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それはなんとも
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『他者に対して攻撃的に振る舞わないなんて当たり前!』
そんな風に言う者は多いが、それを言っている当人が<気に入らない相手>には非常に攻撃的である事例のいかに多いことか。
なるべく他者に対しては攻撃的に振舞おうとしないように心掛けている一真や琴美でさえ、両親に対しては、ネット上とはいえ攻撃的なコメントを残してしまうこともある。
だから完璧になることはできないけれど、極力、攻撃的にならないように心掛けることはできるはずだ。
フミの場合も、父親はむしろ理性的な人物なのだが、母親がとにかく攻撃的な人物で、自分に都合が悪い気に食わない好みに合わない相手に対してはとにかく罵詈雑言の限りを尽くすタイプの人間だった。それにより多くの敵を作り親族さえ叩き潰そうとしてきた。
しかも、
『気に入らない相手の娘が同じ学校に通っているから』という理由で、フミを強制的に転校させようとさえしたことがある。しかしフミにとっては大切な友人がいる学校だった。なのに彼女の意見には耳を貸さず『転校しろ』の一点張り。この時点では唯一、母親に意見できる人物だった祖父から口を利いてもらって事なきを得たものの、その<気に入らない相手の娘>というのは、フミの従姉であり部活の先輩という人物だった。それがいるから自分の娘を転校させると騒ぎ立てたのである。
そんな母親のおかげでフミは大変に肩身の狭い思いもしたそうだ。
だからこそ彼女は、丁寧に理性的に他者と接することを心掛けているのだという。
しかもそのおかげで、今は心穏やかに過ごせている。
母親の干渉がない時だけではあるが。
そんなフミが、帰りのハイヤーの中で、尋ねてくる。
「ところで一真くん。なんかいいことがあった?」
「え? そう見えますか?」
慌てる一真に、
「うん。なんか今日、朝から機嫌がいいみたいだったからさ。ちょっと気になってたんだよね」
と。
フミ自身、問題のある親を持つ者として一真のことは気にかけてくれていたので、察することができてしまったようだ。だから一真も観念する。
「実は、両親が、宝くじが当たったとかで家を出ていったんです」
「マジ!?」
「はい、マジです。『俺達はお前らの所為で台無しになった自分の人生をエンジョイするからよ』とか言って出ていきました」
「はあ~……それはなんとも、だね……」
「ええ、そうですね」
「まあでも、向こうから出てってくれた分にはラッキーだったんじゃない?」
「それはもう。どうやって逃げるかばっかり考えてましたから」
「分かる! 私もそればっか考えてる!」
そんな風に言う者は多いが、それを言っている当人が<気に入らない相手>には非常に攻撃的である事例のいかに多いことか。
なるべく他者に対しては攻撃的に振舞おうとしないように心掛けている一真や琴美でさえ、両親に対しては、ネット上とはいえ攻撃的なコメントを残してしまうこともある。
だから完璧になることはできないけれど、極力、攻撃的にならないように心掛けることはできるはずだ。
フミの場合も、父親はむしろ理性的な人物なのだが、母親がとにかく攻撃的な人物で、自分に都合が悪い気に食わない好みに合わない相手に対してはとにかく罵詈雑言の限りを尽くすタイプの人間だった。それにより多くの敵を作り親族さえ叩き潰そうとしてきた。
しかも、
『気に入らない相手の娘が同じ学校に通っているから』という理由で、フミを強制的に転校させようとさえしたことがある。しかしフミにとっては大切な友人がいる学校だった。なのに彼女の意見には耳を貸さず『転校しろ』の一点張り。この時点では唯一、母親に意見できる人物だった祖父から口を利いてもらって事なきを得たものの、その<気に入らない相手の娘>というのは、フミの従姉であり部活の先輩という人物だった。それがいるから自分の娘を転校させると騒ぎ立てたのである。
そんな母親のおかげでフミは大変に肩身の狭い思いもしたそうだ。
だからこそ彼女は、丁寧に理性的に他者と接することを心掛けているのだという。
しかもそのおかげで、今は心穏やかに過ごせている。
母親の干渉がない時だけではあるが。
そんなフミが、帰りのハイヤーの中で、尋ねてくる。
「ところで一真くん。なんかいいことがあった?」
「え? そう見えますか?」
慌てる一真に、
「うん。なんか今日、朝から機嫌がいいみたいだったからさ。ちょっと気になってたんだよね」
と。
フミ自身、問題のある親を持つ者として一真のことは気にかけてくれていたので、察することができてしまったようだ。だから一真も観念する。
「実は、両親が、宝くじが当たったとかで家を出ていったんです」
「マジ!?」
「はい、マジです。『俺達はお前らの所為で台無しになった自分の人生をエンジョイするからよ』とか言って出ていきました」
「はあ~……それはなんとも、だね……」
「ええ、そうですね」
「まあでも、向こうから出てってくれた分にはラッキーだったんじゃない?」
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