オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
39 / 95

群れ

しおりを挟む
そうして力をつけていったジョーカーの前に、ある日、一頭の雄のオオカミ竜オオカミが現れた。群れから巣立った若い雄だった。

「ガアアッ!!」

「グアアッ!!」

本能がそうさせるのか、ジョーカーが口を大きく開けて威嚇すると、相手も口を大きく開けて競った。

すると、体格そのものは必ずしも圧倒しているわけでもないのに、ジョーカーの口の方が大きく開き、相手は怯んで引き下がった。どうやら<タガ>が外れていることで、本来なら無意識のうちに加減してしまうのが、ジョーカーはその加減がおかしくなっているようだ。顎が外れても強引に元に戻してしまうらしい。

これにより、仲間が一頭できた。すると立て続けに同じような雄と出会い、それらも仲間にしていった。中にはジョーカーよりも大きく口が開く者もいたが、それについてはジョーカーが怯まなかったことで引っ込みがつかなくなった相手が攻撃してきたのを力尽くで退けて、自分に下った者は仲間にしたものの、そうじゃない者が逃げなかった時にはそれこそ容赦なく殺した。

そんな風にして、ジョーカーは自身の群れを作っていった。

とは言え、この方法では雌が仲間に加わらない。雌がそういう形で巣立つことは滅多にないからだ。しかし『滅多にはない』ものの、『絶対にない』というわけでもない。

と、まるでジョーカーに引き寄せられるようにしてその<滅多にない事例>が訪れた。

若い雌が一頭でうろついていたのだ。その雌の名を仮に<クイーン>としよう。クイーンは、生まれつき頭のネジがいくつも外れているかのように凶暴な個体だった。後から孵ったにも関わらず先に孵った兄姉らにまで襲い掛かり、噛み殺してしまったりした。

もちろん反撃され、体の小さな彼女は集団で痛めつけられたが、そんなことでは懲りなかった。その後も何かある度に自分の仲間にさえ牙を剥いてはリンチを受けるという日々が続いた。

そして体が大きくなり強くなるほどにもう群れでは対処できないということで、ボスに追い出されたのである。彼女はボスの娘だったのでそこまでボスも我慢したものの、さすがに限界だったようだ。

これによりクイーンが加わり、すぐさまジョーカーはクイーンとの間に子を設けた。こうなると、他の雄達もジョーカーの娘と番うことができる可能性が出てきたことで、群れとしても成立し始めたのである。

そう、ジョーカーをボスとする新しい群れが誕生したのだ。しかし、この時点ではジョーカー達は、彼の母親らが属している群れの縄張り内に勝手に居ついているだけの存在であった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鎌倉最後の日

もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

銀河戦国記ノヴァルナ 第2章:運命の星、掴む者

潮崎 晶
SF
ヤヴァルト銀河皇国オ・ワーリ宙域星大名、ナグヤ=ウォーダ家の当主となったノヴァルナ・ダン=ウォーダは、争い続けるウォーダ家の内情に終止符を打つべく宙域統一を目指す。そしてその先に待つものは―――戦国スペースオペラ『銀河戦国記ノヴァルナシリーズ』第2章です。

処理中です...