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シモーヌ

存在意義(こんなこと考えるのも人間ならではか)

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『私の赤ちゃんが生まれてたら、こんな感じだったんでしょうか……』

シモーヌの呟きが胸に刺さると同時に、人間と野生動物とのメンタリティの違いについても改めて実感してしまった。

ひそか達は自分の子や仲間を守る時には必死にもなるが、死んだ仲間のことをいつまでも気に病んだりはしない。ちからはるかの基になったワニ人間ワニの死を悼んでいたのも、同じ姿をしたはるかが現れて泣いたのも、まだ亡くしたばかりだったからだろう。

彼らはそれこそ死と隣り合わせの世界に生きている。ついさっきまで一緒にいた仲間が突然、天敵に襲われて命を落とすことも普通のことだ。だからいつまでも悲しんではいられない。

それを薄情と感じるのは人間の<解釈>に過ぎないと俺は思う。彼らには彼らの悼み方があり、その上で気持ちを切り替えているのだろうから。

己の命を全うする為に。

だからと言って人間がメソメソし過ぎだと言うつもりもない。これはあくまで単なる<差異>なのだ。人間は野生の持つ頑健さや強靭さと引き換えに知恵を得て、そして群体のように寄り集まって支え合うことで生きるという選択を行っただけだ。だからこそ人間そのものを大切にし、それが喪われることを恐れるのだろう。

どちらが正解という訳でもないと思う。

……なんて、実際に自分が人間社会で生きていた時にはロクに考えもしなかったことが頭に浮かんできてしまう。人間の世界から遠く離れて生きてるが故の実感ってことか。皮肉な話だな。

だが、それだからこそ家族が大切にも思える。妹のことも、思い出さないことは実は一日とてない。あの子が俺の妹だったこと、そして自分の命を精一杯生きたことを、言い方は変かもしれないが<感謝>もしている。

今の俺の家族は、形の上では<ハーレム>かもしれないが、それはこの世界だからこそのものだ。俺なりにここに適応しようとしてこうなったということだと思う。それによって俺は救われた。

シモーヌがこれからどう生きていくのかは俺は知らない。俺は彼女じゃないからな。彼女をハーレムに加えるつもりも今のところはない。彼女がそれを望むなら拒むつもりもないが、俺の方からそれをもちかけるつもりもない。

彼女の立場は、ちからはるかと同じで、『たまたま同じ場所を住処と決めただけ』でいいと思う。互いを利用し合えばいい。彼女はあの不定形生物を由来としたことによって得た情報を俺に提供し、その代わりに俺は彼女を保護する。

それでいいじゃないか。

ま、彼女が有意な情報を持ってなかったとしても、それはそれで構わない。<人間のメンタリティを持った者>が傍にいてくれるというだけでも俺にとってもメリットだからな。

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