神河内沙奈の人生

京衛武百十

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彼女視点

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彼女は決して人間を信用しない。彼女にとって人間は危険な存在であり敵でしかない。その中で一部、自分に食べ物や風呂を提供してくれる変わった奴が、『変』な奴が存在する。その程度の認識だった。

ヘラヘラと締まりのない顔で近寄ってくる者も何人もいたが、そういう連中も結局は自分のことを異質な扱いにくい動物としか見てないことを、彼女は動物的な直感で感じ取っていた。

だが、この家に来てからは、そういうのとは違う、自分に乱暴する人間もいない上にヘラヘラと締まりのない顔をする奴も減った代わりに『変』な人間が増えた気がする。この家のぬしらしい男とよく話をしている少し太った女はやっぱりヘラヘラと締まりのない顔をする奴だったが、それ以外は、ぬしを含めて自分のことにあまり構おうともしない、自分と似た感じの奴ばかりだった。

そうだ、『変』と言えば、今日連れて行かれた場所で自分の前にいた女も、ヘラヘラしてるように見えて、だが実際には決して締まりのない顔をしてるわけじゃない、特に『変』な奴だった。そいつが相手だと、なんだか警戒を少しだけ緩めてもいいかもって気にさせられる。しかし彼女は、それを受け入れようとはしなかった。危険な人間相手にそんなことは絶対に出来ないと思っていた。

食事の後、部屋の隅のいつもの場所に座って、彼女はこの家のぬしの様子を窺っていた。こいつもかなり『変』な奴だった。自分に食事をくれるのに、体を弄ろうとしないのだ。今日は初めて触られたが、これまでの奴らとはやはり全然違っていた。痛いことや苦しいことをされないのはありがたかったが、半面、気持ちいいこともしてくれなかった。彼女は、藍繪汐治らんかいせきじ網螺春喜あみらはるきによる性的虐待を、自分が受け入れるしかないものとして受け入れて、それに順応していたのであった。そうするしかなかったのだ。

だから、体をいじられてもてあそばれて与えられる刺激を<気持ち良いもの>として受け入れることに慣れてしまっていた。そして、決して溺れる訳ではなかったが自分でもそれを望んでいる部分も生じ始めていたのだった。それ故、いじることももてあそぶこともしないこの家のぬしに、ほんの少しだが物足りなさも感じていたりもしたのだった。

その所為で、彼女は自分の敏感な部分を自ら弄んで刺激を得る習慣がついてしまった。それ自体はここに来る前からあったものだったが、更にへきとして定着してしまったのである。

もっとも、彼女はそれを恥ずかしいことだとも悪いことだとも思ってはいなかった。そう感じるような感性が育っていなかったからであった。

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