ショウドウ ~未開の惑星に転生した男、野生を生きる~

京衛武百十

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次の<獣>

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だがどうやら先に、次の<獣>が現れたようだ。

「ルルルルル……」

「ウルルルルルル……」

気配を感じて視線を向けると、ちょっとした大型犬くらい感じの獣が、下草の陰からこっちの様子を窺ってるのが見えた。しかも少なくとも七~八匹はいる。

さてと、これはちょっとヤバいかもしれねえな。一匹二匹なら大丈夫な自信もあるが、群で来られるとさすがに厳しいだろ。群を作る肉食獣ってことになると、やっぱ連係してくるだろうしな。

だが、諦めるわけにもいかねえ。

「……」

こっちも完全に臨戦態勢で睨みつけてやる。

簡単にやられてやるわけにはいかねえってのを示すためだ。それで怯んでくれるとは限らねえが、気迫で負けりゃそれこそその時点で終わる。

犬が相手ならどう動くか大体予測できっから色々考えて対処しようと思うけどよ、下草の間からチラチラ見える感じだけでも犬なんかじゃねえのは分かる。毛皮には覆われてっけど、何しろ口が明らかにでけえ。しかも、前かがみの姿勢だが四本足じゃねえな。前足を完全に浮かせててご立派な爪も見える。尻尾も太くて長そうだ。

ああ、なんか見たことあんぞ。似たようなもんを。

これはあれだ。<恐竜>ってヤツだ。確か、<ヴェロキラプトル>だったかな? 確かそんな名前の恐竜が大昔の地球にいたってえ話だったな。

だが、なんか毛皮も生えてやがるし、ヴェロキラプトルに似ちゃいるが、違う獣なんだろう。それに、たとえヴェロキラプトルだったとしても俺は実際にお目にかかったことねえからな。やっぱどう動くかなんざ想像もつかねえ。

てことは当然、直感勝負だ。

俺も、力を抜いた上で軽く腰を落として、両手も軽く前に掲げ、向こうのどんな動きにも即対応できる姿勢を作った。

すると向こうの気配も変わって、空気がチリチリと刺さってくる。間違いなく襲ってきやがるな、これは。

そりゃあ向こうも生きるためには食わなきゃいけねえだろうし、当然のことだ。そして俺も、自分を守るためにゃ戦いもするさ。

悪りいな。

次の瞬間、弾かれたみてえに一匹が飛び出してきた。ははっ! さてはてめえが<特攻隊長>か!?

どこかでそんなことを思いながら俺の体は勝手に動いて、迫ってきた顎に左のショートアッパーを食らわしていた。

その左拳に、ぐしゃりと骨の砕ける感触。頭が跳ね上がったところに、続けて右のフック。

「ギヒッッ!!」

悲鳴を上げて<毛皮に包まれたヴェロキラプトルっぽい獣>が地面に転がる。

顎が砕けたか。ここにきてようやくまともな<手応え>があったな。けど、そっちも俺を食うために襲い掛かってきたんだろ? お互い様だ。悪く思うなよ。

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