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数多くの悲劇が

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このように触れた事例以外にも、数多くの悲劇があった。それほど、インパラ竜インパラとその近似種らの存在は、この草原の生態系には欠かせない存在だったのである。これが失われてしまうと、根本的に成立しなくなる程度には。

それでも、生きている限りは諦めることはない。ラーテル竜ラーテルに襲われた群れも、自ら幼体こどもらを食らっていった群れも、生き延びることを決して諦めてはいなかったのだ。



そして翌日の朝。丸一日以上体を休めたことでようやく回復したジャックは体を起こし、再び<安息の地>を目指して群れを率いた。ジャックが休んだことで仲間達も体を休めることはできた。しかし、レオンとテチチ竜テチチだけでは全員が十分に腹を満たすことはできなかった。

『……』

どこを目指せばいいのかも分からないままに草原をただただ歩く。インパラ竜インパラとその近似種がいなくなったことで草は豊かに生えていたが、それを食む草食獣の姿はほとんどない。ジャックも草を試しに食べてみたが、とても食えたものではなかった。<食い物>という印象がない。やはり、真っ赤な血が噴き出す肉がいい。この際、臭いが強くなったものでも構わない。とにかくこの飢えを癒してさえくれれば贅沢は言わない。

しかもまた。テチチ竜テチチが現れる。

本当にもういい加減にしてほしい。とにかく鬱陶しいクセにロクに腹も膨れないこいつらは本当に何なんだ?

さすがのジャックも苛立ち、その苛立ちを叩き付けるかのようにして猛然と蹴散らす。

しかしジョーカーとクイーンの子供達は、嬉々としてテチチ竜テチチに襲い掛かった。彼らにとっては絶好の獲物だったのだろう。もう少し大きくなってくれれば彼らに任せてしまってもいいかもしれないとさえ思う。

そうして再び多少の餌を得る。

大活躍だったジョーカーとクイーンの子供達には優先的に食べてもらうが、他の幼体こども達にも分け与えるが、成体おとな達の腹はこれでは満たせない。

ここまで来ると、いよいよジャックの群れでも鬱憤が溜まってくる。仲間達の多くが苛々しているのが分かる。

今まではジャックの求心力でなんとか統率も取れてきたものの、本当に危うくなってきたかもしれない。

仲間のうちの数頭の、幼体こども達を見る目が明らかに異様になってきている。

『これはよくない……』

ジャックもそう思うものの、だからといってどうすればいいのか……



そして次の日の夜。遂に<事件>は起こった。

「ピキッ!!」

幼体こどもの悲鳴を耳にして、ジャックは飛び起きる。だが彼が見たのは、月明りの下で幼体こどもの体をガシガシと噛み砕いている仲間の姿であった。

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