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大家族

心(メイフェアXN12Aの昔語り。その4)

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私達ロボットは、本来、自らの体を意図的に傷付けることはできませんし、その必要もありません。

ですが、試験的なアップデートが行われていた私達は、それができてしまったのです。人間で言うところの自死行為的なことが。

そうして自らを破壊した三機中の二機がその時点で機能を停止し、残る一機も、二度目の襲撃の際に自らに蓄えられた電力を一瞬で放電することで、不定形生物を撃退することには成功したものの、それにより完全に機能停止してしまいました。

この時の彼女の行いを参考に、強力なスタンロッドを製作したりして不定形生物に対して用いましたが、電力不足であったのかまたは他の原因からか、怯ませることはできても撃退には至りませんでした。

度重なる不定形生物の襲撃により、訓練と試験を潜り抜けてきた筈の搭乗員の方々の精神にも大きな負担がかかったのでしょう。人数的にも定着計画の実現が難しくなったこともあってか、その後はそれぞれの関係も好ましい形を維持できなくなっていきました。

搭乗員同士の大きな衝突こそはありませんでしたが、相互の信頼関係は失われてしまったものと思われます。

私自身、秋嶋あきしまシモーヌを喪ったことが影響したのでしょうか。効率的な情報処理が行えなくなっていたのを感じていました。

そして、搭乗員の方々全員の命が失われるに至り、私達がコーネリアス号にいる意味さえ失われてしまったのです。

私達はコーネリアス号を去り、それぞれこの地で朽ちるのを待つことにしました。私もバッテリー内の電力を使い果たし、キャパシタ内の予備電力を残すだけとなった時点で眠りにつきました。メインフレーム内のデータの保持だけでも電力を僅かとは言え消費しますので、いずれ完全に機能停止する筈でした。

ですが、そんな私の前に彼は現れたのです。体毛に包まれた姿でしたが、私を見詰めるその目に、私は、秋嶋シモーヌの面影を見てしまいました。だから今度こそ守りたかった。守ることができて良かった。

さらに、あの不定形生物が生物の遺伝子を取り込み再現することができるというのを聞いて、合点がいきました。彼が、ほまれ様が彼女の遺伝子を受け継いでいるのだと。彼の中に、彼女が存在したあかしが残されているのだと。

誉様マスター、私はあなたと出逢ったことで救われました。ですから、私は今後、あなたに忠誠を誓います。あなたに従い、あなたを守ります。ですからお願いです。私をあなたの傍に置いてください。

どうか、あなたを守らせてください。

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