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それが賢明

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自分の足に思い切り噛み付いてきた相手に対し、蟷姫とうきも当然、容赦はねえ。頭を踏みつけるようにして何度も蹴っ飛ばす。これまた人間の場合だと下手すりゃ首の骨が折れるかもしれないぐらいの勢いでだ。

だがそれに対しても、相手はがっちりと首を固めて耐えてやがる。やっぱ頑丈だなあ。

人間相手なら十分な手応えがあっても油断しちゃいけねえな。やったと思って気を抜いた途端に反撃を食らって殺されるとか、普通にあるだろ。

下手すりゃ、『死んだと思っても死んでねえ』なんてことも十分にありそうだ。

だがさすがに何発も食らうと持ちこたえられなくなったか、蟷姫とうきの脚を放して飛び退いた。

それと同時に蟷姫とうきも弾かれるみてえにして立ち上がって、態勢を整える。

するとまた、相手はじりじりと下がり始めた。諦めたってことか?

また来た割りにゃあ、諦めがいいじゃねえか。

まあ確かに、これ以上やり合ったところでどっちも痛え思いをするだけだろうからな。それが賢明ってえもんだろ。

で、茂みに隠れた途端に離れていった気配があって、蟷姫とうきもしばらくしたら警戒を解いた。

それからはまた縄張りの中を歩き、狩りをする。もっともこの日は結局、鳥やトカゲみてえなのばっかだったけどよ。それでも腹は十分に膨れたし、別に問題はねえ。

しかも、巣の近くまで帰ってきたらまた蟷姫とうきが求めてきて、俺はそれに応える。まったく、可愛いなあ。お前は。



次の日は全然別の方角に見回りに出る。蟷姫とうきがそれをすんのは完全に縄張りを守るためだってえのが分かる。そのついでに狩りをしてる感じだな。

この手の肉食獣にとっても縄張りってのは大事なんだろうよ。しかも、縄張りを持ってそれを維持できてるってのあ、強さの証でもある。

一昨日昨日と現れたあのカマキリ怪人も印象としちゃ若そうだったからな。蟷姫とうきの縄張りを奪いにきたのかもしれねえ。

だとすると、今日も来てねえか見張った方がいい気もするが、他にも縄張りを狙ってくる奴はいるだろうし、ちゃんと全体をまんべんなく見回るってのも大事なんだろうよ。

だから俺も蟷姫とうきの縄張りの範囲をきちんと把握して、手分けして見回りできるようにしてやりてえなあ。

って、カマキリ怪人じゃねえ俺が追い払ったところで、縄張りを主張してることは伝わらねえかな。それじゃ意味ねえな。

まあ、追い払うこと自体には意味もあるかもしれねぇが。

と言っても、俺あまだまだカマキリ怪人のことをよく分かってるわけじゃねえ。蟷姫とうきと、彼女に絡んできた奴しか見てねえし、情報不足もいいとこだな。

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