
それについて最も手っ取り早く説明できるのが強盗などの事例だろうか。
強盗の発生件数そのものも二十一世紀頃に比べれば一万分の一以下にまで減ってるそうだが、それでもゼロじゃない。特に社会的に不安定な植民惑星とかだとどうしても増える傾向にあるとも言う。そんな強盗犯が銃やナイフを構えた気配を捉えると、近場にいるメイトギアが即座に反応。身を挺して被害者を庇うんだ。たとえ自分の主人じゃなくてもね。
同時に警察に通報。容疑者が逃亡しても現場に居合わせたすべてのロボットが映像や音声を記録。警察はその情報を基に捜査すればいいわけだ。一般的な社会ではロボットの普及率は自動車をはるかに上回り、街中に百人の人影がいればそのうちの二割はメイトギアを主としたロボットという状態である。しかも人型のそれ以外にも、自動車の制御や店舗の管理をするAIというものを含めれば、百平方メートルに一台はロボットがいるような状態だった。
こうなるともう、ありとあらゆるところに監視カメラがあるのと同じだ。そのデータを提供してもらうにはもちろん法的根拠が必要で任意の提出ということになるものの、犯罪捜査の為となればそれを断る人間は殆どいない。断られたところで他を当たれば必ず提供してくれる者はいるので、何も困らない。
そして、ロボットが身を挺して銃やナイフによる攻撃から被害者を守ることで結果として殺人も防がれるという訳だ。その際に破損しても修理に必要な保険はロボットを買う時に既についてくる。
あと、強盗なんかの場合はメイトギアすら購入できない層が起こす場合が多いのでアレとは言え、そもそもメイトギアは、自分の主人が万が一他人を傷付けようとしても、自分の体を使って防ぐんだ。
主人を守ることがメイトギアの役目だが、
『あいつを殺せ!』
とか命じても決して従わない。自分の主人が法を犯し犯罪者になるのを防ぐことで『主人を守る』んだよ。
こういう風に、今日の人間社会の安全と安定は、メイトギア達ロボットによって支えられていると言っても過言じゃないだろう。
それを思えば、役に立たなくなったからって見捨てる気にはなれないんだよな。
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