オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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無念

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ジャックの指示を無視して勝手についてきたと言っても、覚悟はしていたと言っても、自身の群れの子供が死ぬのを見るのは、ジャックにとってこの上なく無念なことだった。

しかし、だからこそその死を無駄にするわけにはいかない。ジョーカーとクイーンの子供の方はまだ危なげなかったので任せるとして、彼は指揮官機らしきロボットを倒すことに改めて専念する。

が、その時、

「インッ!!」

奇妙な<鳴き声>がジャックの耳に届いた。意識を逸らすと間違いなくロボットにヤられるので意識は向けなかったものの、視界の端に捉えられたのは例の、

<白い六本の脚を持った大きな虫>

だった。

『なんであいつがここに!?』

的な思考を頭によぎらせつつ、やはり構ってはいられない。いないが、あの「パンパン!」という音がすると、仲間達が次々と倒れていく。それは、先ほどまでの、

<痛いが我慢できないほどのものじゃないそれ>

ではなかった。倒れた仲間はそのまま起き上がることができなかったのだ。起き上がろうとした者も、やはり起き上がることができずに倒れ、動かなくなっていく。

『なんだ!? 何が起こってる!?』

ジャックは困惑した。<白い六本の脚を持った大きな虫>が前脚(手)に持っているものは、ロボットらが持っているものと違っていた。ジャックらには理解できないが、<白い六本の脚を持った大きな虫>が手にしているもの(自動小銃)には、実弾が装填されていたのである。

それと言うのも、ロボットらの役目はあくまでレオンを外敵から守り、外敵を追い払うためのものでしかなかった。レオンに万が一でも命中しても治療するだけの余裕を持たせるためというのもありつつ、本質的には外敵を追い払えればそれでよく、殺すことは前提にしていなかったのだ。今のこ時点でさえ、ジャック達が逃げ去ってくれるなら殺すつもりもなかったということである。ゆえに<手加減>しているし、だからこそジャック達はここまで持ち堪えられたというのもあった。

本気で殺すつもりなら、最初の数分でケリがついていただろう。

『ジャック達の全滅』という形で……

ロボットは自らの身を守る必要がなかったから、それができた。しかし、<白い六本の脚を持った大きな虫>はそうじゃなかった。巨大な虫のような体を持っていつつもそれは<虫>などではない。

<昆虫を思わせる生き物の頭部が人間そっくりの形をしている存在>

だった。黒く見える部分は<防弾・防刃機能を持つ戦闘服>であり、明らかに軍用の装備だった。

つまり、

<人間としてはあまりにも異形ではあるものの、間違いなく人間としての意識と知能を持っている者>

なのだ。

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