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根無し草としての暮らしを続けるわけには

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こうして、群れのボスだけでなく<父親>にもなったジャックは、一層、ボスとして頑張らなければと考えるようになった。同時に、毎日のように寝床を変える生活が生まれたばかりの幼体こども達に負担にならないようにと考え、遂に、キングに勝負を挑み、縄張りを奪う決断をした。これ自体は、遅かれ早かれしなければならないことである。いつまでも縄張りを持たない根無し草としての暮らしを続けるわけにはいかないのだ。

ましてや、<自分の子>が生まれてしまっては。

そしてジャックは仲間を連れて、キングに勝負を挑むために、群れを探した。

が……

「……?」

キングの群れから逃げ回っていた時には何度かヒヤリとすることもあったというのに、いざこちらから探そうとすると、不思議と見付からない。以前の寝床はさすがにもぬけの殻で、覚悟を決めてきたというのに拍子抜けだった。

そうして、寝床になりそうな場所で思い当たるところを探してみたもののすべて空振り。

「ウウウ……」

これにはジャックも途方に暮れてしまった。しかし、

『だったらもう寝床を決めて、キングの方から現れるのを待とう』

彼はそう考えた。

これによって、ジャックの群れは、仮初とはいえ当面の間は定住できる寝床を得た。ここまでに何頭かの幼体こどもはやはり命を落としたが、それは本来そういうものなので、あまり気に病んでも仕方ないだろう。

仲間達もようやく腰を落ち着けることができてホッとしたようだ。

そして今年生まれた幼体こども達は、じゃれ合い、愛らしい姿を見せてくれている。

『よかった……』

そうは思うものの、かと言って本当にここを<安住の地>とできるかどうかは、まだ分からない。いつ、キング達と鉢合わせるか、それは何とも言えないのだ。

さりとて、自分達も生きていかなければならない。だから、幼体こども達を寝床に残し、狩りに出る。

もちろん、万が一にもキング達が現れたらその時は一目散に逃げるようには、幼体こども達を守るために残る者達には念を押しておきつつも。

ただ、ジャックは、オオカミ竜オオカミとしてはかなり論理的にものを考えることができるものの、他の仲間達は必ずしもそうじゃない。果たしてどこまで伝わっているのか……でもまあ、他の群れが襲ってきた時などはどうすればいいのかは分かっているはずなので、大丈夫だろう。

などという心配も抱えつつ、不思議なくらいに穏やかな日々が過ぎた。幼体こども達もすくすくと育ち、先に生まれた幼体こども達はすっかり土竜モグラ狩りも上手くなり、順調に力をつけていたのだった。

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