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あれは何だろう……?

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自身の体に食らい付いたオオカミ竜オオカミ幼体こどもに爪による一撃を食らわそうと、土竜モグラは必死に暴れた。しかし残念ながらそれは功を奏さず、他のオオカミ竜オオカミ幼体こどもも食らい付いて力一杯引っ張り合い、結果、土竜モグラの体がちぎれてしまう。

これでもう終わりだった。土竜モグラは死に、オオカミ竜オオカミ幼体こども達の命を繋ぐ糧となる。

とは言え、一匹ではさすがにすべての幼体こどもの腹を満たすことはできないので、他の場所でも、同じく土竜モグラ狩りを行っている幼体こども達の姿があった。

なお、ジャックは成体おとな達がほとんど食い尽くしてしまったインパラ竜インパラの骨などに残った肉の欠片をこそぎ落として食べ、折れた骨の中に残った骨髄も爪でほじくり出して食べて、腹を満たした。他の幼体こども達に比べで大きいとはいえそれでもまだ幼体こどもだった彼にはそれで足りた。

物足りない分は昆虫などを食べて凌ぐ。

そうして今日は群れの全員が無事に生き延び、沈んでいく太陽を、ジャックは見詰めていた。彼にとってはその光景が少し不思議に思えていたらしい。

『あれは何だろう……?』

いつもそう思っていた。血のように赤く、近付こうとしても決して近付けず、逆に離れようとしてもどこまでもついてくる。得体のしれない<何か>。

他のオオカミ竜オオカミはそんなことは気にしていないようだが、ジャックだけはそれが気になるようだ。それもまた、彼の知能の高さを物語っていたのかもしれない。

さらには、<あの赤いの>が見えなくなると、今度は上の方にキラキラとしたものが見えてくる。これについても彼は、

『あれは何だろう……?』

そう思っていた。<あの赤いの>と同じくどんなに跳び上がっても届かないし、近付けば逃げ、離れればついてくる、<奇妙なキラキラ>。そして<奇妙なキラキラ>の中でも特に大きな<でっかいキラキラ>。それが<星>であり<月>であることは彼には理解できないものの、他のオオカミ竜オオカミがそれらを気にもしない中でやはり彼だけはその正体が気になっていた。

とは言え、いつまでも睨んでいても何も起こらないので、仕方なく彼は眠った。

ただし、オオカミ竜オオカミの睡眠は、数分ごとのそれを何回も繰り返すものだった。人間のように安全な寝床で外敵に襲われる心配もなく寝られるわけではないので、そうやって短い睡眠を何度も繰り返すしかなかったのだ。

地球の生物だとイルカなどは、脳の半分ずつを眠らせる<半球睡眠>という形の睡眠を獲得している者もいるとはいえ、オオカミ竜オオカミ達はそうじゃなかった。

幼体こども成体おとな達が周囲を取り囲んでくれていて安全なのでそれなりにまとまった睡眠もとるものの、ジャックはすでに成体おとなのそれに近い睡眠の形になっていたのだった。

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