上 下
51 / 106

崩拳

しおりを挟む
俺から蟷姫とうきを奪うためにか、カマキリ怪人が襲い掛かってくる。獲物として狙うためならまあ当然、気配を隠して実に仕留められる間合いを図るんだろうが、単純な力比べならその必要もねえってか?

だが、俺を殺すつもりならそういう部分でも一切手加減するべきじゃねえだろうよ。

それでも、俺としても蟷姫とうきを譲るつもりはさらさらねえから、真っ向勝負には応じるが、手加減はしねえぞ。

両方のカマを構えて俺を捕らえようとしてくるそいつに正対し、十分に引き付けてから右拳を縦にして、真っ直ぐに突き出した。必要最小限で最短距離で最大の威力を発揮するそれだ。俺が自分の力を制御するために色々学んだ中の一つ、確か<崩拳>とか言ったか。地味だが威力は抜群だ。

しかも、一直線に真っ直ぐ突き出すそれは、相手からすると動きが掴みづらく、距離感も掴みづらく、どういうものか知らねえと、対処が難しいというのもあるんだ。

そして踏み込みについても一切手加減なくだからな。

「どずん!」

という手応えとともに、カマキリ怪人の胸の真ん中に吸い込まれるようにして命中した。

「ゲハッッ!?」

先に俺を捉えたと思ったのが逆に衝撃を受けて、胸の中の空気が弾き出されたような声を上げた。

人間とまったく違う体型や姿勢をしている獣が相手ならこうは上手くいかなかっただろうが、ここまで人間に似てるカマキリ怪人が相手なら、バッチリ嵌まったぜ。

カマの分のリーチも、『武器を持ってる』と考えりゃ対処は可能だ。

「ゲッッ! ゲヒッッ!」

十分な手応えの拳を胸の真ん中に食らったことでまともに呼吸ができなくなったか、カマキリ怪人はその場に膝を着いて、焦った様子だった。こうなりゃもう、やりたい放題だな。

だから俺もそのまま、そいつの頭をボールみてえに 蹴り飛ばそうと足を跳ね上げた。

人間なら大体これで終わりだ。手加減しねえと下手すりゃ首の骨がへし折れてもおかしくねえ。

なのにそいつは、真横に吹っ飛ぶようにして体を動かして躱して見せやがった。

『おいおい、マジか!?』

まったく本当にすげえなお前ら。感動するぜ!

人間ならそれこそ最初の一撃で心室細動を起こしててもおかしくねえ。そうなりゃもう身体なんざ動かねえ。心臓は無事でも呼吸がままならねえとなりゃやっぱり体はまともに動かねえ。それでこの反応を見せるってか? 

元々ゴリラ並みの筋力を備えてて、その上でクソほど鍛えた俺の拳をモロに食らってもこれだもんな。同じ条件で鍛えられちゃあ、俺は勝てねえってことじゃねえか。

いやはやまいった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

メルシュ博士のマッドな情熱

京衛武百十
SF
偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLSと名付けられた未知の病により死の星と化した惑星リヴィアターネに、一人の科学者が現れた。一切の防護措置も施さず生身で現れたその科学者はたちまちCLSに感染、死亡した。しかしそれは、その科学者自身による実験の一環だったのである。 こうして、自らを機械の体に移し替えた狂気の科学者、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士のマッドな情熱に溢れた異様な研究の日々が始まったのであった。     筆者より。 「死の惑星に安らぎを」に登場するマッドサイエンティスト、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士サイドの物語です。倫理観などどこ吹く風という実験が行われます。ご注意ください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

凶竜の姫様

京衛武百十
SF
ここは、惑星<朋群(ほうむ)>。多数のロボットに支えられ、様々な特色を持った人間達が暮らす惑星。そこで鵺竜(こうりゅう)と呼ばれる巨大な<竜>について研究する青年、<錬義(れんぎ)>は、それまで誰も辿り着いたことのない地に至り、そこで一人の少女と出逢う。少女の名前は<斬竜(キル)>。かつて人間を激しく憎み戦ったという<竜女帝>の娘にして鵺竜の力を受け継ぐ<凶竜の姫>であった。 こうして出逢った斬竜に錬義は戸惑いながらも、彼女を見守ることにしたのだった。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

オオカミ竜・ジャック ~心優しき猛獣の生き様~

京衛武百十
SF
オオカミ竜のジャックは、恵まれた体を持つ個体だった。兄弟達よりも早く卵から孵った彼は、真っ先に昆虫などを食い漁り、みるみる体を大きくした。また彼は狩りも上手く、兄弟達が群れで襲い掛かっても敵わなかった猪竜(シシ)を一頭で倒してみせた。 しかし、彼は本当は血生臭いことはあまり好きではなかった。本当はただゴロゴロぐうたらしていたかったのだ。なのにこの世界は彼をのんびりとはさせてくれなかった。恵まれた体を持ち狩りも上手かったかれは仲間達から頼りにされ、いつしか頼られる存在になっていく。 さらには、ボスにも勝ててしまい、その瞬間、彼がオオカミ竜の群れのボスとなってしまった。 ことここに至り、彼も観念したかのようにボスとして群れを率いていく。 なのに、過酷なこの世界は、彼を休ませてはくれなかった。彼らが生きている草原に生息していた草食動物達の間で疫病が広まり、数が激減。同じオオカミ竜の別の群れや、他の肉食獣らと餌の奪い合いが始まり、それに伴っての衝突も増えていく。 それでも十分な餌が確保できなくなったことで雌は卵を産まなくなり、老いた仲間は耐えずに飢えて死んでいく。 こうしてジャックは、決断を迫られるのだった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex
SF
西暦9980年、人類は地球を飛び出し宇宙に勢力圏を広めていた。 人類は三つの陣営に別れて、何かにつけて争っていた。 死人が出ない戦争が可能となったためである。 しかし、そのシステムを使う事が出来るのは、魂の波長が合った者だけだった。 その者はこの時代には存在しなかったため、過去の時代から召喚する事になった。 …なんでこんなシステム作ったんだろ? な疑問はさておいて、この時代に召喚されて、こなす任務の数々。 そして騒動に巻き込まれていく。 何故主人公はこの時代に召喚されたのか? その謎は最後に明らかになるかも? 第一章 宇宙召喚編 未来世界に魂を召喚された主人公が、宇宙空間を戦闘機で飛び回るお話です。 掲げられた目標に対して、提示される課題をクリアして、 最終的には答え合わせのように目標をクリアします。 ストレスの無い予定調和は、暇潰しに最適デス! (´・ω・) 第二章 惑星ファンタジー迷走編 40話から とある惑星での任務。 行方不明の仲間を探して、ファンタジーなジャンルに迷走してまいます。 千年の時を超えたミステリーに、全俺が涙する! (´・ω・) 第三章 異次元からの侵略者 80話から また舞台を宇宙に戻して、未知なる侵略者と戦うお話し。 そのつもりが、停戦状態の戦線の調査だけで、終わりました。 前章のファンタジー路線を、若干引きずりました。 (´・ω・) 第四章 地球へ 167話くらいから さて、この時代の地球は、どうなっているのでしょう? この物語の中心になる基地は、月と同じ大きさの宇宙ステーションです。 その先10億光年は何もない、そんな場所に位置してます。 つまり、銀河団を遠く離れてます。 なぜ、その様な場所に基地を構えたのか? 地球には何があるのか? ついにその謎が解き明かされる! はるかな時空を超えた感動を、見逃すな! (´・ω・) 主人公が作者の思い通りに動いてくれないので、三章の途中から、好き勝手させてみました。 作者本人も、書いてみなければ分からない、そんな作品に仕上がりました。 ヽ(´▽`)/

処理中です...