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シモーヌ
我が子(その辺りは厳しいな)
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新暦〇〇〇八年五月十八日。
シモーヌと光は、絵本を通じてすごく仲が良くなっていた。一緒に絵本を読んでるところなど、本当に歳の離れた姉妹のようにも見える。シモーヌも、光とは一番気が合うようだ。それが彼女の精神にとっていいように作用してるのなら何よりだな。
心配していた走と凱も、相変わらず元気だ。前にも言ったが、凱は前のボスと番っていた気の強そうな雌、旋とカップルになり、走と恵以上にイチャイチャしている。
走と凱による二人体制のボスというのはいささか特殊な事例なのかもしれないにせよ、コーネリアス号の船体の陰を住処として上手く危険を回避し、思った以上に平穏にやっていた。
だからシモーヌも本当に安心したようだった。その上で、メイフェアとセシリアがメンテナンスを受けに行く時には、彼女もついて行くことがある。自分の目で走達の様子を確認したいようだ。
なんだか、彼女があの子らの母親みたいだよ。実の母親である伏は相変わらずゴロゴロしてるけどな。
それはそれとして、問題は鷹とお腹の子だ。更に時間が過ぎていよいよ出産間近となって再度エコー検査してみたが、やはりお腹の子の<羽>はまったく形になっていなかった。それどころか、手や足の形も完全に人間のそれだ。間違いなく光と同じパターンだった。
「こういう場合、母親が我が子として認識できない場合がありますよね…」
エコー画像を見ながらシモーヌが言った。
「ああ……実際、密がそれで光を我が子と認識できなくて育児放棄した。セシリアやエレクシアがいてくれたからどうにかなったが……」
そう応えた俺に、彼女は意外なことを言ってきた。
「…もし、鷹さんが赤ちゃんを育てられないようなら、私が育ててみてもいいですか…?」
…え? あ、ええ!?
思いがけない提案に驚いた俺だったが、真剣な彼女の目を見て、冗談の類じゃないことはすぐに分かった。
そうか……生まれることができなかった<秋嶋シモーヌの子>のことを思い出してるんだろうな……だから俺も、
「…もし、鷹が育てようとしなかったらその時はお願いできるかな…?」
と応えていた。するとシモーヌは嬉しそうに顔をほころばせて、
「はい! 任せてください!」
と弾んだ声で言ったのだった。
新暦〇〇〇八年五月二十七日。
そしていよいよ、鷹の出産が始まる。宇宙船のキャビンに簡易の<巣>を作り、その時を待った。
完全に姿が違ってしまっていると、母親は生まれた子が自分の子とは認識できず、それどころか我が子を襲いに来た外敵と錯誤して殺してしまうこともあるという。
そういう事態に備えて、エレクシアには、<非常対応モード>で待機してもらうこととなった。
シモーヌと光は、絵本を通じてすごく仲が良くなっていた。一緒に絵本を読んでるところなど、本当に歳の離れた姉妹のようにも見える。シモーヌも、光とは一番気が合うようだ。それが彼女の精神にとっていいように作用してるのなら何よりだな。
心配していた走と凱も、相変わらず元気だ。前にも言ったが、凱は前のボスと番っていた気の強そうな雌、旋とカップルになり、走と恵以上にイチャイチャしている。
走と凱による二人体制のボスというのはいささか特殊な事例なのかもしれないにせよ、コーネリアス号の船体の陰を住処として上手く危険を回避し、思った以上に平穏にやっていた。
だからシモーヌも本当に安心したようだった。その上で、メイフェアとセシリアがメンテナンスを受けに行く時には、彼女もついて行くことがある。自分の目で走達の様子を確認したいようだ。
なんだか、彼女があの子らの母親みたいだよ。実の母親である伏は相変わらずゴロゴロしてるけどな。
それはそれとして、問題は鷹とお腹の子だ。更に時間が過ぎていよいよ出産間近となって再度エコー検査してみたが、やはりお腹の子の<羽>はまったく形になっていなかった。それどころか、手や足の形も完全に人間のそれだ。間違いなく光と同じパターンだった。
「こういう場合、母親が我が子として認識できない場合がありますよね…」
エコー画像を見ながらシモーヌが言った。
「ああ……実際、密がそれで光を我が子と認識できなくて育児放棄した。セシリアやエレクシアがいてくれたからどうにかなったが……」
そう応えた俺に、彼女は意外なことを言ってきた。
「…もし、鷹さんが赤ちゃんを育てられないようなら、私が育ててみてもいいですか…?」
…え? あ、ええ!?
思いがけない提案に驚いた俺だったが、真剣な彼女の目を見て、冗談の類じゃないことはすぐに分かった。
そうか……生まれることができなかった<秋嶋シモーヌの子>のことを思い出してるんだろうな……だから俺も、
「…もし、鷹が育てようとしなかったらその時はお願いできるかな…?」
と応えていた。するとシモーヌは嬉しそうに顔をほころばせて、
「はい! 任せてください!」
と弾んだ声で言ったのだった。
新暦〇〇〇八年五月二十七日。
そしていよいよ、鷹の出産が始まる。宇宙船のキャビンに簡易の<巣>を作り、その時を待った。
完全に姿が違ってしまっていると、母親は生まれた子が自分の子とは認識できず、それどころか我が子を襲いに来た外敵と錯誤して殺してしまうこともあるという。
そういう事態に備えて、エレクシアには、<非常対応モード>で待機してもらうこととなった。
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