オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
77 / 95

<虫>のようにも

しおりを挟む
それは、岩のような何かの陰を寝床にしているようだった。

オオカミ竜オオカミとしては大柄なジャックよりも明らかにはるかに大きい。黒っぽい体から白い足が六本生えていて、<虫>のようにも見えた。しかし虫はもっと小さい。あんなに大きな虫など見たこともなかった。

土いじりをしている<異様な生き物>にも似ているようにも見えつつ、しかし間違いなく別の生き物だというのも分かる。

『あれは良くないものだ……』

ジャックの本能がそう警告を発してもくる。だからそれ以上は近付かなかった。

近付くことなく、その周囲にいた獲物を狩ることにする。

幸い、<大きな虫のような生き物>も、ジャック達が獲物としているインパラ竜インパラガゼル竜ガゼルらを襲っている様子はない。だから同じ獲物を奪い合う相手ではないことは察せられた。

しかしその代わりに、他にも獲物を狙うオオカミ竜オオカミの群れがいた。

ただ、その群れは、こちらに気付いても露骨に威嚇しては来なかった。だからこの辺りを縄張りにしている群れではないと分かる。向こうもジャック達と同じく勝手に入り込んでいる群れなのだろう。

とは言え、同じ獲物を奪い合うとなれば、衝突は避けられない。

何度か小競り合いのようにぶつかり合うが、向こうもさすがにここまで生き延びてきた群れということか、不利と悟ると撤退してみせた。どうやら知能も高いようだ。

そういう諸々もありつつ、ジャックは仲間を連れて<斥候>を繰り返した。それにより、いろいろ分かってくる。

あの<大きな虫のような生き物>の向こうには少なからず獲物がいること。だがそこは、何度か衝突したことのある、ぱっと見は強そうに見えないクセに隠れるのが上手くて油断ならない獣の縄張りらしいということ。そしてその獣は小さな山のようなものの陰を寝床にしているらしいということ。さらにその山の反対側は、姿は同じだがどうやら別の群れと思われるのが寝床にしているらしいということが分かってきた。しかも山の反対側にいる群れは数が少なく、明らかに弱そうだ。だから、

『狙うとしたらあちらか……』

ジャックはそう思う。同じオオカミ竜オオカミの縄張りであれば無理に奪うのも気が引けるものの、そうじゃないのならいっそ縄張りを奪った方がいいとジャックにも思えた。けれど、そちらにはまた、<土をいじる異様な生き物>によく似たのが何匹もいた。さらにその中の一匹は特に体が大きく太く、他のと違って強そうにも見えた。だから迂闊には狙えない。

あと、この辺りに来てからおかしな<鳥>が空を飛んでいるのが、少し気になった。「ブーン」と音をさせつつ空に浮かんだままになっているのだ。普通の鳥では明らかになかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鎌倉最後の日

もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...