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どうして俺はこう……!!

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だが、数の上では圧倒的に優位のはずにも拘わらず、ロボットもレオンも倒せない。ロボットはともかくとしても明らかに幼体こどもと思しきレオンすら倒せないのだ。

しかし、ジャック達ももう後には引けなかった。ここで諦めればどのみち早晩飢えてしまう。けれどここの縄張りを奪えば獲物が確保できるしそれを奪いに来ようとする者らを撃退すれば済むようになるのだ。幼体こども達を安心して育てていけるようにするためにも、ここは下がれない。

ゆえにジャックは<指揮官機らしきロボット>に挑む。自分がこいつを抑えておけば仲間達がその間に何とかしてくれるはずだと信じ。

実際、ジャックが指揮しなくても仲間達の連携は見事だった。互いに補い合い、倒れた仲間がレオンに襲われそうになっても援護して見せる。普通のレオンの群れであればとうの昔に圧倒してるはずだった。

普通のレオンの群れであれば……

それでもジャックは諦めない。指揮官機らしきロボットが繰り出すナイフを躱しつつその足に食らい付いてみせた。が、

『硬い……っ!?』

猪竜シシの頸椎さえ噛み砕くジャックの顎に備えられた牙がまったく通らない。仕方なく振り回す方向に切り替えるが、わずかに揺らいだものの持ち上げることもできない。

それどころか逆にこの隙を突かれてナイフが振り下ろされる。が、そこに仲間が割って入り、血飛沫を上げて倒れるのと入れ替わるようにしてジャックは間合いを取った。

『クソッ!!』

自分を庇おうとして仲間が命を落としたことにジャックが憤る。その仲間も、最初からジャックについてきてくれた者だった。

『どうして俺はこう……!!』

仲間を犠牲にしてしまう自身の不甲斐なさに腹が立つ。しかしだからこそ<こいつ>を何とかしなくてはいけない。

仲間に斬りかかるロボットの腕に頭突きをお見舞いしてナイフの軌道を逸らさせて、今度はその腕に食らい付く。しかしこちらも硬い。牙がまったく食い込んでいかない。さらにそこに、

「っ!?」

大きな衝撃。ロボットの蹴りがジャックの腹を捉えたのだ。瞬間、まるで自動車にでも撥ねられたかのようにジャックの体が吹っ飛び、地面を転がる。転がりつつ体勢を整えてすぐさま立ち上がったが、ジャックの目の前でさらに仲間が斬り殺された。

「グルウッッ!!」

呻き声を上げつつもジャックは視線を移して他の仲間達を見る。しかし今のところ、命を落としたのはこのロボットを相手にした者だけのようだ。他のロボットはゴムスタン弾を装填した自動小銃しか持っておらず、十分な殺傷力を持たないからであった。

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