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シモーヌ
リトライ(機械は諦めることをしないからな)
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新暦〇〇〇九年二月二日。
イレーネLJ10のメンテナンスについては、コーネリアス号のAI自体が何とか彼女を回復させようと何度もリトライしたらしく、結局、一週間かかっても終了しなかった。
人工皮膚については既に新品同様に復元され、失われた右前腕と右下腿、及び劣化したウイッグ(通常は消耗品扱いで交換が前提)以外は本来の姿を取り戻していたそうだ。
これ以上は、人間の方が作業の中止を指示しなくちゃいつまで経っても同じことの繰り返しになるだろう。機械は『諦める』ということを基本的にしないからな。
だが、リトライのログを確認すると、毎回、徐々にイレーネLJ10のシステムそのものが復元されてる様子が伺えた。修理用ナノマシンが、彼女の損なわれた機能を少しずつ回復させていってるんだ。
部品の交換を要する部分以外については。
もっとも、普通ならこれ以上やる意味はない。そこまでしなくても新しい機体を手に入れれば、内部ストレージからサルベージしたデータである程度までは復旧できるからだ。
しかし、<新しい機体>が手に入らない今では、俺もシモーヌも、どこで諦めるべきかということで思い切れずにいたのだった。
「私の気持ちとしては、完全に回復作業が行き詰まった時点でと思っています……」
シモーヌもそう言って、諦めきれない本音を吐露した。
そうだよな。二千年もあんな形で放置されてきて、それがこうやって発見されて、完全には元通りにならないとしても、せめて直せるところまではと考えてしまうのも、無理はない。
って言うか、俺自身がそう思ってる。
幸い、修理用ナノマシンについても、在庫はたっぷりある。さすがに残りの七機が発見されて同じように復元しようとしたら足りなくなる可能性はあるとしても、現時点で発見されてないし、そもそもイレーネLJ10が発見できたこと自体がメイフェアに次ぐとんでもない幸運な訳で、それがあと七回も続くとか、さすがにご都合主義が過ぎるというものだろう。
まあ、現実に有り得ないことが起こったりするなんてのもあったりするけどな。
いや、メイフェアとイレーネLJ10の発見が既にその<有り得ないこと>なんだけどさ。
なんてことを考えてた俺の前で、また、<有り得ないこと>の一つが起こってしまったのだった。
「……ここは…? コーネリアス号……?」
シモーヌが植物プラントで野菜の収穫をして、セシリアがメンテナンスを受け、メイフェアが工作室で、新型ドローンの制作をしているその時、イレーネLJ10をモニターしていたコーネリアス号が、その映像と音声を、こちらに送信してきたのだった。
「まさか…!?」
イレーネLJ10のメンテナンスについては、コーネリアス号のAI自体が何とか彼女を回復させようと何度もリトライしたらしく、結局、一週間かかっても終了しなかった。
人工皮膚については既に新品同様に復元され、失われた右前腕と右下腿、及び劣化したウイッグ(通常は消耗品扱いで交換が前提)以外は本来の姿を取り戻していたそうだ。
これ以上は、人間の方が作業の中止を指示しなくちゃいつまで経っても同じことの繰り返しになるだろう。機械は『諦める』ということを基本的にしないからな。
だが、リトライのログを確認すると、毎回、徐々にイレーネLJ10のシステムそのものが復元されてる様子が伺えた。修理用ナノマシンが、彼女の損なわれた機能を少しずつ回復させていってるんだ。
部品の交換を要する部分以外については。
もっとも、普通ならこれ以上やる意味はない。そこまでしなくても新しい機体を手に入れれば、内部ストレージからサルベージしたデータである程度までは復旧できるからだ。
しかし、<新しい機体>が手に入らない今では、俺もシモーヌも、どこで諦めるべきかということで思い切れずにいたのだった。
「私の気持ちとしては、完全に回復作業が行き詰まった時点でと思っています……」
シモーヌもそう言って、諦めきれない本音を吐露した。
そうだよな。二千年もあんな形で放置されてきて、それがこうやって発見されて、完全には元通りにならないとしても、せめて直せるところまではと考えてしまうのも、無理はない。
って言うか、俺自身がそう思ってる。
幸い、修理用ナノマシンについても、在庫はたっぷりある。さすがに残りの七機が発見されて同じように復元しようとしたら足りなくなる可能性はあるとしても、現時点で発見されてないし、そもそもイレーネLJ10が発見できたこと自体がメイフェアに次ぐとんでもない幸運な訳で、それがあと七回も続くとか、さすがにご都合主義が過ぎるというものだろう。
まあ、現実に有り得ないことが起こったりするなんてのもあったりするけどな。
いや、メイフェアとイレーネLJ10の発見が既にその<有り得ないこと>なんだけどさ。
なんてことを考えてた俺の前で、また、<有り得ないこと>の一つが起こってしまったのだった。
「……ここは…? コーネリアス号……?」
シモーヌが植物プラントで野菜の収穫をして、セシリアがメンテナンスを受け、メイフェアが工作室で、新型ドローンの制作をしているその時、イレーネLJ10をモニターしていたコーネリアス号が、その映像と音声を、こちらに送信してきたのだった。
「まさか…!?」
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