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命をいただく

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老いて生きるための力が衰えたとはいえ、野生の獣はそんなことでは生きることを諦めない。生きるためにその時点でできるすべてをやろうとする。これは、猪竜シシでもインパラ竜インパラでも変わらない。

オオカミ竜オオカミすら一撃で蹴り殺すこともある後脚の一撃をお見舞いしようとして、老インパラ竜インパラは全力を尽くす。

それは当たり前のことだった。だからオオカミ竜オオカミ達も油断はしない。食らい付いたオオカミ竜オオカミインパラ竜インパラの蹴りを食らうまいとして身を躱す。そこに次々とオオカミ竜オオカミが食らい付く。

それでもなお、老インパラ竜インパラは生きるための努力をする。

<潔い引き際>

など、人間がでっち上げた戯言だというのがよく分かる光景だった。野生において<潔い引き際>というのも、あくまで生きるためにすることである。『戦って勝てないと悟ればさっさと逃げる』というような場合にのみ意味を持つ。

しかし、諦めればそのまま死が待っている状況では、『潔く』などしない。文字通り死力を振り絞って死に抗う。生きるために。

だがそれは常に功を奏すとは限らない。ましてやそのための力がそもそも衰えてきているとなれば、さらに確率は下がる。加えて、インパラ竜インパラの群れは、仲間が捉えられたことでもう自分達には危険が及ばないと悟り、悠々と逃げ去ってしまった。

残酷なようだが、これもまた<生きる>ということなのだろう。

生きるためには他の命をいただくが、それは必ずしも直接食うことを意味するものではない。このようにして、

『自分以外の誰かが死ぬことにより自分の命を繋ぐ』

というのも『命をいただく』と言えるのだ。

インパラ竜インパラの群れは、『仲間の命をいただく』ことで生き延びたわけだ。

そして実際、老インパラ竜インパラは、死力を振り絞ってもなお、自身の命を繋ぐことができなかった。

老いて生き延びる力を失ったことにより、仲間の代わりにオオカミ竜オオカミに捕らえられ、結果、仲間の命を繋いだのである。

残酷ではあるものの、これもまた生きるということの現実。

また、この時のインパラ竜インパラについては、やや痩せた小柄な個体だったこともあり、ジャックの群れ全体の腹を満たすことはできなかった。成体おとな達が食べ終わった時点でほとんど食うところがなくなってしまっていたのだ。

ただしこれについては、幼体こどもだからこその<次善の策>もある。

特に体が小さい子供は、その辺りを跳ねまわっている<虫>を餌にすれば事足りるし、少し大きな子供達も、それぞれ勝手に、土竜モグラの穴を掘り起こし、それを捕えて餌にしていたのだった。

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