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シモーヌ

隣人(彼女はそれでいいと思う)

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新暦〇〇〇七年十一月七日。



「ハーレムというのも大変ですね」

ひそかじんふくようと、日替わりどころか一日に複数の相手を相手をしないといけない俺に、シモーヌはむしろ同情を込めてそう言ってきた。

「まあ、ひそかは今じゃただ甘えてるだけなんでまだマシだが、以前は確かにね」

と、俺も苦笑いを浮かべながら応える。

一緒に暮らし始めて既に二ヶ月以上が過ぎ、彼女もすっかりここでの生活に慣れていた。

「コーネリアス号での生活は、どうしても集団での規律と、ここに人間社会を築く為に必要な計画に基いてという形でしたから、正直、あまりリラックスできるものではなかった気がします。リラックスすることすら計画的に行われてましたし。

でも、ここでの生活は本当にのんびりとしたものです。ただ毎日を楽しめばいい。成り行き任せで無計画で、その場の思い付きが優先される。

実に人間らしさと野生の自由さとで上手く折り合いをつけてると感じます」

なんて、そこまで言われると気恥ずかしいが、俺はただ無理なく人生を送りたかっただけだ。だから言う。

「俺に言わせてもらえればシモーヌ達が人間らしくあろうとしたことも大したものだと思うよ。俺なんか単に行き当たりばったりなだけさ」

それは、俺の正直な気持ちだ。不定形生物の襲撃がなければ彼女らの計画は上手くいっていたかもしれない。確かに精神的に追い詰められた乗員達もいたかもしれないが、そういうのもある程度は予測されてたことだろう。その上での計画だったはずだ。

しかしシモーヌにとっては今の俺達の生き方がホッとできたようだ。

「私もこのままお世話になっていいですか? ハーレムに加わるのは無理かもしれないですけど」

「あはは、それはむしろ俺の方がお願いしたいことだよ。正直、四人を相手にしてるだけで手一杯だ」

これも正直な気持ちだ。シモーヌは確かに魅力的な女性だが、ここに置くことを条件に彼女を求めるようなのもはっきり言って気が引ける。俺は別にフェミニストでも何でもないが、分別までは失いたくないと思ってるしな。

それに何より、体がもたないというのも紛れもない本音である。

シモーヌには、良い隣人でいてくれればいい。

という訳で、俺達の家の隣にシモーヌの為の家を建てることになった。俺とシモーヌも多少は手伝ったが、結局は殆どエレクシアにやってもらった。あと、メイフェアにも。

シモーヌの為に働けるということがメイフェアにとってはとても嬉しかったようだ。

それにしても、現在の彼女の主人であるほまれも随分と理解があるようだなあ。わざわざ付き添って近くまで来てくれるとか。

でもまあそれも、メイフェアの言うところによると、

ほまれ様は偵察係として派遣されているようです」

とのことだから、なるほどとも思ったりしたのだった。

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