美智果とお父さん

京衛武百十

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裸なんてちっともエロくない!

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「裸なんてちっともエロくない!」

ある日、塾から帰った美智果がいつも通りにパンツ一丁になったかと思うとリビングの真ん中で仁王立ちになって拳を握り締めてそう力説していた。

「確かに、裸がエロいんじゃない。エロい気持ちになるから裸がエロく見えるんだ」

僕は仕事をしながら躊躇なく冷静にそう応えた。家族みんなが裸族になって、僕はすごく実感してた。ヌーディストビーチで裸になってる人たちはエロい気持ちになってないんだなって。ヌーディストビーチでエロい気持ちになってる人は邪道なんだなって。

とまあそれはさておき、我が家にタブーとなる話題というものはない。エロだろうが何だろうが、その時に必要だと思った話題が大事なんだ。

でも、どうしたんだ急に? そう思って訊いてみる。

「ど~した~? 何があった~?」

仕事をしながら背中を向けたまま訊くと美智果は、

「よっしーが、私のこと<エロ>って呼んでくるんだよ。家でパンツ一丁だって言ったら」

だって。『よっしー』というのは、好美よしみちゃんっていう、娘の友達の一人だ。

「あ~、そりゃ世間的にはそういう認識かもな~。でもうちはまったくそういうの当てはまらないからな~」

その通りだった。妻とはラブラブだったけど、家で全裸の妻を見ただけじゃ別に興奮したりしなかった。何て言うか、そういう気分になった時にエロスを感じるんだ。だから妻に恥じらいがなくても色気がなくても関係なかった。娘がいない時に二人きりになったりしたらどちらともなくそういう気分になってイタしてたりしてた。よく二人目が来なかったものだと感心する。

子供にとって親のセックスの話題とかタブーだと聞く。でも美智果は、エロい話題は嫌いだけど、僕と妻がいちゃいちゃしてる様子を見るのは好きだったらしい。当然、何をしてるのかも知ってた。だから美智果にとって僕と妻の関係は<エロいもの>という認識じゃないみたいだった。両親の仲が悪くてそのことで文句ばかり言ってる同級生の子とかに対しては、『うちのママとパパはめっちゃ仲いいも~ん』と、口には出さないけど秘かに自慢してたんだって。

そんなこんなで、美智果にとっての<不快なエロ>とは、エロい気持ちで笑えない下ネタを振ってくるとかそういうことを指すんだって最近分かってきた。

う~ん。エロというもの一つとってもそれぞれ定義が違うものなんだなあと、ちょっと感心してみたり。ただし、痴漢とかその辺の性犯罪についてはガッツリ不快なエロの範疇らしいので、そういう意味では普通かな。あと、援助交際とかについても、

『吐きそうなほど気持ち悪い』

とのこと。そういう認識なら、親としては安心材料かもしれないね。

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