ショウドウ ~未開の惑星に転生した男、野生を生きる~

京衛武百十

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衝動に火が点いちまうと

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戦いってのは<数>が重要だけどよ。それにしたって、

<相手を圧倒するのに必要な数>

ってえもんはあるんだ。しかも、ウェイト差ってのも戦いにおいちゃでけえ要素になる。それで言うと、今回のイノシシみてえな獣をヴェロキラプトルみてえな獣が圧倒するにゃ、いささか数が少なすぎたみてえだな。

てか、これまで見た奴相手でギリ勝てるくれえじゃ、今回の奴は厳しいだろ。二回り以上でけえし、たぶん、体重だって俺より上だ。

けど、襲い掛かってるってえことあ勝算があるってことなんだろうなあ。見る限りとても勝てそうにゃ思えねえんだけどな。

なんて俺が考えてんのもあいつらにすりゃ余計なお世話ってもんか。ヴェロキラプトルみてえな獣は、何度弾き返されたって挑みかかってやがる。

そしたら一匹が、

「ギャーッッ!!」

ってえ悲鳴を上げた。イノシシみてえな獣の牙がモロに命中したみてえだ。首から腹の辺りまでざっくりと裂かれて、臓物が飛び出てきやがった。

ああ、ありゃもうダメだ。

それでも、俺に襲い掛かった連中もそうだったけどよ。一匹やられたくれえじゃこいつらは引き下がらねえ。下がらねえが、今回ばっかりは逃げた方がよかったんじゃねえか? どうもこいつらは衝動に火が点いちまうと簡単にゃ収まらねえのかもしれねえ。

イノシシみてえな獣に食らいついちゃ弾き飛ばされてってえのを何度も繰り返す。普通のが相手ならそれで疲れさせることもできるんだろうけどよ。こいつはちょっと無理っぽいぜ。

野生の獣にゃ<プライド>なんてもんはねえはずにしても、でけえ相手にも怯まねえ凶暴さの代わりに引き際ってえもんをわきまえられねえ習性を持っちまったのかもなあ。

なんてえことを俺が考えてる間にも、

「ギャアーッッ!!」

二匹目がやられた。そんでもって地面に転がったそいつの頭を、イノシシみてえな獣が足で思いっきり踏みつけて潰す。当たり前だが容赦ねえな。

それでも、二匹目が踏み潰されてる隙に、他の奴らが首に食らいつきやがった。

「ギピーッッ!!」

さすがにこれはダメージがあったのか、今度はイノシシみてえな獣が悲鳴を上げた。上げたが、そいつらを食らいつかせたまま猛烈に走り出して、木の幹に体当たり。

「ギャヒッッ!!」

イノシシみてえな獣と木の幹の間に挟まれた奴が潰れたのが分かった。これで三匹目か。

ヴェロキラプトルみてえな獣の方は九匹いたからまだ三分の一っちゃそうなんだけどよ、そろそろ引かねえとマジでヤバいぞ。

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