オオカミ竜・ジャック　～心優しき猛獣の生き様～

京衛武百十

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得も言われぬ胸騒ぎを

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こうして腹いっぱい餌を貪ることができたジャック達だったが、次の日も、そのまた次の日もインパラ竜インパラやガゼル竜ガゼルの死骸を見付け、苦も無く餌にありつけた。

しかし、

『やっぱり、なにかおかしい……！』

ジャックは得も言われぬ胸騒ぎを覚えた。正直、ジョーカーやクイーンと対峙した時以上の不快さだった。

もしこの時、彼に＜知識＞があればどうしただろう？　それが大変な疫病の始まりであることを知り、早々に対処していれば、その後の結末を回避できていたのだろうか……？

けれど残念ながら彼にはそれを理解できるだけの知識がなく、胸騒ぎを覚えつつも具体的な対処はできずにいた。

ただ、この異様な状況に対してはやはり嫌悪感を覚え、彼は仲間を連れて移動を始めた。以前のままの光景が広がる場所を目指して。インパラ竜インパラやガゼル竜ガゼルの群れが普通に草を食んでいる光景を求めて。

「……？」

仲間達にはジャックの意図が分からなかったが、彼を信じ、ついて行くことにする。どうせ行く先々で餌はいくらでも手に入った。他のオオカミ竜オオカミの群れに遭遇しそうになれば身を隠してやり過ごし、または大きく迂回し、なるべく衝突は避けることを心掛ける。

だが、不幸にも衝突してしまった時には、ジャックは仲間を守るために容赦なくボスと戦い、打ちのめしてさらに進んだ。その際、新しく仲間を迎え入れることはしなかった。とにかくその場を早々に移動する。

けれど、決まった寝床を持たぬ流浪の旅は、子供達には過酷だったのだろう。一頭、また一頭と命を落としていく。朝、冷たくなって起きてこなかったのだ。その亡骸を食べ、己に取り込み、インパラ竜インパラやガゼル竜ガゼルの死体については仲間達に優先的に食べさせた。

しかし、そうしてインパラ竜インパラやガゼル竜ガゼルの死体にありつけたのは、最初の十日間ほどだけだった。それを過ぎると、すでに他の獣に食われて骨だけになったものばかりとなった。

『これはよくない……よくないことが起こってる……』

ジャックはよりそう感じた。それは仲間達も同じで、明らかに不安を覚え落ち着きがなくなっていた。仲間同士の諍いが増え、喧嘩が頻発する。幼体こども達の間でもそれは同じだった。特にジョーカーとクイーンの子は苛立ち、他の幼体こども達に襲い掛かるようになった。

けれど、他の幼体こども達は連携してそれを迎え撃ち、一頭がそれで死んだ。やはりジョーカーとクイーンの子だった。

それでも、幼体こども達は土竜モグラや昆虫を狩ることで餌を得られた。成体おとな達も土竜モグラを狩るものの、それでは全く足りなかったのだった。

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