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シモーヌ

イレーネLJ10(せめてデータのサルベージだけでも)

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新暦〇〇〇九年一月二十五日。



という訳で、子供達のことは取り敢えずこれくらいとして、イレーネLJ10について改めて触れておきたいと思う。

昨日、メイフェアによって俺達の家に届けられた彼女は、セシリアとシモーヌ、更にはエレクシアによる点検でも、やはり起動する様子がまるで見られなかった。

外見上の破損としては、右前腕部の欠損、右下腿部の欠損が主なものとしてあげられ、他には人工皮膚の摩耗が見られた。

これらが例の<巨大生物>との戦闘などで生じたものかどうかは分からないものの、もし仮にそうだとしたら、生身の生物相手には絶対的なアドバンテージをもつ筈の要人警護仕様のメイトギアでさえダメージを負う程の強力な存在だったということが推測される。

もしそんなのが他にもうろついていたらとゾッとしたが、少なくともここまでのところはそんなものは発見されていないし、存在の痕跡すら、イレーネLJ10が呑み込まれたと思しき個体の白骨死体以外には確認できなかった。

そして、イレーネLJ10の体に付着していた巨大生物の体組織と思われる遺留物を分析器に掛けてみたところ、やはり約二千年前に死亡したものと推定された。コーネリアス号を離れ、独自にこの惑星を放浪していた際に遭遇し、戦闘になったんだろうな。

修理は不可能かもしれないが、データのサルベージはできるかもしれないということで、システム的に適合しない為にできることは知れてる俺の宇宙船で作業を行うのではなく、コーネリアス号に持ち帰ってそれを試すことになった。

「それでは、行ってきます」

あかりを俺に預け、シモーヌとセシリア及びメイフェアは、イレーネLJ10を乗せたローバーで、コーネリアス号へと向かった。

「まずは通常メンテナンスで復旧を図ってみます」

メイフェアの留守中、ほまれの警護をする為にエレクシアに出向いてもらえるよう宇宙船に籠った俺とタブレットを通じて会話しつつ、シモーヌらがイレーネLJ10をメンテナンス用のカプセルへと収納した。

それと同時に、別のカプセルでセシリア、メイフェアの順でメンテナンスを受ける。

しかし、セシリアとメイフェア両方のメンテナンスが終了してもイレーネLJ10のメンテナンスは、表示を見る限りでは二十パーセントしか進んでいなかった。欠損した四肢はどうにもならなくても、摩耗した人工皮膚の再生だけでもしようということなんだろう。

再起動できなければそれはまったく無駄になってしまうが、まあ、補修剤についてはまだ大量に残ってる(何しろ十二機分+予備だ)から、別に構わない。エレクシア用のそれとは成分からして違うので流用できないし。

結局、シモーヌらの滞在時間中にはメンテナンスが終了しなかった為、あとはコーネリアス号のAIに任せて、こちらに帰ることになったのだった。

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