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ハーレム
さらに捜索(現状、まだ殆ど何も分かってないからな)
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セシリアCQ202を操舵室に残し、エレクシアは船内をさらに捜索した。
ロボット用のメンテナンスルームが見付かったのでそちらにも無線給電機で給電する。すると何とか稼働した。そこでセシリアCQ202を持ち込みメンテナンスを実行。それが終了するまでの間、メンテナンスルーム内を調べてみた。
恐らく人間の担当者が使っていたのであろう机があり、鍵が掛かった引き出しを、エレクシアにこじ開けさせる。
本来はそういう行為はロボットにはできないんだが、遭難者の捜索の為に救急救命モードを起動させ、緊急事態として対処させた。
「セシリアCQ202用のユーザー向けブックレットがありました。未開封ですね。開封しますか?」
エレクシアの問い掛けに俺はもちろん「開封しろ」と命じる。と、そこにはユーザーコードが記されていた。組織内でメイトギアを共有して運用するためのものだった。これで<コーネリアス号搭乗員>としてユーザー登録ができる。
電子制御は便利な部分もある半面、データが失われると回復させるのに一苦労だよな。その点、紙のマニュアルやテキストは見ればすぐに分かるから、電気的な影響を受けない分、長期保存にはやっぱり向いてるようだ。
手に入れたユーザーコードで、セシリアCQ202のユーザー登録を行う。
「ユーザー登録が完了しました。初めまして、錬是様」
エレクシア越しとは言え、久しぶりに名前で呼ばれてハッとなる。エレクシアは俺のことを<マスター>と呼ぶし、密も刃も言葉は発しないからな。
メンテナンス用のカプセルに入った状態で、セシリアCQ202は微笑みかけていた。以前は嘘臭いと毛嫌いしていたメイトギアの笑顔だが、こうして久しぶりに見ると意外と悪くないかもしれない。そもそも笑顔というものを見るのが久しぶりだ。
まあそれはさておき、とにかく情報が欲しい。さらに引き出しの中を調べると、開封済みのユーザー向けブックレットもあり、そこに手書きでパスワードらしきものが記されていた。もしやと思ってデータ復元を再度試し、パスワードを入力する。
「データを復元中です。しばらくお待ちください」
とのこと。よし、これでかなりのことが分かる筈だ。
セシリアCQ202のメンテナンスを実行してる間に、エレクシアに船内を一通り捜索してもらった。しかしやはり人間の姿はなかった。乗員の個室らしい部屋も覗いたが、多少、物が散らかってはいても遺体などは見当たらない。ということは、亡くなった乗員がいたとしても残った乗員が弔ったんだろうな。
人命検索が終了し、エレクシアはメンテナンスルームへと戻った。そこには、メンテナンスとデータの復元を終了したセシリアCQ202が待機していた。さらりとした銀髪を腰まで垂らし、やはりエレクシアよりも華奢な印象のある細身のシルエットで、どこか儚げにも見える彼女は静かに口を開いた。
「錬是様。バックアップデータ内の最終の日付と、現在のそれとの間に、一九三三年の開きがあります。また、船が機能を全喪失し、私のバッテリーが限界まで低下したところで記憶が終了していました。現在までの経緯を説明していただいてもよろしいでしょうか?」
そこで、ローバーに戻るまでの間にエレクシアと無線通信でデータを交換させた。現在のとはシステムが違ってしまっていて、完全なリンクはできなかった。暗号通信も規格がまったく違っているのでオープンチャンネルでの通信になったが、どうせ傍受される心配もないし問題ないだろう。
エレクシアに伴われて宇宙船から出たセシリアCQ202は、改めて俺に深々と頭を下げて挨拶をした。
セシリアCQ202から得られた情報によると、探査船コーネリアス号は乗員六十名を乗せ、ハイパードライブのテストも兼ねて入植可能な惑星を探していたそうだ。しかし、銀河歴一〇五一年三月七日、現在は夢色星団と呼ばれているN8455星団の強力な電磁波異常に巻き込まれて宇宙船が故障。辛うじてこの惑星に不時着し、救助を待つことにしたそうだった。
しかし、超空間通信も通常通信も届かないここでは救助が来る当てもなく、乗員六十名は否応なくこの地に根差すしかなかった。
元々、十分な訓練を受けた彼らは、自然豊かで水も食料も困らないこの惑星の環境に適応し、小さなコミュニティーを作って暮らしていたそうだが、ある時、正体不明の生物の襲撃を受けて半数が死亡、その後も度々、その生物の襲撃を受けて、不時着から二十年後、とうとう全滅したという。
セシリアCQ202ら十二機のメイトギアも人間を守る為に戦ったものの、物理攻撃が殆ど通用しないその生物が相手では成す術もなく、それでいてロボットであるが故にその生物には襲われず、破損した三機を除き、人間がいなくなったここに取り残される形になったそうだ。
メイトギア達は、亡くなった乗員達を弔った後、乗員達の遺志を継いでこの惑星を調査する為に、戦闘能力を持たないセシリアCQ202を残して宇宙船を離れ、そして結局、一機も戻ってこなかったらしい。
残されたセシリアCQ202は、一人で仲間の帰りを待っていたが、約二百年後に宇宙船の機能がすべて失われて、充電もできなくなったことでバッテリーが上がると同時に彼女も機能停止したのだった。
ロボット用のメンテナンスルームが見付かったのでそちらにも無線給電機で給電する。すると何とか稼働した。そこでセシリアCQ202を持ち込みメンテナンスを実行。それが終了するまでの間、メンテナンスルーム内を調べてみた。
恐らく人間の担当者が使っていたのであろう机があり、鍵が掛かった引き出しを、エレクシアにこじ開けさせる。
本来はそういう行為はロボットにはできないんだが、遭難者の捜索の為に救急救命モードを起動させ、緊急事態として対処させた。
「セシリアCQ202用のユーザー向けブックレットがありました。未開封ですね。開封しますか?」
エレクシアの問い掛けに俺はもちろん「開封しろ」と命じる。と、そこにはユーザーコードが記されていた。組織内でメイトギアを共有して運用するためのものだった。これで<コーネリアス号搭乗員>としてユーザー登録ができる。
電子制御は便利な部分もある半面、データが失われると回復させるのに一苦労だよな。その点、紙のマニュアルやテキストは見ればすぐに分かるから、電気的な影響を受けない分、長期保存にはやっぱり向いてるようだ。
手に入れたユーザーコードで、セシリアCQ202のユーザー登録を行う。
「ユーザー登録が完了しました。初めまして、錬是様」
エレクシア越しとは言え、久しぶりに名前で呼ばれてハッとなる。エレクシアは俺のことを<マスター>と呼ぶし、密も刃も言葉は発しないからな。
メンテナンス用のカプセルに入った状態で、セシリアCQ202は微笑みかけていた。以前は嘘臭いと毛嫌いしていたメイトギアの笑顔だが、こうして久しぶりに見ると意外と悪くないかもしれない。そもそも笑顔というものを見るのが久しぶりだ。
まあそれはさておき、とにかく情報が欲しい。さらに引き出しの中を調べると、開封済みのユーザー向けブックレットもあり、そこに手書きでパスワードらしきものが記されていた。もしやと思ってデータ復元を再度試し、パスワードを入力する。
「データを復元中です。しばらくお待ちください」
とのこと。よし、これでかなりのことが分かる筈だ。
セシリアCQ202のメンテナンスを実行してる間に、エレクシアに船内を一通り捜索してもらった。しかしやはり人間の姿はなかった。乗員の個室らしい部屋も覗いたが、多少、物が散らかってはいても遺体などは見当たらない。ということは、亡くなった乗員がいたとしても残った乗員が弔ったんだろうな。
人命検索が終了し、エレクシアはメンテナンスルームへと戻った。そこには、メンテナンスとデータの復元を終了したセシリアCQ202が待機していた。さらりとした銀髪を腰まで垂らし、やはりエレクシアよりも華奢な印象のある細身のシルエットで、どこか儚げにも見える彼女は静かに口を開いた。
「錬是様。バックアップデータ内の最終の日付と、現在のそれとの間に、一九三三年の開きがあります。また、船が機能を全喪失し、私のバッテリーが限界まで低下したところで記憶が終了していました。現在までの経緯を説明していただいてもよろしいでしょうか?」
そこで、ローバーに戻るまでの間にエレクシアと無線通信でデータを交換させた。現在のとはシステムが違ってしまっていて、完全なリンクはできなかった。暗号通信も規格がまったく違っているのでオープンチャンネルでの通信になったが、どうせ傍受される心配もないし問題ないだろう。
エレクシアに伴われて宇宙船から出たセシリアCQ202は、改めて俺に深々と頭を下げて挨拶をした。
セシリアCQ202から得られた情報によると、探査船コーネリアス号は乗員六十名を乗せ、ハイパードライブのテストも兼ねて入植可能な惑星を探していたそうだ。しかし、銀河歴一〇五一年三月七日、現在は夢色星団と呼ばれているN8455星団の強力な電磁波異常に巻き込まれて宇宙船が故障。辛うじてこの惑星に不時着し、救助を待つことにしたそうだった。
しかし、超空間通信も通常通信も届かないここでは救助が来る当てもなく、乗員六十名は否応なくこの地に根差すしかなかった。
元々、十分な訓練を受けた彼らは、自然豊かで水も食料も困らないこの惑星の環境に適応し、小さなコミュニティーを作って暮らしていたそうだが、ある時、正体不明の生物の襲撃を受けて半数が死亡、その後も度々、その生物の襲撃を受けて、不時着から二十年後、とうとう全滅したという。
セシリアCQ202ら十二機のメイトギアも人間を守る為に戦ったものの、物理攻撃が殆ど通用しないその生物が相手では成す術もなく、それでいてロボットであるが故にその生物には襲われず、破損した三機を除き、人間がいなくなったここに取り残される形になったそうだ。
メイトギア達は、亡くなった乗員達を弔った後、乗員達の遺志を継いでこの惑星を調査する為に、戦闘能力を持たないセシリアCQ202を残して宇宙船を離れ、そして結局、一機も戻ってこなかったらしい。
残されたセシリアCQ202は、一人で仲間の帰りを待っていたが、約二百年後に宇宙船の機能がすべて失われて、充電もできなくなったことでバッテリーが上がると同時に彼女も機能停止したのだった。
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