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意味分かんない……

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 一真と結人ゆうとのそんなやり取りを見て、琴美は少し羨ましいと感じた。一真も結人も優しいから、自分に対してそこまで遠慮のない言い方をしてくれない。これは、一真と結人が男同士だからというのもあるのだろう。自分が女だから少し距離を置かれてる気はする。普段、遠慮はないようにも思えつつも、だ。
 まあ二人とも、その辺りは器用じゃないというのもあるだろうか。
 とは言え、自分を大切にしてくれてるのは分かるから、そこまで望むのは贅沢なのだとも思う。
 と、結人がスマホで時間を確認し、
「おっと、いけねえ。千早ちはやんとこに行く時間だ。じゃあ、後で沙奈子と千早も連れてくるからよ。またな」
 笑顔で手を振りながら出て行った。

 残された一真と琴美は、結人が去って静まり返った部屋を改めて見回し、
「ここが俺達の家なんだな……」
「そうだね……」
 呟いて、何とも言えないホッとするものを感じていた。
 結人によって手際よくカーテンも吊るされていて、ユニット畳の上に炬燵も置かれ、ずっと人間が住んでいる部屋らしくなった気がした。
 でも、まだだ。まだ腰を落ち着けることはできない。前の部屋に管理会社が来て、部屋の確認をすることになっている。
「じゃ、俺が行ってくるから、琴美はここで待っててくれ。鍵は一つ俺が持っていく」
 言いつつ、予備と合わせて二つあった鍵のうちの一つを自分のキーホルダーに付け替えた一真が部屋を出て、鍵を閉めた。
『お兄ちゃん……』
 一真を見送った琴美は、買い物袋と、前のアパートから持ってきた段ボール箱を開けて、キッチン用品等の小物を出して片付けていき、風呂場にも諸々必要なものを収めていく。使い込まれた風呂椅子や洗面器も、あの両親も使っていたものだったからいい気はしなかったものの贅沢はできないから使えるうちは使おうと思った。
 それらを所定の場所に置くだけで、ますます生活感が増していく。
 ますますここが自分達の家になるんだという実感が増していく。
 ますますあの両親から離れることができたんだという実感が増していく。
 そうして持ってきた荷物を一通り片付けられ、空いた段ボール箱を潰すと、琴美は炬燵に入ってごろりと横になり、蛍光灯じゃなくLEDのシーリングライトが備えられた天井をぼんやり見上げた。
 すると突然、涙が溢れてくる。
 正直、自分がとても情緒不安定になっているのも感じる。嬉し過ぎて安心し過ぎて、それがまだ完全には自分の中に収まっていなくて、その所為で感情が目まぐるしく入れ替わるのだろう。
「あはは……なんかもう、意味分かんない……」
 物心ついた頃からずっと心から安堵できたことなどなかった所為か、逆に自分がおかしくなっているのを感じたのだった。

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