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シモーヌ

興奮(これは非常に大きなことだぞ)

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秋嶋あきしまシモーヌを助けられたことで喜んでるメイフェアにホッとしながら、俺は、彼女とは別の意味で秋嶋シモーヌの存在を歓迎したい気分だった。

と言うのも、見た目はともかく言葉も話していたくらいだからほぼ完全な人間なのは間違いないからだ。

惑星プラネットハンターとしての仕事に出てからだともう十年ほど人間に会ってなかった訳で、久々の人間の存在に何とも言えない高揚感も覚えていた。

また、そういう感情だったり気分の問題とは別に、彼女が不定形生物が変化したものらしいという点でも大きな意味がある。

はるかワニ人間ワニだったから意思疎通が十分にできないし、知能はともかくそもそも知識がない。それに比べて多少なりとも言葉を話していた彼女は、ある程度は自身の記憶を説明できるだけの知識がある可能性が高い。いろいろ話を聞けそうなのだ。

不定形生物だった時の記憶があるのか、とかな。もしその記憶があったりすれば、それはとんでもなく重要な手掛かりになる。

とにかく、彼女が来たことでいろいろなことが分かるかもしれないという事実に、俺は静かに興奮していた。





新暦〇〇〇七年八月十五日。



が、さすがに腕がちぎれかけるほどの重傷だったこともあり、回復そのものは順調だったものの、やはり時間はかかった。治療カプセルから出るのに十日を要したのだ。

それでも焦っても仕方ない。メイフェアもエレクシアやセシリアのカメラを通して彼女の様子を見守っていた。

その間に改めて遺伝子解析もしてみる。しかし何度やってみても、俺が使ってる分析器で解析できる範囲で言えば完全に人間だった。混じりっ気なしのただの人間だ。しかもご丁寧に、老化抑制処置を受けた形跡もある。二千年前と言えば、老化抑制処置により人間の健康寿命が百五十歳だか百八十歳だかを超えたとかいうくらいの頃か。そこまで完全に再現されてるという訳だ。

そして十日目、左腕は完治までもうしばらくかかるもののそれ以外はほぼ健康と言っていい状態にまで回復した彼女が、治療カプセルの中で意識を取り戻した。

「…? ……?」

まだ意識が混乱してるらしく、目を開けて周囲を見回すが状況をよく理解できていない様子だった。しかし、それを受けてメイフェアが駆け付けた。ほまれに家の近くまで来てもらうことで。

ほむらあらたと遊んでもらっている間に、メイフェアが面会する。

この時の彼女の様子は、人間だったらそれこそ泣き崩れていただろう。メイトギアには涙を流す機能はないから泣けなかっただけで。

「シモーヌ……シモーヌ……!」

何度も名前を呼び自分を覗き込むメイフェアの姿が引き金になったのか、それまでぼんやりとした様子だった秋嶋シモーヌがハッとした表情に変わるのが分かった。そして、

「メイフェア…!?」

と、確かにメイフェアの名を呼んだ。その瞬間、この<透明な女性>は紛れもなく、秋嶋シモーヌ自身の記憶そのものも再現された存在であることが確実となったのだった。

「ああ…シモーヌ…! 会いたかった…! あなたに会いたかった…!! ごめんなさい…ごめんなさい……!」

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