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シモーヌ

蚊帳の外(シモーヌの母性が溢れすぎてて)

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新暦〇〇〇八年九月七日。



シモーヌとあかりの<母娘>は、本当の親子のように振る舞ってた。人間の赤ん坊よりも成長の早いあかりは、三ヶ月もすれば伝い歩きを始め、シモーヌを見て「ま~…」と声まで発するようになっていた。「ママ」と彼女を呼ぶのも近いだろう。

だからシモーヌも、そんなあかりのことが愛おしくて仕方ないようだ。

本当に片時も離れず一緒に暮らしていたのだ。

って言うか、なんか俺、今回は蚊帳の外のような気がするんですけど…?

あかり、ちゃんと俺に懐いてくれるだろうな……?







新暦〇〇〇八年十月一日。



俺はなるべく子供達とも関わるようにして相手もして、父親だと認識してもらえるようにはしてたつもりだった。だから今回のあかりについてもそうするつもりだった。

なのに、シモーヌがあんまりにも熱心に母親として接してるものだから、俺があかりに関わる機会がものすごく減ってしまっていた。何しろ、シモーヌとセシリアがいれば育児については完璧である。俺はいなくても何の問題もない。

このことについては、実は人間社会においても長く懸案事項になっていたらしい。

コーネリアス号が惑星探査をしていた三十八世紀頃よりもさらに昔、メイトギアがほとんどの家庭に普及した三十世紀頃には、非常に頼もしい助っ人を得たことで、母親とメイトギアさえいれば父親などいなくても育児の上では何も困らないと、家庭に居場所がない父親がどうしても出てきてしまっていたのだ。

メイトギアが当たり前に存在するようになる以前なら、その分、仕事に集中すればいいじゃないかと思われただろうが、仕事だけに没入し家庭を顧みない父親は老後に孤立する傾向が高く、家族と離れて暮らすようになり結果として孤独死するという事例が後を絶たなかったのだという。

そこでメイトギアにでも頼ればまだ身の回りの世話もしてもらえるのだろうが、そういう父親はプライドが高いのか何故かメイトギアに頼ることすら拒む傾向にあり、一人でいようとしたという話だった。

基本的には、家庭で孤立したことについて<拗ねてる>のだと心理学的には見做されている。もちろんそれに対して反論する声もあるものの、いかんせん他人の助けさえ拒むので、長く心理学的な説に説得力をもたせる結果にしかなっていなかったとも。

俺は幸い、ここまでちゃんと父親として認識されてきた(たぶん)し、たとえあかり一人が俺を父親だと認識してなくてもそんなに困りはしないんだが、それにしたって寂しいじゃないか。

人間よりずっと早く、しかも呆気ないくらいにあっさりと巣立っていくんだから、せめて一緒にいる時くらいはちゃんと父親でいたいなあ。

という訳で、俺はシモーヌに対して、積極的にあかりの世話をさせてもらうことを申し出ることになったのだった。

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