12 / 111
出会い
しおりを挟む
藍繪汐治の下での生活は、山下沙奈にとっては意外と快適なものであったのかもしれない。あくまで、『彼女にとっては』だが。彼女のそれまでの境遇が過酷極まりないものだったから、それに比べればというだけである。
藍繪汐治に弄ばれつつも、彼女はそれを心地好いと感じていた。この状態が彼女にとっては一番安定していた。網螺春喜に比べても扱いは丁寧だし、食事も与えられ風呂にも入れてもらえた。
彼女は、風呂が好きだった。放っておけば何時間でも風呂に入っていた。風呂で藍繪汐治に弄ばれる時には特に心地良さそうにうっとりとした表情も見せた。もしかすると彼女は、彼女なりの幸せを感じていたのかもしれない。
だがそれは、結局は基準がおかしいからだというのも紛れもない事実だろう。そしてやはり、いつまでも続くようなことではなかった。
藍繪汐治の家に戻って四年が経過し、彼女は十二歳になっていた。しかも、成長そのものはまだ遅れていたがそれでも確実に変化は起こっていた。胸が僅かに膨らみ始め、脇の下や股間に明らかに単なる産毛ではない発毛が見られ始めたのである。するとその頃から急激に藍繪汐治が彼女を弄ぶ回数が減っていった。弄ぶにしても、殆ど体をいじることはなく、局部におざなりに触れて濡れ始めたと思えばペニスを挿入し、単純な注挿を繰り返しさっさと果てて彼女を放り出すという感じになっていた。
彼女の肉体の変化が、藍繪汐治の彼女への執着を奪い去っていったのだ。この男が求めているのは、胸の膨らみも毛もない無垢(こいつ基準で)な少女だったが故に。その為、第二次性徴期が始まってしまった彼女に対する興味が一気に失われてしまったのだった。
しかも、『学校に通ってないらしい子供がいる』という近所の人間の通報によって彼女を学校に通わせていないことが発覚。児童相談所などが訪ねてくるようになり、
「知らない。知り合いの家に預けてる」
とその度に誤魔化していたのも抗しきれなくなってきたと判断した彼は、彼女を本当に知り合いに預けてしまったのだった。
それは、藍繪汐治の同級生だった。元より社会生活においてもまっとうな人間関係など作れなかった彼の数少ない、辛うじて友人と言えるかも知れない人間だった。
その人物の名は、神河内良久。
そんな彼も、陰鬱な目で相手を射るように見る、一見しただけでもおよそまっとうな人間ではないと分かる人物だった。
そしてこれが、新進気鋭の人形作家、神玖羅こと神河内良久と、後に彼の妻となる山下沙奈の運命的な出会いなのであった。
藍繪汐治に弄ばれつつも、彼女はそれを心地好いと感じていた。この状態が彼女にとっては一番安定していた。網螺春喜に比べても扱いは丁寧だし、食事も与えられ風呂にも入れてもらえた。
彼女は、風呂が好きだった。放っておけば何時間でも風呂に入っていた。風呂で藍繪汐治に弄ばれる時には特に心地良さそうにうっとりとした表情も見せた。もしかすると彼女は、彼女なりの幸せを感じていたのかもしれない。
だがそれは、結局は基準がおかしいからだというのも紛れもない事実だろう。そしてやはり、いつまでも続くようなことではなかった。
藍繪汐治の家に戻って四年が経過し、彼女は十二歳になっていた。しかも、成長そのものはまだ遅れていたがそれでも確実に変化は起こっていた。胸が僅かに膨らみ始め、脇の下や股間に明らかに単なる産毛ではない発毛が見られ始めたのである。するとその頃から急激に藍繪汐治が彼女を弄ぶ回数が減っていった。弄ぶにしても、殆ど体をいじることはなく、局部におざなりに触れて濡れ始めたと思えばペニスを挿入し、単純な注挿を繰り返しさっさと果てて彼女を放り出すという感じになっていた。
彼女の肉体の変化が、藍繪汐治の彼女への執着を奪い去っていったのだ。この男が求めているのは、胸の膨らみも毛もない無垢(こいつ基準で)な少女だったが故に。その為、第二次性徴期が始まってしまった彼女に対する興味が一気に失われてしまったのだった。
しかも、『学校に通ってないらしい子供がいる』という近所の人間の通報によって彼女を学校に通わせていないことが発覚。児童相談所などが訪ねてくるようになり、
「知らない。知り合いの家に預けてる」
とその度に誤魔化していたのも抗しきれなくなってきたと判断した彼は、彼女を本当に知り合いに預けてしまったのだった。
それは、藍繪汐治の同級生だった。元より社会生活においてもまっとうな人間関係など作れなかった彼の数少ない、辛うじて友人と言えるかも知れない人間だった。
その人物の名は、神河内良久。
そんな彼も、陰鬱な目で相手を射るように見る、一見しただけでもおよそまっとうな人間ではないと分かる人物だった。
そしてこれが、新進気鋭の人形作家、神玖羅こと神河内良久と、後に彼の妻となる山下沙奈の運命的な出会いなのであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
「俺は小説家になる」と申しております
春秋花壇
現代文学
俺は小説家になる
語彙を増やす
体は食べた・飲んだもので作られる。
心は聞いた言葉・読んだ言葉で作られる。
未来は話した言葉・書いた言葉で作られる。
三題噺を毎日投稿 3rd Season
霜月かつろう
現代文学
練習用。頭の体操。
大体毎日公開!頑張ります。
深くを気にしてはいけません。感じてください。
3つお題をもらってその場の勢いで書いてます。三題噺ってやつです。三年目は一年目のお題を流用します。成長具合が見て取れたらうれしいです。誤字脱字は見逃してください。見直しもせずに勢いで書いてますので
日課になればいいと思いつつやってます。
ジャンルはお題によってさまざま。
全部一話完結のつもりで書いていますが、過去のお題とか話がちょいとかかわっていたりします。
嘆きのピアニスト
凪司工房
現代文学
嘆きのピアニスト――そう呼ばれる天才ピアニスト香美村孝幸のマネージャーをしている島崎彩は、ある人物を探すように命じられた。認知症を患う高齢者が入所する施設で再会した男を、彼は「先生」と呼んだ。
これは天才を育てた男への復讐劇なのか? それとも。彼のピアノの旋律は何を物語るのだろうか。
ねくろすおーにら-死者の夢-
神光寺かをり
現代文学
ヒュプノス《眠り》とタナトス《死》は双子の兄弟。
そしてオネイロス《夢》はその弟。
眠りの中で見る夢のその隣には死が身構えている。
その夢は、幻想《パンタソス》か、それとも空想《モルペウス》であろうか。
いや、それはまごう事なき恐怖《ポベートール》――。
ここにあげる短文はすべて「いつか見た夢物語」です。
実在する人物場所組織などとは一切関係ありません。
今宵も良い夢を見られますように……。
異世界転生カンパニー
チベ アキラ
ファンタジー
-あなたの最適な転生ライフ、保証します
死後、それまで生きていた世界とは異なる世界へと魂を移し、再び芽吹かせる。それが異世界転生。
人には誰しも向き不向きがある。好き嫌い、得手不得手、言い様は違えどつまりは十人十色がこの世の理であり、人によって理想は異なる。
数ある異世界の中から最も快適で満足できる転生先をご案内すること。
それこそが、我ら転生カンパニーの志し。
毎度異なる視点から描く連続短編型異世界転生ストーリー。
「人生の主役は、死んだ後でも貴方です。」
日常のひとコマ
繰奈 -Crina-
現代文学
楽しかったり、嬉しかったり、哀しかったり、憤ったり。
何気ない日常の中にも心が揺れる瞬間があります。
いつもと同じ繰り返しの中にも、その時々の感情があります。
そういったひとコマを切り取ったお話たち。
いろいろな人のいろいろな時間を少しずつ。
電車で隣り合って座った人を思い浮かべたり、横断歩道ですれ違った人を想像したり、自分と照らし合わせて共感したり、大切な人の想いを汲みとったり。
読んだ時間も、あなたの日常のひとコマ。
あなたの気分に合うお話が見つかりますように。
福の神の末裔の波乱爆笑の人生
ハリマオ65
現代文学
主人公の幸手福三は、1990年8月29日生まれ、乙女座、計算が速く、記憶力に優れ「些細なことでも覚えていてくれる」、いつも優しい言葉使いで、女性に可愛がられるタイプ。嘘が苦手で、すぐに相手の気持ちになる優しい男、適度な距離感を持ち決して干渉しない。責任感が強い「仕事を任せても信頼できる」「謙虚で控えめ」約束はしっかり守ってくれる。福三の、波瀾万丈を御覧下さい。
なお、この作品はNoveldaysに重複投稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる