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親自身が子供の学習を妨害してくる事例
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そうして一真が仕事をこなしている時、琴美は図書室で今日の分の課題をこなしていた。家では両親に邪魔をされてとても課題などしてられないとして一真からアドバイスを受けたことで、小学校の頃からそうしていた。
実は琴美や一真が通っていた小学校では、
『宿題は学校ではせずに家に帰ってからしましょう』
と指導されていた。これは、家庭で宿題などをこなせるように親からも指導してもらうことを狙っての方針だったのだが、共働き世帯も多く、またシングル家庭もあり、夜遅くにならないと親が帰ってこないという家庭も少なくないことからすでに現状に則していないのでは?との意見も出始めているものだった。
それでも、子供の学習意欲の向上には親の協力も欠かせないとして、原則、続けられてはいる。いるが、肝心の親自身が子供の学習を妨害してくる事例ともなると前提条件が変わってきてしまうため、そういう家庭については特例措置として図書室で宿題を済ませることを認めても来た。
これもあり、一真も琴美も、
『学校で宿題や課題を済ませてから帰る』
という習慣が身に付いているのだ。
『子供が学校でどんなことを学んでいるのか?を親が知る絶好の機会として<宿題>をさせている』
学校としてはこういった狙いもあったものの、それ自体を疎む親がいることは忸怩たる思いもあるようだ。
<子供のことを知ろうとする努力自体を疎む親>
がいるというわけである。
琴美や一真の両親はまさにその典型だと言えるだろう。
そんなこんなで課題をこなしていた琴美の斜め向かいの席に黙って着いて、同じように課題を始めた者がいた。
「……」
けれど琴美は、わずかに視線を向けただけで挨拶をするでもなく自分の課題を続ける。
そこにいたのは、隣のクラスの女子生徒だった。名は、
<牧島煌輝>
大変に<キラキラした名>ではあるものの、その表情は酷く冷めていて、<煌輝>という文字から受ける印象とは非常に遠いところにいるかのようだ。制服も着崩したりせず、髪の毛を染めたり脱色したりもせず、決して目立つようなタイプではない。
琴美と煌輝は共に会話を躱すでもなく、黙々と課題をこなしていく。が、しばらくすると、
「ごめん…ここ、分かる……?」
煌輝が不意に課題のプリントを琴美に向けて訪ねてきた。それに対して琴美も戸惑うことなく、
「ああ、これは、この数式で……」
自身の課題のプリントを示しながら説明した。
「あ、そうか。ありがと……」
「ん……」
実は二人は、こうして一緒に課題をこなしているのである。ただし、お互い、普段は行動を共にしたりするわけでもないのだが。
実は琴美や一真が通っていた小学校では、
『宿題は学校ではせずに家に帰ってからしましょう』
と指導されていた。これは、家庭で宿題などをこなせるように親からも指導してもらうことを狙っての方針だったのだが、共働き世帯も多く、またシングル家庭もあり、夜遅くにならないと親が帰ってこないという家庭も少なくないことからすでに現状に則していないのでは?との意見も出始めているものだった。
それでも、子供の学習意欲の向上には親の協力も欠かせないとして、原則、続けられてはいる。いるが、肝心の親自身が子供の学習を妨害してくる事例ともなると前提条件が変わってきてしまうため、そういう家庭については特例措置として図書室で宿題を済ませることを認めても来た。
これもあり、一真も琴美も、
『学校で宿題や課題を済ませてから帰る』
という習慣が身に付いているのだ。
『子供が学校でどんなことを学んでいるのか?を親が知る絶好の機会として<宿題>をさせている』
学校としてはこういった狙いもあったものの、それ自体を疎む親がいることは忸怩たる思いもあるようだ。
<子供のことを知ろうとする努力自体を疎む親>
がいるというわけである。
琴美や一真の両親はまさにその典型だと言えるだろう。
そんなこんなで課題をこなしていた琴美の斜め向かいの席に黙って着いて、同じように課題を始めた者がいた。
「……」
けれど琴美は、わずかに視線を向けただけで挨拶をするでもなく自分の課題を続ける。
そこにいたのは、隣のクラスの女子生徒だった。名は、
<牧島煌輝>
大変に<キラキラした名>ではあるものの、その表情は酷く冷めていて、<煌輝>という文字から受ける印象とは非常に遠いところにいるかのようだ。制服も着崩したりせず、髪の毛を染めたり脱色したりもせず、決して目立つようなタイプではない。
琴美と煌輝は共に会話を躱すでもなく、黙々と課題をこなしていく。が、しばらくすると、
「ごめん…ここ、分かる……?」
煌輝が不意に課題のプリントを琴美に向けて訪ねてきた。それに対して琴美も戸惑うことなく、
「ああ、これは、この数式で……」
自身の課題のプリントを示しながら説明した。
「あ、そうか。ありがと……」
「ん……」
実は二人は、こうして一緒に課題をこなしているのである。ただし、お互い、普段は行動を共にしたりするわけでもないのだが。
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