103 / 2,387
大家族
表情(メイフェアXN12Aの特殊性)
しおりを挟む
新暦〇〇〇四年九月二十二日
ところで、ボス派と非ボス派に分かれて内紛が生じてるという群れでも、ボノボの如く濃密なスキンシップを行うことでお互いの感情をなだめ、決定的な対立にならないように努力もしてるようだが、それでも間に合わないくらいに仲違いすることもあるようで、特に、ボスを頂く雌の一部と、ボスと拮抗する力を持つ雄を頂く雌の一部とがまさにそういう状態らしく、実は雌同士(母娘、あるいは姉妹)が強烈にいがみ合ってるようだった。
この辺り、人間の業のようなものも残ってるということなのかね。
なお、チンパンジーやオランウータンよりは個人的な印象として近いと感じたから<ボノボ人間(仮)>と称してるだけで、実際のボノボの生態とはおそらく違う部分も多いのでその辺りは注意が必要だな。
まあそれはさて置き、誉は今日もメイフェアXN12Aを伴って<修行>に出たようだった。
今回は誉のことじゃなくて、メイフェアXN12Aのことに触れていこうと思う。
彼女は、彼女自身が言ってた通り、試験的なバージョンのアルゴリズムを搭載されていた。その為か、エレクシアやセシリアに比べて普段の様子の印象が微妙に違う。表情が豊かと言うか、感情のようなものがより顕著に見えるのだ。
前のオーナーの好みもあって、冷淡と言うかツンとしてると言うかなエレクシアはともかく、セシリアもエレクシアに比べれば常に笑顔を浮かべた穏やかな表情をしているが、見慣れてくるとやはり自分の立場をわきまえてかどこか一歩引いた感じがあるのに比べ、メイフェアXN12Aはとにかく表情がよく変わった。
本当の人間の女性と変わらないくらいに。恐らくそういうところも、人間の心をより詳細に把握する為に必要と考えられて与えられたものなんだろうな。
エレクシアが言う。
「メイフェアXN12Aに行われた試みについては正式な記録がなく私は把握していませんでしたが、同様の試みはこれまでにも何度も行われてきたという記録があります。それによって得られたデータが、現在の私達に活かされているということなのでしょう。
ただ、それぞれの試みの際には少なからず事故なども発生し、その中には<人間とロボットとの痴話喧嘩の果てに傷害事件に至った>などという実に嘆かわしい事例もありました。この事件ではロボットの側が<加害者>となったのです。実に恥ずべきことです。私が人間なら、唾棄しているところでしょう」
唾棄って……
エレクシアが「ペッ!」と唾を吐き棄てるところを想像してしまって、俺は思わず苦笑いを受かべていた。それを見たエレクシアが、
「何か?」
と詰問してきたので、
「いいえ、別に」
と、すっとぼけることになってしまったが。
その後、誉が帰ってくると、メイフェアXN12Aに懐いた焔と新もさっそく、誉がやっていた<パパ登り>ならぬ<メイフェア登り>をして、「うお~っ!」と吠え始めていたのだった。
でもまあそれは、今度は密じゃなく誉に押さえ付けられて叱られてたがな。こうやってルールが受け継がれていくわけだ。
だがそんな子供達の様子さえ、メイフェアXN12Aは嬉しそうに微笑みながら見守っていたのだった。
ところで、ボス派と非ボス派に分かれて内紛が生じてるという群れでも、ボノボの如く濃密なスキンシップを行うことでお互いの感情をなだめ、決定的な対立にならないように努力もしてるようだが、それでも間に合わないくらいに仲違いすることもあるようで、特に、ボスを頂く雌の一部と、ボスと拮抗する力を持つ雄を頂く雌の一部とがまさにそういう状態らしく、実は雌同士(母娘、あるいは姉妹)が強烈にいがみ合ってるようだった。
この辺り、人間の業のようなものも残ってるということなのかね。
なお、チンパンジーやオランウータンよりは個人的な印象として近いと感じたから<ボノボ人間(仮)>と称してるだけで、実際のボノボの生態とはおそらく違う部分も多いのでその辺りは注意が必要だな。
まあそれはさて置き、誉は今日もメイフェアXN12Aを伴って<修行>に出たようだった。
今回は誉のことじゃなくて、メイフェアXN12Aのことに触れていこうと思う。
彼女は、彼女自身が言ってた通り、試験的なバージョンのアルゴリズムを搭載されていた。その為か、エレクシアやセシリアに比べて普段の様子の印象が微妙に違う。表情が豊かと言うか、感情のようなものがより顕著に見えるのだ。
前のオーナーの好みもあって、冷淡と言うかツンとしてると言うかなエレクシアはともかく、セシリアもエレクシアに比べれば常に笑顔を浮かべた穏やかな表情をしているが、見慣れてくるとやはり自分の立場をわきまえてかどこか一歩引いた感じがあるのに比べ、メイフェアXN12Aはとにかく表情がよく変わった。
本当の人間の女性と変わらないくらいに。恐らくそういうところも、人間の心をより詳細に把握する為に必要と考えられて与えられたものなんだろうな。
エレクシアが言う。
「メイフェアXN12Aに行われた試みについては正式な記録がなく私は把握していませんでしたが、同様の試みはこれまでにも何度も行われてきたという記録があります。それによって得られたデータが、現在の私達に活かされているということなのでしょう。
ただ、それぞれの試みの際には少なからず事故なども発生し、その中には<人間とロボットとの痴話喧嘩の果てに傷害事件に至った>などという実に嘆かわしい事例もありました。この事件ではロボットの側が<加害者>となったのです。実に恥ずべきことです。私が人間なら、唾棄しているところでしょう」
唾棄って……
エレクシアが「ペッ!」と唾を吐き棄てるところを想像してしまって、俺は思わず苦笑いを受かべていた。それを見たエレクシアが、
「何か?」
と詰問してきたので、
「いいえ、別に」
と、すっとぼけることになってしまったが。
その後、誉が帰ってくると、メイフェアXN12Aに懐いた焔と新もさっそく、誉がやっていた<パパ登り>ならぬ<メイフェア登り>をして、「うお~っ!」と吠え始めていたのだった。
でもまあそれは、今度は密じゃなく誉に押さえ付けられて叱られてたがな。こうやってルールが受け継がれていくわけだ。
だがそんな子供達の様子さえ、メイフェアXN12Aは嬉しそうに微笑みながら見守っていたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる