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大家族

アリバイ作り(人間はズルいからな)

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ほまれのことが気になった俺は、あいつを見守る為に付けたドローンのカメラに切り替えた。すると、木の上ですやすやと寝ている姿が映り、ホッとする。ただこの時、その場所がどこだったのかということまで頭が回らなかった。どうしてもグンタイ竜グンタイとメイフェアXN12Aのことで頭がいっぱいだったし。

無事が確認できたほまれのことは横に置き、さて、どうやって女王とコミュニケーションを図るかだな。ここはもう、素直に『話し掛ける』ことにしよう。

「エレクシア。女王の知性を図るには話し掛けるのが一番だよな?」

念の為、エレクシアにも確認してみる。

「そうですね。多少なりとも知能があるのならそれに対して意図を感じる反応を示すでしょう。しかし、クモ人間クモの事例と、ドローンで確認できた様子を見る限り、その可能性はほぼゼロですが」

それでも、メイフェアXN12Aに対するせめてもの気遣いとして、俺はエレクシアに命じた。

「まずは話し掛けてみてくれ。その反応を見たい」

<威力偵察>という建前だったので、最初の予定ではとにかく群れに対していきなりショットガンをぶっ放してそれにどう反応するかを見る筈だったのだが、やり方を変更することにした。まあこれでも、反応を見るっていうのには変わりないだろう。

木の上を移動し、一気に群れに近付く。それに伴ってメイフェアXN12Aが移動したことを知らせる表示が、タブレットに映し出された。完全に敵対するつもりだな……

群れの上までくると、見張り役らしきグンタイ竜グンタイが気配に気付いたのか、「ギイッッ!!」と吠えた。瞬間、群れ全体にざわっとした気配が伝わる。女王も目を覚ましたらしく、「ギギギギギ!」と声を上げた。それにグンタイ竜グンタイの動きが揃う。

なるほど、自分の群れに命令を出せる程度の知能はあると見える。しかし必要なのは俺達とのコミュニケーション能力だ。こちらの要望を理解してくれるようでなければ説得のしようもない。

……いや…正直、こんなものはただの<アリバイ作り>でしかない。『やれることはした』とメイフェアXN12Aに対して言い訳をする為にやってるだけなのは十分に分かっている。それでも、彼女の気持ちを全く無視することはしたくない。メイフェアXN12A、いや、メイフェアだって俺の<家族>なんだからな。

我儘を言って反抗する。実に家族っぽいじゃないか。彼女は俺達を<我儘が言える相手>だと思ってくれてるんだから。

そう、いくら人間の感情を再現されていると言っても、メイフェアもロボットなんだ。本気で人間に歯向かうようなことはしないしできないように作られてる。ロボットで人間の感情を再現しようという試みで起こった事故も、詳細を調べれば結局は人間側の不適切な対応が原因だと判明している。エレクシアの言った人間相手の痴話喧嘩の果てに起こった事件にしても、人間の側があまりにもロボットを蔑ろにしたことがきっかけだったんだ。

メイフェアは、まだそこまで追い詰められてはいない筈なんだ。

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