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シモーヌ

客人(取り敢えずはそういう立場で)

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『それはもうあなたのものよ』

秋嶋あきしまシモーヌにそう言ってもらえて、ひかりは嬉しそうに絵本をぎゅっと抱き締めた。メンタリティがかなり野性寄りだからか普通の人間の子供ほど表情は豊かじゃないが、俺には不思議とそういうのが分かった。今のは確かに喜んでる表情だ。

今まで通り絵本を読んでていいと改めて承諾をもらい、さっそく絵本を持って密林に入っていくひかりをドローンで追う。そこにはまためいが待っていた。ひかりに絵本を読んでもらう為だ。

その姿をモニターで見ながら、秋嶋シモーヌは言う。

「ちゃんと家族なんですね……」

最初はドン引きしてた彼女も、俺達がまあまあ家族として上手くやってる様子を見て認めてくれたらしい。

俺は毎日、一時間ほど彼女と話をした。俺の知る限りのことを包み隠さず。もちろん不定形生物のことも。

映像ではるかのことを見た時には、「私と同じ…!?」と驚いていた。

俺がいない時間には、メイフェアとモニター越しに喋っているらしい。厳密にはメイフェアはJAPAN-2ジャパンセカンド社の所有物であり(所有権が失効している可能性もあるものの)、本来優先するべきはほまれよりも彼女なんだが、やはり透明な体の彼女について、本来の秋嶋シモーヌとの同一性を確定させることができないらしい。メイフェアとセシリアの言う『秋嶋シモーヌに間違いありません』とは、あくまで『秋嶋シモーヌに極めて近い姿と記憶を持っていることに間違いありません』という意味でしかない。

法律的な解釈では、彼女はやっぱり<別人>ということなのだ。

それでも、メイフェアとセシリアは彼女のことを『秋嶋シモーヌとして』接してくれる。法律的な解釈とは別に、な。

たとえロボットでもその辺りの融通は利くのである。

人間以上に、人を人として扱うことが徹底してるからな、彼女らは。どんなロクデナシでもダメ人間でも彼女達はきちんと人として扱ってくれるぞ。まあ、中にはエレクシアの前のオーナーのように少々ひねくれたのもいて、敢えて冷淡な対応させるカスタムが施されたのもいるが。

いや、そんなエレクシアを必要としてる俺も大概か。

まあそれはさておき、こうして俺達の群れの<客人>として秋嶋シモーヌ、いや、シモーヌが加わることになった。

ひそかじんふくようはどうも彼女のことを警戒してる(ヤキモチ込み?)ようだが、その辺も少しずつ慣れていってもらえばいいだろう。そもそも俺は別に彼女とどうこうなるつもりもない。彼女にはフィアンセもいた訳だし、赤ん坊のこともまだ割り切れないだろうからな……

それでも、彼女にはちゃんと人間としての心があるらしい。だったらいくら体が透明でもそれを人間として扱うことに俺としても何の異論もなかったのだった。

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