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自宅学習
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そして今日は、琴美らが通う学校で入学試験が行われるため、在校生は自宅学習だった。
それもあり、昨日、海美神が、
「うちに集まって勉強しない?」
と訊いてきた。それに対して琴美は、
「いいけど……牧島さんも誘っていいかな……?」
と尋ねる。
「うんうん! もちろんいいよ! じゃあ、私と琴美と牧島さんの三人だね♡」
海美神は屈託なくそう笑顔になってくれた。とは言え、煌輝が承諾してくれるとは限らない。琴美としても、断られても仕方ないと思いつつ、
「明日、大森さんの家で勉強会しようと思うんだけど、ちょっと不安だから牧島さんも一緒に行ってくれたら助かるんだけど……」
そう提案した。すると煌輝は、明らかに戸惑った様子も見せつつも、
「釈埴さんがそう言うんだったら……」
承諾した。正直なところ、煌輝にとっては複雑な気持ちもあるものだったが、琴美の傍にいられるならと思った。何より、自宅にはいたくなかったのだ。いつもは当てもなく駅に隣接する商業施設などで無料Wi-Fiを利用してネットを見て時間を潰していたりもしたのである。
それが、海美神まで一緒とはいえ、琴美といられるのなら断る理由もなかった。あのどす黒い感情のもつれについては、嘘のように晴れている。
「やあ! 君達が海美神の学校の友達だね!? ようこそいらっしゃい! 今日は君達が来るということで仕事は休みにしたんだ! 僕が海美神の父親の義綱、そして」
「母親の真理愛です。よろしくね♡」
何と言うか、それこそ光に包まれた、それどころか『光そのもの』といった風な、まだ三十代になったばかりくらいという印象の若い夫婦が出迎えてくれた。
しかしこの二人がまぎれもなく海美神の両親である。
「は……初めまして……お邪魔します……」
思わず圧倒されてようやくそれだけを口にした琴美に続き、
「お邪魔します……」
煌輝も何とか挨拶ができた。正直、<ちゃんとした挨拶>ではなかったものの、義綱と真理愛は気にしてる様子もない。
それにしても、<アニメ好き>と聞いていたのでもっとこう、<オタク>な人達だと琴美は想像していたが、これはあくまで、
<アニメも好きというだけの快活な人達>
と言うべきか。しかも、
「お父さんは、<大森モータース>の創始者なんだ。女の子で知ってる人はほとんどいないけど、知ってる人は知ってる、日本国内で十八番目の自動車メーカーなんだよ」
海美神が紹介したとおり、<大森モータース>は、元は<カスタムカー>と呼ばれる他のメーカーが製造した自動車を改造したものを販売していた会社だったが、コンポーネントこそ既存のメーカーから供給を受けつつも設計そのものは自社で行った自動車を製造販売する<自動車メーカー>であった。
それもあり、昨日、海美神が、
「うちに集まって勉強しない?」
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海美神は屈託なくそう笑顔になってくれた。とは言え、煌輝が承諾してくれるとは限らない。琴美としても、断られても仕方ないと思いつつ、
「明日、大森さんの家で勉強会しようと思うんだけど、ちょっと不安だから牧島さんも一緒に行ってくれたら助かるんだけど……」
そう提案した。すると煌輝は、明らかに戸惑った様子も見せつつも、
「釈埴さんがそう言うんだったら……」
承諾した。正直なところ、煌輝にとっては複雑な気持ちもあるものだったが、琴美の傍にいられるならと思った。何より、自宅にはいたくなかったのだ。いつもは当てもなく駅に隣接する商業施設などで無料Wi-Fiを利用してネットを見て時間を潰していたりもしたのである。
それが、海美神まで一緒とはいえ、琴美といられるのなら断る理由もなかった。あのどす黒い感情のもつれについては、嘘のように晴れている。
「やあ! 君達が海美神の学校の友達だね!? ようこそいらっしゃい! 今日は君達が来るということで仕事は休みにしたんだ! 僕が海美神の父親の義綱、そして」
「母親の真理愛です。よろしくね♡」
何と言うか、それこそ光に包まれた、それどころか『光そのもの』といった風な、まだ三十代になったばかりくらいという印象の若い夫婦が出迎えてくれた。
しかしこの二人がまぎれもなく海美神の両親である。
「は……初めまして……お邪魔します……」
思わず圧倒されてようやくそれだけを口にした琴美に続き、
「お邪魔します……」
煌輝も何とか挨拶ができた。正直、<ちゃんとした挨拶>ではなかったものの、義綱と真理愛は気にしてる様子もない。
それにしても、<アニメ好き>と聞いていたのでもっとこう、<オタク>な人達だと琴美は想像していたが、これはあくまで、
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と言うべきか。しかも、
「お父さんは、<大森モータース>の創始者なんだ。女の子で知ってる人はほとんどいないけど、知ってる人は知ってる、日本国内で十八番目の自動車メーカーなんだよ」
海美神が紹介したとおり、<大森モータース>は、元は<カスタムカー>と呼ばれる他のメーカーが製造した自動車を改造したものを販売していた会社だったが、コンポーネントこそ既存のメーカーから供給を受けつつも設計そのものは自社で行った自動車を製造販売する<自動車メーカー>であった。
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