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攻防
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自身に食らい付いたオオカミ竜を振り飛ばした猪竜は、脇目も振らずに逃走を図る。迎え撃つ準備が整っていないかったことで、まずは逃げることに注力したようだ。
しかし、オオカミ竜の群れはそれも十分に想定していた。一頭が降り飛ばされても、それに続いて二頭三頭と食らい付く。そのうちの一頭が首にがっちりと食らい付き、渾身の力を込めて嚙む。
「ピギイッッ!!」
猪竜はそう悲鳴を上げ、再び体を猛然と振るった。だが今度は振り飛ばせない。すると猪竜は、三頭ものオオカミ竜を自身の体に食らい付かせながら、方向転換してきた。
逃げることは難しいと判断、逆にオオカミ竜を撃破しようと狙ってきたのだ。猪竜の力であれば、それは十分に可能である。だからオオカミ竜は群れで力を合わせてそんな猪竜を上回る必要があるのだ。
分厚い鱗が重なってまるで鉄の塊のようになった頭部は、猪竜最大の武器の一つだった。これに全体重が乗った突進が加われば、もはや自動車に撥ねられるのと変わらないダメージがあるだろう。当たり所が悪ければオオカミ竜の成体さえ一撃で死ぬ。そんな攻撃を、猪竜は何度も繰り出せる。底知れぬスタミナも持っているのだ。
ラーテル竜に襲われて犠牲が出たのは、土竜と間違えて油断したからという一面もあった。それさえなければ無駄に衝突する必要もなく、さっさと逃げてしまえばよかった。加えて、もし逃げられなくても、最初からラーテル竜だと分かって対処していればもう少し上手くやれただろう。
猪竜の場合も、上手くやれれば犠牲は出さないで済む可能性は高い。しかし地力も体格も圧倒的にラーテル竜よりも上だから、一歩間違えば即死であることもまた事実。下手をすれば群れを壊滅させられる場合だって有り得る。
それほど危険な相手なのである。
だが、ジャックが属する群れは、この時、完璧なチームワークを見せた。突進しようとする猪竜を、食らい付いた三頭が抑え付けようとして突進の威力を削ぎ、二頭のオオカミ竜が体当たりを敢行。食らい付いた三頭が同時に負荷をかけることでバランスを崩させ、猪竜を転倒させた。
「ギピッ!!」
悲鳴を上げる猪竜の脚にも、オオカミ竜が食らい付く。四頭、五頭と群がられ、さしもの猪竜も身動きが取れなくなる。なのに決して諦めることなく、渾身の力を込めて食らい付かれた脚もそうでない脚も爆発させるかのように蹴り出して、振りほどこうとする。
途轍もない力だった。そこにさらに六頭目、七頭目のオオカミ竜が食らい付き、猪竜の姿がほとんど見えなくなったのだった。
しかし、オオカミ竜の群れはそれも十分に想定していた。一頭が降り飛ばされても、それに続いて二頭三頭と食らい付く。そのうちの一頭が首にがっちりと食らい付き、渾身の力を込めて嚙む。
「ピギイッッ!!」
猪竜はそう悲鳴を上げ、再び体を猛然と振るった。だが今度は振り飛ばせない。すると猪竜は、三頭ものオオカミ竜を自身の体に食らい付かせながら、方向転換してきた。
逃げることは難しいと判断、逆にオオカミ竜を撃破しようと狙ってきたのだ。猪竜の力であれば、それは十分に可能である。だからオオカミ竜は群れで力を合わせてそんな猪竜を上回る必要があるのだ。
分厚い鱗が重なってまるで鉄の塊のようになった頭部は、猪竜最大の武器の一つだった。これに全体重が乗った突進が加われば、もはや自動車に撥ねられるのと変わらないダメージがあるだろう。当たり所が悪ければオオカミ竜の成体さえ一撃で死ぬ。そんな攻撃を、猪竜は何度も繰り出せる。底知れぬスタミナも持っているのだ。
ラーテル竜に襲われて犠牲が出たのは、土竜と間違えて油断したからという一面もあった。それさえなければ無駄に衝突する必要もなく、さっさと逃げてしまえばよかった。加えて、もし逃げられなくても、最初からラーテル竜だと分かって対処していればもう少し上手くやれただろう。
猪竜の場合も、上手くやれれば犠牲は出さないで済む可能性は高い。しかし地力も体格も圧倒的にラーテル竜よりも上だから、一歩間違えば即死であることもまた事実。下手をすれば群れを壊滅させられる場合だって有り得る。
それほど危険な相手なのである。
だが、ジャックが属する群れは、この時、完璧なチームワークを見せた。突進しようとする猪竜を、食らい付いた三頭が抑え付けようとして突進の威力を削ぎ、二頭のオオカミ竜が体当たりを敢行。食らい付いた三頭が同時に負荷をかけることでバランスを崩させ、猪竜を転倒させた。
「ギピッ!!」
悲鳴を上げる猪竜の脚にも、オオカミ竜が食らい付く。四頭、五頭と群がられ、さしもの猪竜も身動きが取れなくなる。なのに決して諦めることなく、渾身の力を込めて食らい付かれた脚もそうでない脚も爆発させるかのように蹴り出して、振りほどこうとする。
途轍もない力だった。そこにさらに六頭目、七頭目のオオカミ竜が食らい付き、猪竜の姿がほとんど見えなくなったのだった。
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