80 / 91
友達にヒドイこと言いたくないよ……
しおりを挟む
「うちのおじーちゃんがさあ、『家事と育児は女の仕事だ』ってお母さんのこと怒鳴るんだよ。だから私、おじーちゃん大っ嫌い。ま、お小遣いとかお年玉くれるのはいーけどさ。正直、金づるだよね」
ある日、うちに遊びに来たよっしーがそんなこと言いだした。まあいつものことだからそんなに気にしないで、
「ふ~ん、大変だね」
とだけ答えておいた。
そう言えばパパが言ってたな。
「『家事と育児は女の仕事だ』ってよく聞く言葉だけど、そういうこと言ってる人って物事を一面でしか見てないんだなってすごく思う。なにしろ、昔だってよくよく調べてみたらその家のお母さん一人でやってた訳じゃない筈だしさ。主に女性がしてたのは事実でも、一人でしてた訳じゃないと思うんだよね。
昔は、家に何人も家族がいて、何だかんだとみんなが手伝ってたと思うんだ。でも、今は核家族が基本になって、大人が家に二人しかいないっていうのが普通になってるだろ? だったら二人しかいない大人が手分けしてやるのは当たり前じゃないかなあ。
それを、『家事と育児は女の仕事だ』とか言ってお母さんだけに押し付けて、それが合理的だとでも思ってるのかな?」
って。
正直、パパは家の片付けとかが下手だ。料理だって下手だからご飯はいっつもスーパーのお惣菜とか冷凍食品だ。でも私は別にそれを不満には思ってない。パパはそれが苦手だっていうだけだから。私が女の子らしい可愛い振りするのとかが苦手なのと同じなんだ。別に困ってないから文句もない。
ただ、よっしーがお祖父ちゃんのことを「おじーちゃん大っ嫌い」とか「金づるだよね」って言うのを聞くのは、本音言わせてもらえば悲しかった。
だからそれから何日かして、学校で……
「私…友達にヒドイこと言いたくないよ……」
私、学校から帰ってきてすぐ、パパの前でそう言った。
「ヒドイこと言いたくないよ……」
もう一度そう言った私に、
「そうか……そんな風に思う美智果を、お父さんは偉いと思うよ……」
って言いながら、パパは頭を撫でてくれた。そしたらポロポロと勝手に涙があふれてきた。そんな私を、パパはそっと抱き締めてくれた。
「…アキちゃんがね…イジワルなこと言ってくるんだ…。だから私、思わず『もう、顔も見たくない!』って言っちゃって……ヒドイこと言っちゃった……」
そうなんだ。アキちゃんがイジワルなこと言ってくるのもイヤだったけど、そんなアキちゃんに『顔も見たくない!』って言っちゃったのがすごくイヤだった。悲しくなった。
「美智果……意地悪なことを言ってきた相手にもそんな風に思えるとか、本当にとっては自慢の娘だよ……
偉いな、美智果は……」
パパは、私の話をちゃんと聞いてくれる。だから好きなんだ。
ある日、うちに遊びに来たよっしーがそんなこと言いだした。まあいつものことだからそんなに気にしないで、
「ふ~ん、大変だね」
とだけ答えておいた。
そう言えばパパが言ってたな。
「『家事と育児は女の仕事だ』ってよく聞く言葉だけど、そういうこと言ってる人って物事を一面でしか見てないんだなってすごく思う。なにしろ、昔だってよくよく調べてみたらその家のお母さん一人でやってた訳じゃない筈だしさ。主に女性がしてたのは事実でも、一人でしてた訳じゃないと思うんだよね。
昔は、家に何人も家族がいて、何だかんだとみんなが手伝ってたと思うんだ。でも、今は核家族が基本になって、大人が家に二人しかいないっていうのが普通になってるだろ? だったら二人しかいない大人が手分けしてやるのは当たり前じゃないかなあ。
それを、『家事と育児は女の仕事だ』とか言ってお母さんだけに押し付けて、それが合理的だとでも思ってるのかな?」
って。
正直、パパは家の片付けとかが下手だ。料理だって下手だからご飯はいっつもスーパーのお惣菜とか冷凍食品だ。でも私は別にそれを不満には思ってない。パパはそれが苦手だっていうだけだから。私が女の子らしい可愛い振りするのとかが苦手なのと同じなんだ。別に困ってないから文句もない。
ただ、よっしーがお祖父ちゃんのことを「おじーちゃん大っ嫌い」とか「金づるだよね」って言うのを聞くのは、本音言わせてもらえば悲しかった。
だからそれから何日かして、学校で……
「私…友達にヒドイこと言いたくないよ……」
私、学校から帰ってきてすぐ、パパの前でそう言った。
「ヒドイこと言いたくないよ……」
もう一度そう言った私に、
「そうか……そんな風に思う美智果を、お父さんは偉いと思うよ……」
って言いながら、パパは頭を撫でてくれた。そしたらポロポロと勝手に涙があふれてきた。そんな私を、パパはそっと抱き締めてくれた。
「…アキちゃんがね…イジワルなこと言ってくるんだ…。だから私、思わず『もう、顔も見たくない!』って言っちゃって……ヒドイこと言っちゃった……」
そうなんだ。アキちゃんがイジワルなこと言ってくるのもイヤだったけど、そんなアキちゃんに『顔も見たくない!』って言っちゃったのがすごくイヤだった。悲しくなった。
「美智果……意地悪なことを言ってきた相手にもそんな風に思えるとか、本当にとっては自慢の娘だよ……
偉いな、美智果は……」
パパは、私の話をちゃんと聞いてくれる。だから好きなんだ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
白衣の下 拝啓、先生お元気ですか?その後いかがお過ごしでしょうか?
アーキテクト
恋愛
その後の先生 相変わらずの破茶滅茶ぶり、そんな先生を慕う人々、先生を愛してやまない人々とのホッコリしたエピソードの数々‥‥‥ 先生無茶振りやめてください‼️
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
運命の番が解体業者のおっさんだった僕の話
いんげん
BL
僕の運命の番は一見もっさりしたガテンのおっさんだった。嘘でしょ!?……でも好きになっちゃったから仕方ない。僕がおっさんを幸せにする! 実はスパダリだったけど…。
おっさんα✕お馬鹿主人公Ω
おふざけラブコメBL小説です。
話が進むほどふざけてます。
ゆりりこ様の番外編漫画が公開されていますので、ぜひご覧ください♡
ムーンライトノベルさんでも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる