オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

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命を繋いで

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その日、ジャック達はようやくインパラ竜インパラを一頭、見付けることができた。その一頭も、明らかに弱っていて、少し逃げたら勝手に倒れ、動けなくなっていた。

だから容易く仕留められたが、弱っている上に痩せ細っていて、とても群れ全体の腹を満たすことができるようなそれではなかった。

こうして二ヶ月が経ち、ジャック達は、猪竜シシでもなんでも見掛ければ襲うようになっていた。何しろここまでに成体おとな四頭、幼体こども五頭が命を落としていたのだ。

獲物の奪い合いによる他のオオカミ竜オオカミの群れとの衝突及び飢えのために。無論、そうやって命を落とした仲間も食い、命を繋いできた。

けれど、飢えて体力が落ちたジャック達には猪竜シシは手強かった。しかも猪竜シシは雑食性であり、インパラ竜インパラガゼル竜ガゼルがいなくなったことで草は豊富に食べられたのだが、オオカミ竜オオカミが襲い掛かってきたとなれば逆に食ってやろうと大変に気分が昂ったようだ。

「ブオガアッッ!!」

草ばかりとは言え十分に食っていた猪竜シシは気性も激しく、猛然と突進してくる。その正面にはジャックが控えていた。けれどジャックはただ茫然と立ち尽くしているだけだ。

が、その時、猪竜シシの足元がごそりと崩れ落ち、足を取られて地面にしこたま下顎をぶつけた上にそのまま反り返った形で前に転がった。土竜モグラの巣穴だった。それがいくつも重なっていたところを思い切り踏みつけたことで潰れたのだ。ジャック自身も幼体こどもの頃に土竜モグラを捕らえようとして巣穴を崩してしまったことがあったので、それを利用したのである。

もちろん、猪竜シシ土竜モグラは捕らえて食べることがあったものの、ジャックがあまりに棒立ちで隙だらけだったことでそちらに意識を向けすぎてしまったのだろう。

自分の全体重が乗った状態で下顎を地面に激しくぶつけたことで、猪竜シシは混乱したようだった。そこにジャックと仲間達が一斉に襲い掛かる、しかし猪竜シシもただではやられない。

混乱したままでも激しく足を蹴り出し、運悪くそれがジャックの仲間の頭を捉えて、しかも絶妙な角度で入ったことで、脳挫傷を起こしたようだった。

そうして仲間一頭を失いつつも、ジャック達は体重百キロを超える猪竜シシを仕留めることに成功した。これで何とか食つなぐことができる。

猪竜シシは仲間達に譲り、ジャックは猪竜シシの執念の一撃を食らって死んだ仲間の亡骸を食べる。その命も自らに取り込もうとでもするかのように。

すると、<ジョーカーの兄>もジャックのところにやってきた。そして一緒に仲間の亡骸を食べたのだった。

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