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状況は好転していなかった
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こうして猪竜を食らい何とか命を繋いだジャック達だが、状況は好転していなかった。
いや、むしろここからが本番だと言った方がいいだろう。
相変わらずインパラ竜もガゼル竜もいない。土竜も、すでに他の獣に狩り尽くされたのか明らかに捕れなくなってきた。それは、猪竜も同じなのかもしれない。
幼体らは虫を食べて何とか飢えをしのぐ。しかし、明らかに見た目にも痩せ細ってきていた。
すると、ジャック達の前に、オオカミ竜の幼体の群れが……
いや、違う。一見するとオオカミ竜の幼体に似ているようにも思えるが、明らかに別の種だった。
テチチ竜と呼ばれる、オオカミ竜とも同系統の獣だった。オオカミ竜かその近似種のネオテニー(幼形成熟)が互いに交配し形質を固定化させた種とも推測されているが、その辺りはまだはっきりしていない。
また、テチチ竜は、その小さな体に反してイタチ竜と変わらないくらいに凶暴な獣であり、しかも数十匹が群れを成すため、非常に危険な存在でもあった。生息している地域がそれほど広くなかったことでジャックも始めて見る獣だが、危険な相手であることはすぐに察する。
幼体達は下がらせ、ジャックは、
「ガアアアアーッッ!!」
口を目いっぱい開けて全力で威嚇した。その迫力に一瞬、ビクッと下がったものの、逃げ去ってしまったりはしなかった。
『これはよくない奴らだ……』
ジャックはそう判断し、単身、突撃する。するとテチチ竜の方も、怯むどころか突撃してた。だからジャックは、最初から様子見などせず、全力で攻撃した。幼体に見えても幼体じゃないことが分かったからだ。
明らかに数に物を言わせて手数で圧してくる相手だと察し、体を回転させ、尻尾で薙ぎ払った。
「ピギッ!!」
「ギッ!!」
数匹がそれに巻き込まれたものの、しっかりと躱した者も多かった。しかしジャックはそれに構うことなく、両手を使って鷲掴みにし、躊躇なく握り潰した。躊躇っては間違いなくこちらがやられる。実際、すぐさまジャックの足と言わず尻尾と言わず食らい付いてくる。
一つ一つの攻撃は知れていても、それが蓄積すると大きなダメージになるであろうことは明白だ。するとジャックの頭に、ジョーカーとの戦いの時の記憶がよみがえってきた。あれも、一つ一つの攻撃は致命的ではなかったものの、それに怯めば間違いなくこちらがやられるそれだった。今回のも同じだ。慌てず、怯むことなく、
『それがどうした!!』
という態度で挑まなければいけないと察したのだった。
いや、むしろここからが本番だと言った方がいいだろう。
相変わらずインパラ竜もガゼル竜もいない。土竜も、すでに他の獣に狩り尽くされたのか明らかに捕れなくなってきた。それは、猪竜も同じなのかもしれない。
幼体らは虫を食べて何とか飢えをしのぐ。しかし、明らかに見た目にも痩せ細ってきていた。
すると、ジャック達の前に、オオカミ竜の幼体の群れが……
いや、違う。一見するとオオカミ竜の幼体に似ているようにも思えるが、明らかに別の種だった。
テチチ竜と呼ばれる、オオカミ竜とも同系統の獣だった。オオカミ竜かその近似種のネオテニー(幼形成熟)が互いに交配し形質を固定化させた種とも推測されているが、その辺りはまだはっきりしていない。
また、テチチ竜は、その小さな体に反してイタチ竜と変わらないくらいに凶暴な獣であり、しかも数十匹が群れを成すため、非常に危険な存在でもあった。生息している地域がそれほど広くなかったことでジャックも始めて見る獣だが、危険な相手であることはすぐに察する。
幼体達は下がらせ、ジャックは、
「ガアアアアーッッ!!」
口を目いっぱい開けて全力で威嚇した。その迫力に一瞬、ビクッと下がったものの、逃げ去ってしまったりはしなかった。
『これはよくない奴らだ……』
ジャックはそう判断し、単身、突撃する。するとテチチ竜の方も、怯むどころか突撃してた。だからジャックは、最初から様子見などせず、全力で攻撃した。幼体に見えても幼体じゃないことが分かったからだ。
明らかに数に物を言わせて手数で圧してくる相手だと察し、体を回転させ、尻尾で薙ぎ払った。
「ピギッ!!」
「ギッ!!」
数匹がそれに巻き込まれたものの、しっかりと躱した者も多かった。しかしジャックはそれに構うことなく、両手を使って鷲掴みにし、躊躇なく握り潰した。躊躇っては間違いなくこちらがやられる。実際、すぐさまジャックの足と言わず尻尾と言わず食らい付いてくる。
一つ一つの攻撃は知れていても、それが蓄積すると大きなダメージになるであろうことは明白だ。するとジャックの頭に、ジョーカーとの戦いの時の記憶がよみがえってきた。あれも、一つ一つの攻撃は致命的ではなかったものの、それに怯めば間違いなくこちらがやられるそれだった。今回のも同じだ。慌てず、怯むことなく、
『それがどうした!!』
という態度で挑まなければいけないと察したのだった。
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