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ハーレム
驚嘆(いや、まさかこんなことになるとは)
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新暦元年十月十日
悠が妊娠してから一ヶ月。まさかじれったいと思っていた俺の要望を聞き入れてくれた訳ではないだろうが、彼女は劇的な変化を見せていた。
「さすがにこういうところに違いがありましたか」
エレクシアも悠を見ながら感慨深そうに呟く。
そんな俺達の前には、人間なら妊娠八ヶ月前後くらいではないかと思われる大きな腹をした彼女の姿があった。
「野生動物ですから妊娠で身を守るのが難しくなる時期をなるべく短くする為に。というのとも違いそうですね」
『待つのも仕事ですよ』と言っていたセシリアCQ202も、この思いがけない事態には戸惑う様子を見せた。
確かに、野生では妊娠中だろうと天敵は遠慮しちゃくれないし、動きが鈍ってたりしたらそれこそ絶好の獲物ってことになるだろうから妊娠期間はなるべく短くしたいっていうのはあるかもしれないが、それにしてもこれはおかしいだろう。他の個体を妊娠初期から出産まで観察できたわけじゃないから正確にはまだ分からないが、少なくとも八ヶ月はかかると予測していた。にも拘らずこれだ。あの不定形生物自体の能力と考えるのが自然だな。
しかも、不可解なことは他にもある。悠の胎児そのものだ。ここまでになってしまうと見たくなくても見えてしまうんだが、悠の腹の中の胎児は、力と同じく透明じゃなかった。完全に普通の姿だった。
「透明な体は、あくまであの不定形生物の特徴ということだったのかもしれません。子供には引き継がれない可能性が出てきましたね」
エレクシアの言葉に、俺も頷いていた。
「これで、あの不定形生物が密達の直接のルーツである可能性も高まったかもしれない。コーネリアス号の乗員達の遺伝子を取り込み、落雷等の刺激を受けて今の悠と同じように別の形態をとったのが子供を産んで、それが密達に繋がった可能性が」
俺の言葉に、セシリアCQ202が続く。
「はい。その可能性は高いと私も考えます。確率的には決して高くないでしょうが、河に雷が落ちるところはこれまでにも何度か確認されました。そもそも生物の発生は天文学的な確率の偶然の積み重ねによるものだと考えられていますし、それを思えば有り得ない話ではないのかもしれませんね」
「ああ。そうしてキメラ化した生物同士で繁殖を行った結果、今の密や刃や伏や鷹や力になっていったのかもな。悠になったあの不定形生物の残りの部分も別の姿になって生きて、繁殖を行ってるかもしれない。できればそれを実際に確認したいが」
別にどうでもいいと言ってしまえばそうなんだが、こうしてヒントが提示されるとついつい考察が捗ってしまう。となるとその証拠となるものを確認したくなるのも人間の性分ってものか。
「そうですね。幸い、私達には十分な時間があります。今後、改めて確認できる機会が訪れる可能性も十分にあるでしょう。マスターが望まれるのでしたら、私はその為に働きます」
そんな風に言ってくれるエレクシアに、俺は頭が下がる想いだった。それが彼女達メイトギアにとっての普通だとしても、今の俺には胸に響く。
「ありがとう。いくら調べても誰にも伝えられないとしても、記録に残しておけばもしまた次に俺達みたいなのが現れた時には役に立つかもしれないしな」
そうだ。コーネリアス号の乗員達の記録も、俺達にとって役に立っている。特に、食材になるものの情報はありがたかった。それのおかげで食事が充実したからな。俺達が調べたことが今度はより早くここでの生活に馴染める役に立つかも。
って、それは遭難者が出ること前提だな。
ただ、いずれ、夢色星団の危険な宙域を安全に航行できる方法が見付かってこの惑星が発見されて入植が始まるようなことがあれば、密達の子孫がただの可愛らしい珍獣ではなく、ここに人間が生きていたことの証拠だというのを示せるかもしれない。となれば、早々に記録が発見されるようにしておくことも必要かもな。
まあそれについては、救難信号を出しっぱなしにすることで対応している。アミダ・リアクターがあれば数万年は電気の心配は要らない筈だし、構造が単純で故障する可能性が極めて低い救難信号用の発信機の耐久性も数千年レベルだ。コーネリアス号についてはさすがに二千年以上放置されていた影響が少なからず出ていたりするものの、宇宙船に比べればさすがにシンプルな構造を持つロボットであるセシリアCQ202がこうして動作してるくらいだから、俺達がいなくなっても信号だけは出し続けてくれるだろう。
また、コーネリアス号の件で紙による記録の有効性も再確認できたことだし、俺もそれに倣って紙の記録を残すことにした。字があまり綺麗じゃないから他人に見られるのは恥ずかしいが、俺が死んでから発見される分にはいいか。
エレクシアとセシリアCQ202の予測によると、後一週間ほどで悠と力の子供が生まれてくるだろうということだった。こうなったら、立ち合い出産よろしくその瞬間も見届けてやろうじゃないか。
悠が妊娠してから一ヶ月。まさかじれったいと思っていた俺の要望を聞き入れてくれた訳ではないだろうが、彼女は劇的な変化を見せていた。
「さすがにこういうところに違いがありましたか」
エレクシアも悠を見ながら感慨深そうに呟く。
そんな俺達の前には、人間なら妊娠八ヶ月前後くらいではないかと思われる大きな腹をした彼女の姿があった。
「野生動物ですから妊娠で身を守るのが難しくなる時期をなるべく短くする為に。というのとも違いそうですね」
『待つのも仕事ですよ』と言っていたセシリアCQ202も、この思いがけない事態には戸惑う様子を見せた。
確かに、野生では妊娠中だろうと天敵は遠慮しちゃくれないし、動きが鈍ってたりしたらそれこそ絶好の獲物ってことになるだろうから妊娠期間はなるべく短くしたいっていうのはあるかもしれないが、それにしてもこれはおかしいだろう。他の個体を妊娠初期から出産まで観察できたわけじゃないから正確にはまだ分からないが、少なくとも八ヶ月はかかると予測していた。にも拘らずこれだ。あの不定形生物自体の能力と考えるのが自然だな。
しかも、不可解なことは他にもある。悠の胎児そのものだ。ここまでになってしまうと見たくなくても見えてしまうんだが、悠の腹の中の胎児は、力と同じく透明じゃなかった。完全に普通の姿だった。
「透明な体は、あくまであの不定形生物の特徴ということだったのかもしれません。子供には引き継がれない可能性が出てきましたね」
エレクシアの言葉に、俺も頷いていた。
「これで、あの不定形生物が密達の直接のルーツである可能性も高まったかもしれない。コーネリアス号の乗員達の遺伝子を取り込み、落雷等の刺激を受けて今の悠と同じように別の形態をとったのが子供を産んで、それが密達に繋がった可能性が」
俺の言葉に、セシリアCQ202が続く。
「はい。その可能性は高いと私も考えます。確率的には決して高くないでしょうが、河に雷が落ちるところはこれまでにも何度か確認されました。そもそも生物の発生は天文学的な確率の偶然の積み重ねによるものだと考えられていますし、それを思えば有り得ない話ではないのかもしれませんね」
「ああ。そうしてキメラ化した生物同士で繁殖を行った結果、今の密や刃や伏や鷹や力になっていったのかもな。悠になったあの不定形生物の残りの部分も別の姿になって生きて、繁殖を行ってるかもしれない。できればそれを実際に確認したいが」
別にどうでもいいと言ってしまえばそうなんだが、こうしてヒントが提示されるとついつい考察が捗ってしまう。となるとその証拠となるものを確認したくなるのも人間の性分ってものか。
「そうですね。幸い、私達には十分な時間があります。今後、改めて確認できる機会が訪れる可能性も十分にあるでしょう。マスターが望まれるのでしたら、私はその為に働きます」
そんな風に言ってくれるエレクシアに、俺は頭が下がる想いだった。それが彼女達メイトギアにとっての普通だとしても、今の俺には胸に響く。
「ありがとう。いくら調べても誰にも伝えられないとしても、記録に残しておけばもしまた次に俺達みたいなのが現れた時には役に立つかもしれないしな」
そうだ。コーネリアス号の乗員達の記録も、俺達にとって役に立っている。特に、食材になるものの情報はありがたかった。それのおかげで食事が充実したからな。俺達が調べたことが今度はより早くここでの生活に馴染める役に立つかも。
って、それは遭難者が出ること前提だな。
ただ、いずれ、夢色星団の危険な宙域を安全に航行できる方法が見付かってこの惑星が発見されて入植が始まるようなことがあれば、密達の子孫がただの可愛らしい珍獣ではなく、ここに人間が生きていたことの証拠だというのを示せるかもしれない。となれば、早々に記録が発見されるようにしておくことも必要かもな。
まあそれについては、救難信号を出しっぱなしにすることで対応している。アミダ・リアクターがあれば数万年は電気の心配は要らない筈だし、構造が単純で故障する可能性が極めて低い救難信号用の発信機の耐久性も数千年レベルだ。コーネリアス号についてはさすがに二千年以上放置されていた影響が少なからず出ていたりするものの、宇宙船に比べればさすがにシンプルな構造を持つロボットであるセシリアCQ202がこうして動作してるくらいだから、俺達がいなくなっても信号だけは出し続けてくれるだろう。
また、コーネリアス号の件で紙による記録の有効性も再確認できたことだし、俺もそれに倣って紙の記録を残すことにした。字があまり綺麗じゃないから他人に見られるのは恥ずかしいが、俺が死んでから発見される分にはいいか。
エレクシアとセシリアCQ202の予測によると、後一週間ほどで悠と力の子供が生まれてくるだろうということだった。こうなったら、立ち合い出産よろしくその瞬間も見届けてやろうじゃないか。
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