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それがもうおかしいってんだ

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人間が体を鍛えたり格闘技を身に付けたりすんのは、何度も言うが弱えからだ。そういう風にして鍛えねえと、まったく話にならねえ。弱すぎてな。

だが、野生の獣は違う。人間みてえにわざわざ鍛えたりしねえ。そんなことしねえでも体の作りがそもそも違えんだよ。

確かに俺は今、カマキリ怪人相手に戦えちゃいる。けどな、俺は元々、人間としちゃ有り得ねえ筋力と体の強さを持ってるんだよ。その上で、てめえの力を制御するために格闘技も身に付けた。だから人間で俺とまともに勝負できんのは、マジでごく一部の、頭のおかしい技を身に付けた奴だけだ。

コーネリアス号にも一人、俺と同じように軍からの出向組で、コーネリアス号での直属の上司だったのがそうだったけどよ。

でも、こいつらは、別に鍛えてもいねえし格闘技だって学んじゃいねえ。だってのに、俺とこうやって勝負になるんだぜ? それがもうおかしいってんだ。

だからこいつらがマジで格闘技を学んだら、身に付けられたら、お前はもう勝てねえってことじゃねえか。

まったく、嫉妬するぜ。俺のやってきたことがこいつらの前じゃほんのちょっとの差ってことなんだろうからな。

ああでも、考えてみりゃこいつらは毎日が死ぬような目に遭ってそれに生き残ってきた奴らだからな。それに比べると俺は、大人になって戦場に出るようになったっつっても、そこじゃ何度も死にかけたっても、普段の生活じゃあそこまでじゃなかったし、はっきり言ってぬるま湯みてえなもんだったよな。

鍛えねえでも別に鈍りゃしなかったっても、その上に行けたわけじゃねえ。なるほど、その差か。

メシにありつくために命を張る必要はなかった俺に嫉妬なんざされても、逆に、

『ふざけんな!』

って話かもしれねえな。

なら、お互いに今のてめえの全力でどっちが上かを競い合うっきゃねえ。

横っ飛びして間合いを取ったそいつに、今度は俺の方から距離を詰めた。ほぼ四つん這いになった頭に、上から打ち下ろす形で掌底を叩き込む。

カマキリ怪人の頭の硬さは、蟷姫とうきのそれでようく承知してるからな。拳を思いっきり叩きつけりゃ逆にこっちが壊れちまうかもしれねえ。そりゃあ意味ねえだろ。

頭蓋は砕けねえにしても、脳を揺らしてやりゃ、ダメージはあるはずだ。

地面に叩きつけるつもりで打ち下ろした掌底が、そいつの頭を捉えた。

ガツン!! と十分な手応えがあった。急激に動いた自分自身の頭蓋に脳が叩きつけられ、下手すりゃ脳挫傷も有り得る衝撃だったはずだ。

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