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勉強ってパズルみたいで
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海美神は語る。
「漫画とかはね、今はだいたい電子書籍の方で買うようにしてるんだ。でないと部屋が埋まっちゃうから。でも、どうしても形として手元に置いときたいって思ったのだけは本の方も買ってる。でもまだこんなにあるんだよね」
「てへへ♡」という感じで照れくさそうに微笑いながらそう言う彼女に、琴美も煌輝もやはり唖然としていた。本当に自分達とはまったく違う種類の人間だと感じた。なのに、悪くない。なぜか嫌じゃない。
二人がそう感じる一方で、海美神のこのノリについていけないのか、学校では人気があるように見える彼女ではありつつ、小さな交差点でも信号を守るという彼女の在り方だけでもう大半の者は、
『学校だけでいいや』
と思うらしい。学校での彼女の人気ぶりにあやかってすり寄っては来るものの、プライベートで関わろうとする者はいないのだ。それは結局、彼女の圧倒的な『正しさ』の前にいたたまれなくなるのだろう。それでいて陰口を叩かれようが『おかしい!』と言われようがめげることのないメンタルタフネスぶりに、攻撃する気も失せてしまうようだ。
ともかく、三人で勉強を始める。基本的には苦手な部分を教え合う形で。
海美神は、現代文が苦手だと言う。それについて彼女は、
「私ね、勉強ってパズルみたいで好きなんだ。特にかっちりと正解があるものについては。数学とか物理とか歴史とか、もう決まった正解があるじゃん? 結局、抜けてるピースをはめていくって作業じゃん? でさ、それがかっちりハマった時のが楽しいんだ! でも、現代文ってか、『この時の登場人物の気持ちを考えよ』とか『作者の気持ちを考えよ』とかってのは苦手。だって、私、その人じゃないもん。その人の気持ちなんてその人にしか分かんないよね? それを考えろなんて言われても、『分かるかーっ!』って思っちゃう」
と語る。けれど琴美はそれについて、
「え…? でもあれって、そんな完璧に心情とか理解しなくてもいいと思うんだけど。だいたいでいいって思ってた。てか、どっちかって言ったら出題者が何を訊きたいのか?ってのを考察するものなんじゃないの?」
正直に思ってることを口にする。けれどそれに対しては、
「う~ん、それもよく聞くけどさ。そもそも<出題者の狙い>ってのが分かんないんだよ。かっちりした答のある問題だったらさ、『引っ掛けてやろう』とか『意地悪してやろう』みたいな意図も見えてくんだけどなあ」
苦笑い。
すると今度は、煌輝が、
「でも、そういう問題って、要するに問題として出されてる範囲内にある言葉の中でそれっぽいのを当てはめたらいいだけなんじゃないの……?」
と発言したのだった。
「漫画とかはね、今はだいたい電子書籍の方で買うようにしてるんだ。でないと部屋が埋まっちゃうから。でも、どうしても形として手元に置いときたいって思ったのだけは本の方も買ってる。でもまだこんなにあるんだよね」
「てへへ♡」という感じで照れくさそうに微笑いながらそう言う彼女に、琴美も煌輝もやはり唖然としていた。本当に自分達とはまったく違う種類の人間だと感じた。なのに、悪くない。なぜか嫌じゃない。
二人がそう感じる一方で、海美神のこのノリについていけないのか、学校では人気があるように見える彼女ではありつつ、小さな交差点でも信号を守るという彼女の在り方だけでもう大半の者は、
『学校だけでいいや』
と思うらしい。学校での彼女の人気ぶりにあやかってすり寄っては来るものの、プライベートで関わろうとする者はいないのだ。それは結局、彼女の圧倒的な『正しさ』の前にいたたまれなくなるのだろう。それでいて陰口を叩かれようが『おかしい!』と言われようがめげることのないメンタルタフネスぶりに、攻撃する気も失せてしまうようだ。
ともかく、三人で勉強を始める。基本的には苦手な部分を教え合う形で。
海美神は、現代文が苦手だと言う。それについて彼女は、
「私ね、勉強ってパズルみたいで好きなんだ。特にかっちりと正解があるものについては。数学とか物理とか歴史とか、もう決まった正解があるじゃん? 結局、抜けてるピースをはめていくって作業じゃん? でさ、それがかっちりハマった時のが楽しいんだ! でも、現代文ってか、『この時の登場人物の気持ちを考えよ』とか『作者の気持ちを考えよ』とかってのは苦手。だって、私、その人じゃないもん。その人の気持ちなんてその人にしか分かんないよね? それを考えろなんて言われても、『分かるかーっ!』って思っちゃう」
と語る。けれど琴美はそれについて、
「え…? でもあれって、そんな完璧に心情とか理解しなくてもいいと思うんだけど。だいたいでいいって思ってた。てか、どっちかって言ったら出題者が何を訊きたいのか?ってのを考察するものなんじゃないの?」
正直に思ってることを口にする。けれどそれに対しては、
「う~ん、それもよく聞くけどさ。そもそも<出題者の狙い>ってのが分かんないんだよ。かっちりした答のある問題だったらさ、『引っ掛けてやろう』とか『意地悪してやろう』みたいな意図も見えてくんだけどなあ」
苦笑い。
すると今度は、煌輝が、
「でも、そういう問題って、要するに問題として出されてる範囲内にある言葉の中でそれっぽいのを当てはめたらいいだけなんじゃないの……?」
と発言したのだった。
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