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私が死んでも悲しんだりしないだろうな……
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こうして琴美は、大森海美神と一緒に学校に通うようになった。海美神が前、琴美が後という形に縦一列に並んで、小さな交差点でも信号を守った。するとその二人の脇を、スマホを操作しながら自転車が走り抜けた。
しかも、建物の陰になってたようだが、自動車が来ていたのを無視して。すると自動車の運転手が、
「ビーッ!!」
明らかに苛立った様子でクラクションを鳴らした。なのに、スマホを操作しながら走っていく自転車の運転手は、まったく気にしてる様子もない。
それでも、もし事故になれば、自分が被害者だと、交通弱者だから、自動車の方が気を付けるべきだなどと言うのかもしれない。
けれど、そんなことは別にして、
「あんなことしてて車に撥ねられて死んじゃったら、家族が悲しむと思わないのかなあ……」
海美神は悲し気にそう言った。この言葉に、琴美も思う。
『多分あの人達は、私が死んでも悲しんだりしないだろうな……だけどお兄ちゃんは悲しむよね……私も、お兄ちゃんが死んじゃったらもう生きていけない気がする……』
だから、ちゃんと気を付けないといけないと思う。
『自動車が来てなかったら別に信号なんか守る必要ないだろ』
と言う人間は多いが、今回のように自動車が来ててもそのまま突っ切る者は決して少なくない。人間は、自分が思っているほど注意深く周りを見てなどいないのだ。
だから事故が起こる。
もちろん、
『交通ルールを守ってさえいれば事故には遭わない』
などという単純なものではない。普通に信号待ちをしていたところに暴走した自動車が突っ込んでくることだってある。けれど、
『自動車が来ているのにそれを見落として信号無視をして事故になった』ら、当人は元より自動車の運転手も不幸になるではないか。
たった数十秒や一分少々の時間を節約するために一生を棒に振るのが利口な人間のすることなのか?
『事故さえ起こさなきゃいいだろ!』
と言うかもしれないが、『事故さえ起こさなきゃいい』のなら、なぜ<自動車保険>などに入る? 『事故を起こさない』のなら、万が一に備える必要などないではないか?
いくら気を付けているつもりでもその<万が一>は起こりえるから、<自動車保険>などに入るのだろう?
交通ルールを守るのも、結局はそれである。万が一の事態に遭遇する確率を下げることが目的なのだ。
一真と琴美の両親はそれを教えてはくれなかったが、たまたま両親への反発を基にルールを守るようにして、そこに結人達が<根拠>を示してくれたことで納得できたのである。
そしてまた、海美神も同じように考えている。
琴美は、自分が改めて認められたような気がして、嬉しかったのだった。
しかも、建物の陰になってたようだが、自動車が来ていたのを無視して。すると自動車の運転手が、
「ビーッ!!」
明らかに苛立った様子でクラクションを鳴らした。なのに、スマホを操作しながら走っていく自転車の運転手は、まったく気にしてる様子もない。
それでも、もし事故になれば、自分が被害者だと、交通弱者だから、自動車の方が気を付けるべきだなどと言うのかもしれない。
けれど、そんなことは別にして、
「あんなことしてて車に撥ねられて死んじゃったら、家族が悲しむと思わないのかなあ……」
海美神は悲し気にそう言った。この言葉に、琴美も思う。
『多分あの人達は、私が死んでも悲しんだりしないだろうな……だけどお兄ちゃんは悲しむよね……私も、お兄ちゃんが死んじゃったらもう生きていけない気がする……』
だから、ちゃんと気を付けないといけないと思う。
『自動車が来てなかったら別に信号なんか守る必要ないだろ』
と言う人間は多いが、今回のように自動車が来ててもそのまま突っ切る者は決して少なくない。人間は、自分が思っているほど注意深く周りを見てなどいないのだ。
だから事故が起こる。
もちろん、
『交通ルールを守ってさえいれば事故には遭わない』
などという単純なものではない。普通に信号待ちをしていたところに暴走した自動車が突っ込んでくることだってある。けれど、
『自動車が来ているのにそれを見落として信号無視をして事故になった』ら、当人は元より自動車の運転手も不幸になるではないか。
たった数十秒や一分少々の時間を節約するために一生を棒に振るのが利口な人間のすることなのか?
『事故さえ起こさなきゃいいだろ!』
と言うかもしれないが、『事故さえ起こさなきゃいい』のなら、なぜ<自動車保険>などに入る? 『事故を起こさない』のなら、万が一に備える必要などないではないか?
いくら気を付けているつもりでもその<万が一>は起こりえるから、<自動車保険>などに入るのだろう?
交通ルールを守るのも、結局はそれである。万が一の事態に遭遇する確率を下げることが目的なのだ。
一真と琴美の両親はそれを教えてはくれなかったが、たまたま両親への反発を基にルールを守るようにして、そこに結人達が<根拠>を示してくれたことで納得できたのである。
そしてまた、海美神も同じように考えている。
琴美は、自分が改めて認められたような気がして、嬉しかったのだった。
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