22 / 95
根無し草としての暮らしを続けるわけには
しおりを挟む
こうして、群れのボスだけでなく<父親>にもなったジャックは、一層、ボスとして頑張らなければと考えるようになった。同時に、毎日のように寝床を変える生活が生まれたばかりの幼体達に負担にならないようにと考え、遂に、キングに勝負を挑み、縄張りを奪う決断をした。これ自体は、遅かれ早かれしなければならないことである。いつまでも縄張りを持たない根無し草としての暮らしを続けるわけにはいかないのだ。
ましてや、<自分の子>が生まれてしまっては。
そしてジャックは仲間を連れて、キングに勝負を挑むために、群れを探した。
が……
「……?」
キングの群れから逃げ回っていた時には何度かヒヤリとすることもあったというのに、いざこちらから探そうとすると、不思議と見付からない。以前の寝床はさすがにもぬけの殻で、覚悟を決めてきたというのに拍子抜けだった。
そうして、寝床になりそうな場所で思い当たるところを探してみたもののすべて空振り。
「ウウウ……」
これにはジャックも途方に暮れてしまった。しかし、
『だったらもう寝床を決めて、キングの方から現れるのを待とう』
彼はそう考えた。
これによって、ジャックの群れは、仮初とはいえ当面の間は定住できる寝床を得た。ここまでに何頭かの幼体はやはり命を落としたが、それは本来そういうものなので、あまり気に病んでも仕方ないだろう。
仲間達もようやく腰を落ち着けることができてホッとしたようだ。
そして今年生まれた幼体達は、じゃれ合い、愛らしい姿を見せてくれている。
『よかった……』
そうは思うものの、かと言って本当にここを<安住の地>とできるかどうかは、まだ分からない。いつ、キング達と鉢合わせるか、それは何とも言えないのだ。
さりとて、自分達も生きていかなければならない。だから、幼体達を寝床に残し、狩りに出る。
もちろん、万が一にもキング達が現れたらその時は一目散に逃げるようには、幼体達を守るために残る者達には念を押しておきつつも。
ただ、ジャックは、オオカミ竜としてはかなり論理的にものを考えることができるものの、他の仲間達は必ずしもそうじゃない。果たしてどこまで伝わっているのか……でもまあ、他の群れが襲ってきた時などはどうすればいいのかは分かっているはずなので、大丈夫だろう。
などという心配も抱えつつ、不思議なくらいに穏やかな日々が過ぎた。幼体達もすくすくと育ち、先に生まれた幼体達はすっかり土竜狩りも上手くなり、順調に力をつけていたのだった。
ましてや、<自分の子>が生まれてしまっては。
そしてジャックは仲間を連れて、キングに勝負を挑むために、群れを探した。
が……
「……?」
キングの群れから逃げ回っていた時には何度かヒヤリとすることもあったというのに、いざこちらから探そうとすると、不思議と見付からない。以前の寝床はさすがにもぬけの殻で、覚悟を決めてきたというのに拍子抜けだった。
そうして、寝床になりそうな場所で思い当たるところを探してみたもののすべて空振り。
「ウウウ……」
これにはジャックも途方に暮れてしまった。しかし、
『だったらもう寝床を決めて、キングの方から現れるのを待とう』
彼はそう考えた。
これによって、ジャックの群れは、仮初とはいえ当面の間は定住できる寝床を得た。ここまでに何頭かの幼体はやはり命を落としたが、それは本来そういうものなので、あまり気に病んでも仕方ないだろう。
仲間達もようやく腰を落ち着けることができてホッとしたようだ。
そして今年生まれた幼体達は、じゃれ合い、愛らしい姿を見せてくれている。
『よかった……』
そうは思うものの、かと言って本当にここを<安住の地>とできるかどうかは、まだ分からない。いつ、キング達と鉢合わせるか、それは何とも言えないのだ。
さりとて、自分達も生きていかなければならない。だから、幼体達を寝床に残し、狩りに出る。
もちろん、万が一にもキング達が現れたらその時は一目散に逃げるようには、幼体達を守るために残る者達には念を押しておきつつも。
ただ、ジャックは、オオカミ竜としてはかなり論理的にものを考えることができるものの、他の仲間達は必ずしもそうじゃない。果たしてどこまで伝わっているのか……でもまあ、他の群れが襲ってきた時などはどうすればいいのかは分かっているはずなので、大丈夫だろう。
などという心配も抱えつつ、不思議なくらいに穏やかな日々が過ぎた。幼体達もすくすくと育ち、先に生まれた幼体達はすっかり土竜狩りも上手くなり、順調に力をつけていたのだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



竜焔の騎士
時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証……
これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語―――
田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。
会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ?
マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。
「フールに、選ばれたのでしょう?」
突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!?
この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー!
天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる