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大家族
対立(これも野生の姿ではあるんだが…)
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密林の中から聞こえてくる「うぉっっ! うぉっっ!」という声に、俺は言いようのない感覚に囚われていた。決して少なくない敵意を剥き出しにした、明らかな攻撃性をそこに感じたからだ。
「…おい、マズいんじゃないか……?」
思わずそんな言葉が漏れる。自分の口からこぼれたそれにハッとなり、俺はタブレットの画面を切り替えて、ドローンのカメラ映像を表示させた。
「誉はどこだ!? 誉の映像を出してくれ!」
俺の指示に、マイクロドローンを制御している宇宙船のAIが応え、カメラが切り替わった。そこに映っていたのは、同種の成体と思しき連中に取り囲まれながらもそれら相手に歯を剥き出して威嚇する誉の姿だった。
それは、密が誉に対してルールを教え込む時のそれとは明らかに違う、不穏な空気がカメラ越しにも伝わってくる光景だった。
だがその時、
「伏の出産が始まります!」
とセシリアの声が。
おいおい、マジかよ!? なんだってこんなタイミングで……!
それでも「伏を頼む!」とセシリアには命令する。
実は、エレクシアには、例のクモ人間の生息地に設置したマイクロドローン用コンテナのバッテリー交換に行ってもらっていたのだった。彼女なら往復でも十分と掛からない、それこそ近所のコンビニに買い物に行く程度のことだった。
もちろんその間もこちらとは通信で繋がっており、異変があればすぐに戻ってきてくれる。事実、既に戦闘モードに切り替わって全速力でこちらに向かってるのが分かった。
しかしその間にも、誉が追い回される映像が映し出されていた。
「くそっ!!」
俺はたまらずタブレットとハンドガンを手に密林の中に駆け込む。もっとも、俺が駆け付けたところで大したことができる訳じゃない。空に向けて威嚇発砲するが、距離がありすぎてまったく威嚇にならなかった。
宇宙船のAIが俺の意図を酌んで、マイクロドローンを向かわせ、誉に飛びかかろうとしてる奴らを威嚇する。とは言えそれも、虫がまとわりついてる程度のものにしかならない。一瞬は怯ませられても追い払うには至らない。
そんなマイクロドローンのカメラには、さすがに多勢に無勢で逃げ回るしかない誉の姿も映しだされていた。
「誉!!」
俺が叫んでも、その声は届かない。
恐らくその光景は、彼らの種族では日常のそれなんだろう。若い個体が己の縄張りを獲得する為に必要な、大人になる為に必要な、通過儀礼のようなものなんだろうとは思う。
だが、人間である俺にとっては、いてもたってもいられない光景だったんだよ。
「…おい、マズいんじゃないか……?」
思わずそんな言葉が漏れる。自分の口からこぼれたそれにハッとなり、俺はタブレットの画面を切り替えて、ドローンのカメラ映像を表示させた。
「誉はどこだ!? 誉の映像を出してくれ!」
俺の指示に、マイクロドローンを制御している宇宙船のAIが応え、カメラが切り替わった。そこに映っていたのは、同種の成体と思しき連中に取り囲まれながらもそれら相手に歯を剥き出して威嚇する誉の姿だった。
それは、密が誉に対してルールを教え込む時のそれとは明らかに違う、不穏な空気がカメラ越しにも伝わってくる光景だった。
だがその時、
「伏の出産が始まります!」
とセシリアの声が。
おいおい、マジかよ!? なんだってこんなタイミングで……!
それでも「伏を頼む!」とセシリアには命令する。
実は、エレクシアには、例のクモ人間の生息地に設置したマイクロドローン用コンテナのバッテリー交換に行ってもらっていたのだった。彼女なら往復でも十分と掛からない、それこそ近所のコンビニに買い物に行く程度のことだった。
もちろんその間もこちらとは通信で繋がっており、異変があればすぐに戻ってきてくれる。事実、既に戦闘モードに切り替わって全速力でこちらに向かってるのが分かった。
しかしその間にも、誉が追い回される映像が映し出されていた。
「くそっ!!」
俺はたまらずタブレットとハンドガンを手に密林の中に駆け込む。もっとも、俺が駆け付けたところで大したことができる訳じゃない。空に向けて威嚇発砲するが、距離がありすぎてまったく威嚇にならなかった。
宇宙船のAIが俺の意図を酌んで、マイクロドローンを向かわせ、誉に飛びかかろうとしてる奴らを威嚇する。とは言えそれも、虫がまとわりついてる程度のものにしかならない。一瞬は怯ませられても追い払うには至らない。
そんなマイクロドローンのカメラには、さすがに多勢に無勢で逃げ回るしかない誉の姿も映しだされていた。
「誉!!」
俺が叫んでも、その声は届かない。
恐らくその光景は、彼らの種族では日常のそれなんだろう。若い個体が己の縄張りを獲得する為に必要な、大人になる為に必要な、通過儀礼のようなものなんだろうとは思う。
だが、人間である俺にとっては、いてもたってもいられない光景だったんだよ。
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