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策略
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尻尾の傷はその後もしばらく痛んだが、それがうずくたびに、ジョーカーは、仄暗い衝動を湧き上がらせていた。あのオオカミ竜をいつか食い殺してやるというそれだった。
とは言え、今の体格差ではどう頑張っても勝てる相手ではない。だから今はとにかく体を大きくしなければならなかった。
するとジョーカーは、土竜だけでは物足りなくなってきて、今度はインパラ竜を狙うようになった。
もっとも、さすがに成体のインパラ竜が相手だと分が悪い。インパラ竜の後脚の蹴りは、オオカミ竜の成体でも当たり所が悪ければ死ぬことだった有り得るほどのものだ。捕食者から逃れるために獲得した脚力ゆえに。
となれば、まだ成体とは言えないジョーカーではそれこそひとたまりもないだろう。
だから狙うは、幼体のインパラ竜だ。
ただし、インパラ竜も幼体を守るために周囲を成体で取り囲むため、むしろハードルは高い。しかし、チャンスはある。
それは、天敵に驚いて逃げる時だ。そういう時にはだいたい、陣形が崩れるし、加えて、ついていけない幼体が出ることもある。問題はそんな風に都合よく他の捕食者が現れるかどうかということだが、ジョーカーはそこで一計を案じた。
土竜を狩りつつ、同時に別のものを探す。そうして何度目かの土竜の巣穴に近付いた時、ジョーカーはその巣穴に前足を突っ込んで、中にいたものを引きずり出した。
「ビイッ!! ビイイッッ!!」
イタチ竜だった。土竜の穴に潜り込んで土竜を捕らえたイタチ竜をさらにジョーカーが捕らえたのだ。
下手をすると自分も怪我をする危険な行いだったが。イタチ竜が噛み付いてくる前に両前脚で首と腹を捉え、身動きできなくする。
何度かイタチ竜の姿を見ていて、動きの封じ方を察したのだ。
だが、食うのではない。イタチ竜を食ってもよかったのだが、もっと試したいことがあった。
そうしてイタチ竜を捕まえたままでそろりそろりとインパラ竜の群れに近付き、そして見張り役のインパラ竜目掛けてイタチ竜を投げつけたのである。
イタチ竜は、さすがにインパラ竜までは積極的に襲わないものの、不意に遭遇すると足などに噛み付いて大変な怪我を負わせることもあり、警戒するべき獣の一つだったのだ。
そのイタチ竜が突然飛び付いてきたことにより、
「ケーッッ!!」
仲間に危険を知らせる声を上げつつ、逃げ出した。それに倣って群れも全力で逃げ出す。すると、生まれたばかりでまだ上手く走れないインパラ竜の子がいて、取り残されてしまった。
なんという行幸。そして、インパラ竜の子にとっては何という不運。
生まれてまだ一日と経っていなかったその子は、ジョーカーにとってはまたとない獲物となったのだった。
とは言え、今の体格差ではどう頑張っても勝てる相手ではない。だから今はとにかく体を大きくしなければならなかった。
するとジョーカーは、土竜だけでは物足りなくなってきて、今度はインパラ竜を狙うようになった。
もっとも、さすがに成体のインパラ竜が相手だと分が悪い。インパラ竜の後脚の蹴りは、オオカミ竜の成体でも当たり所が悪ければ死ぬことだった有り得るほどのものだ。捕食者から逃れるために獲得した脚力ゆえに。
となれば、まだ成体とは言えないジョーカーではそれこそひとたまりもないだろう。
だから狙うは、幼体のインパラ竜だ。
ただし、インパラ竜も幼体を守るために周囲を成体で取り囲むため、むしろハードルは高い。しかし、チャンスはある。
それは、天敵に驚いて逃げる時だ。そういう時にはだいたい、陣形が崩れるし、加えて、ついていけない幼体が出ることもある。問題はそんな風に都合よく他の捕食者が現れるかどうかということだが、ジョーカーはそこで一計を案じた。
土竜を狩りつつ、同時に別のものを探す。そうして何度目かの土竜の巣穴に近付いた時、ジョーカーはその巣穴に前足を突っ込んで、中にいたものを引きずり出した。
「ビイッ!! ビイイッッ!!」
イタチ竜だった。土竜の穴に潜り込んで土竜を捕らえたイタチ竜をさらにジョーカーが捕らえたのだ。
下手をすると自分も怪我をする危険な行いだったが。イタチ竜が噛み付いてくる前に両前脚で首と腹を捉え、身動きできなくする。
何度かイタチ竜の姿を見ていて、動きの封じ方を察したのだ。
だが、食うのではない。イタチ竜を食ってもよかったのだが、もっと試したいことがあった。
そうしてイタチ竜を捕まえたままでそろりそろりとインパラ竜の群れに近付き、そして見張り役のインパラ竜目掛けてイタチ竜を投げつけたのである。
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